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神獣殺しの精霊使い  作者: 氷帝花心(門屋定規)
1章 無の精霊と少年
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第16話 墜落と対応

 良く晴れた日にそれは起きた。

 わが会社が誇る、飛行艇の一つ。

 3番目に作られた、飛行艇。

 それが墜落したのだ。

 世界に全部で10個しかない飛行艇の運行には巨額の富と人員が割かれていた。そのため一人当たりの旅費はこの世界の乗り物の中でも特に高い。

 ただ、高いということは、他の飛行艇とは一線を越えており、優秀だということだ。すなわち、飛行艇が落ちるというのはあまりに突拍子なことで、管制塔に居た私を含めた総勢100人には、にわかには信じられないことだった。


「それは本当のことなのか? 嘘ではなく、冗談でもなく、伝え間違いでもなく、本当の本当に落ちたのか!」


 声を張り上げる様にし、私は管制塔の管理室に入ってきた男に訪ねた。この男は見覚えがある。確か……つい先日入社したばかりの新人のはずだ。


(もしかしたら、彼は勘違いをしているのかもしれない)


 それは私の希望に過ぎないのだが、それでも、あの飛行艇が墜落したとはとてもじゃないが、信じられない。

 あの、飛行艇には、高度な力を持つ、風の精霊使いが何十人も乗り込んでいたはずだ。それに加え、毎回、王国から貸してもらっている、A級騎士が1人乗り込んでいるのだ。

 例え、テロリストが乗り込んでこうようが、制圧するのは不可能なはずだ。



「……何が起きたか説明してくれ」


 そう発言したのは、私の上司でもあり、この会社のリーダーでもある代表だ。

 普段は冷静沈着の代表も今回ばかりは驚き、焦っているようで、顔が青い。



「は、はい。 落ちたのは飛行艇3号です。乗客はおよそ、50人ほど、風の精霊使いは30人。そしてA級騎士が一人です」

「原因はなんだ? あの飛行艇が墜落するとなると、反王国の者の攻撃か? それとも、操作ミスといった人為的な物なのか?」

「いえ……そ、それはまだわかっていません。ですが、落ちたのは確かなようです。 たった今、王国政府から連絡がありましたので。 墜落地は、龍の巣から1キロほど離れた場所のため、救出は困難だということです」


「「龍の巣だと」」


(龍の巣。 確か高レベルの龍が住む、危険エリアS級の一つのはずだ。噂ではそこを通るには精霊神クラスでないと無理だとか言われているはずだ。よりによって、そこに落ちたとなると助け出すのは……)


「代表どうしますか? さすがにそこは……」


 不可能だと言おうとする私だが、代表は不敵に笑い、電話を取った。


「不可能では無いさ、まだ彼の力を借りれば、なんとかなるはずさ」

「彼……とは誰のことでしょう?」


 彼?

 わが会社には、そんな名前で呼ばれてる人なんて居ないし、外部のお客さんにも居ないはずだ。



「確か、龍の巣と言ったな?」

「は、はい。そうです」

「なら、まだ手はあるよ。 世界最大の規模を誇るわが社だから出来るわけだけどね」

「もしかして、精霊神に頼るのですか? ……確かに彼らならこのくらいどうとでも出来そうですが、彼らを動かすには、多額の金が必要です。そんなことしたら、かなりの額の赤字になってしまいます」


 そう言ったのは、会計の人たちだ。確かに、精霊神に依頼するとなると、わが会社でも当分は赤字続きだろう。そしたら私たちの給料が減るかもしれないのだから、反対するのは当然の結果だ。

 だが、代表は止まらない。


「君たちには権利は無い。ここでは私がルールだ、誰だとしても逆らうのは許さない。 それにだ、もしもここで見捨てるとなれば、明日からは誰も乗ってはくれなくなるさ。そのほうが困るだろ?」

「ええ、まあ、そうなりますね」


 歯切れ悪く答えたのは、事務長だ。彼は既に手元の電卓で計算を終えたのか、二つの数字が書かれた紙を皆に見せるように広げた。


「上が何もしない場合、下が救助した場合の利益率です。 確かに救助するとなると莫大な費用がかかる為、当分は赤字続きでしょう……ただし、救助しない場合は、この会社が潰れる可能性が高いでしょう」

「そのとおりだ。 君たちはわが会社が、明日からないのと、多少は苦しくても存続するのはどちらがいい?」


 代表の問いに誰一人言い返せない。

 それもそのはずか、もし給料が低くなるとは言っても、事務長の計算結果によると半分減るだけのそうだ。普通の会社なら、全員が止めてもおかしくない状況だが、わが会社の平均給料は他社の4倍はあるのだ。

 それなら、残った方が得策である。

 だからか、誰一人、反対するものは居なかった。


「それなら、決定だ。いまから、精霊神に連絡をとるり、迅速に救助に協力をしてもらう」


 精霊神なら、まあなんとかなるだろう……例え、ダメな場合も、精霊神でダメなら仕方がないと誰もが思うはずだ。


「それで、どなたに頼むのですか? 水ですか、それとも炎ですか?」

「いや、違うよ、ナタリー。頼むのは___の精霊神さ」

「ああ、それなら、なんとかなりそうですね」


☆☆☆


 飛行艇墜落の1時間前。

 俺は動き始めていた。

 手元には、自作した爆弾が5個置いてあり、どれも、いつでも爆発できるように調整していた。

 今回の俺の任務は、この飛行艇の奪取、または墜落に導くことであり、どちらにせよ死んでしまう。所謂テロというものだ。

 狙いは特には無い。ただ、飛行艇はこの世界にある構造物の中でも特に高価な物だ。それをもしも爆発により、墜落させればかなりの被害となるはずだ。

 それは誰に命令されたという訳でも無い。ただ、世界に対する復讐というやつだろうか?

 ……まあ、いいか。

 これから自爆して死ぬのだ。いまさらそんなことを考えていてもしょうがない。

 あと、一時間経てば、龍の巣の近くだ。そこで墜落させれば、救助も不可能だ。

 

「壊してやる……こんな壊れてもいい世界なんて消えればいいんだ」



☆☆☆



「主君様!起きて!」

「う、うーん」


 誰かが俺の体を揺すっているのか、体中に強い振動を感じる。確か、王国に着いたら、起してくれとルシアに頼んどいたはずだが。もう着いたのか?

 俺は眠気で今にも閉じそうな目をゆっくりと開ける。


「ああ、おはよう? もしかして、もう着いたのか? ずいぶんと早いな」


 ヒートの話だと半日かかるとのことだが、それよりも早く着いたような気がする。まあ、寝ていたから、その間の記憶が無いから、気のせいだとは思うけどな。


『違います! 早く非難しないと!』

「避難? なんで?」

「落ちているんですよ、現在進行形で!」

「何が落ちているんだ?」

『飛行艇です! だから早く逃げないと、死んでしまいます!』


 ははっ。

 ルシアがジョークを言うとは思わなかった。落ちるだって?

 俺たちが乗っているのは、世界最大規模の会社が運航している、安全安心の飛行艇だ。そんな簡単に落ちるわけが無い。


「ルシアってジョークを言うんだな、もっと真面目なのかと思っていたよ」

『ですから、落ちているんですって! 現に外を見てくださいよ! 急降下しているから地面が見えているでしょ? こんなの通常運行ならありえないですよ!』

「地上が見える? はは、そんなことが起きるわけ……ないはずじゃない…のか?」


 ルシアに言われた通り、外を見ると、はるか遠くに地面が見えた。様々な木々があることから、どうやら森のようだ。

 あれ?

 おかしいな? 

 普通なら見えないはずなんだが……もしかして本当なのか?


「俺が寝ている間に、何がおきたんだ?」

『私も詳しくは知りません、ただ、風の精霊使いたちがいる部屋が大爆発を起こして現在進行形で炎上中らしいです』

「爆発? それは偶然……では無いよな。だったら人為的なものなのか?」

『わかりません。ただ、爆発により半数以上が怪我をしてしまい、この飛行艇をコントロールするのが不可能な状況に陥っているという状態らしいです』


 ふむ。どうやら、この飛行艇が何者かに狙われて墜落させられようとしていると考えたほうが良いみたいだ。

 安心安全とかで有名だからわざわざ高い金払って乗ったのに、これじゃあ意味が無いな。


「それで、避難は可能なのか?」

『はい。只今、風の精霊使いの半数は怪我で動けないので、4分の1が飛行艇の管理、そして残りが、風を利用し、乗客をひとまずは下に下ろしているようです』

「だから、避難か。 そうだ、ルシアは何でも使えるよな?……だったら、俺をここから逃がしてくれないか?」

『はい、わかりました。ただ、私の保有魔力は少ないので、分けていただきます』

「おう、頼む」

『では、飛び降りますよ』


そう言うと、ルシアは俺の腕を引っ張り、割れて吹き抜けとなっている、空間から外に飛び出した。

 瞬間、外の風が強いのか、ルシアから吹き飛ばされそうになる。


『しっかりつかまってください!』

「おう」


 そして俺たち二人は、無事に荒れ狂う飛行艇から逃げだすことに成功した。

 辺りを見回すと、他の乗客も助けられたのか、一か所に集まり、話をしていた。皆飛行艇から飛び降りるといったことをした為か、テロに襲われたためか、顔が真っ青だ。



「皆さん、ご静かにしてください。わが名は、クラーン。王国騎士団のA級である!……これから先は、私の命令に従っていただきたい。無論嫌なら、従わなくても良いが、その者たちに関しては、命の保証はできないことを理解していただきたい!」


 突然、空から舞い降りた中年男性は、声を張り上げながら言いきった。

 なるほどな、あれがこの飛行艇の守護者でもある、ボディガードか。


「(どうするべきだと思う?)」

『(うーん、今いる場所がわからないし、ひとまずは従ったほうが良いと思うな)』

「(やっぱりそうだよな、俺も同じ考えだ)」


一先ずは彼に従ったほうがよさそうだ。

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