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神獣殺しの精霊使い  作者: 氷帝花心(門屋定規)
1章 無の精霊と少年
13/67

第12話 精霊との契約 

「これが精霊の木ですかね?」

「そうみたいだな」


 俺とヒートは地図を頼りに精霊が居るとされる場所に来ていた。

 周りを見回すと木が複数本あり、その中に一際大きな木が存在している。

 大きな木は他の木に比べて一回り幹や枝が太く、そして微かにだが光り輝いていた。

 間違いなく精霊の木だろう。


「それで、契約はどうすればできるんですか?」

「ああ、方法は簡単だ。まずは右手で木を触ってみろ。精霊との相性が悪ければ吹き飛ばされるし、良かったら次の手順に進める」


 ふむ。どうやら簡単に調べることが出来るようだ。

 漫画や小説だと、こういう場合自分の血を捧げる展開が多いが、この世界ではそうではないらしい。

 まあ痛い思いをしなくて契約できるのはいいことだな。

 早速俺は右手で木を触ってみる。

 数十秒たつが俺は吹き飛ばされない、どうやら相性はいいみたいだ。


「相性はいいみたいだな。じゃあ次は精霊を呼び出してみろ」

「呼び出し?」

「ああ、精霊の種族を全て呼んでみろ。例えば“炎の精霊よ我と契約を”みたいにだ」

「はい……炎の精霊よ我と契約を」


 まず最初に炎の精霊の名前を呼んでみるが反応は無い。

 どうやら炎の精霊ではないみたいだ。じゃあ次は水か。


「水の精霊よ我と契約を」


 これも違うみたいだ。

 炎でも水でもないのか。

 じゃあ次は。


「言っとくが纏めて名前を呼んでもいいからな」

 

 ヒートは俺に纏めてもいいと助けを出してくる。

 そうか、一斉に呼んでもいいのか。

 それなら。


「土の精霊よ我と契約を。風の精霊よ我と契約を。光の精霊よ我と契約を。闇の精霊よ我と契約を」


…………

……


「反応してくれないんですが、この方法でいいんでしょうか?」

「間違っては無いはずなんだがなあ」


 全ての精霊の名前を呼んでも精霊は現れなかった。

 もしかして俺の契約方法が間違っているのかと思ったが違うみたいだし。

 それとも、まさか俺が異世界人でこの世界にとってはバグみたいな存在だから?


「普通はこの方法でいいはずなんだがなあ、なんでだと思う?」

「残念ながら俺もわかりません」

「そうだよなあ、炎でも水でもその他でも無いか……ということはこの地図は間違えていたのかなあ」


 先ほどまで俺に地図の正当性を自慢していたヒートだったがここにきて考えを覆すようだ。

 確かに地図が間違えている可能性を否定することは出来ない。

 でもなあ、なんか忘れている気がするんだよなあ。


「まさか……いやでも、まさかなあ」


 しばらく考え込む俺たちであったがヒートが何か思いついたみたいだ。

 俺には何も思いつかないからヒートに頼るしかないから思いついたのなら早く言ってほしいのだが、ヒートはまだ頭の中で検証しているようだ。


「何か思いついたんですか?」

「ああ、一つだけ言ってないのがあることを思いだしてな」

「なんですか? もしかして他にも精霊は居るんですか?」

「ああ、前も話しただろう。今じゃあ噂扱いの無の精霊が昔は居たが、ある日を境に全部消えてしまったって」

「ああ言ってしましたね、確か全ての力を扱うことが出来る万能の精霊でしたか?」

「ああ、初代無の精霊神以降話に出てこないから、昔の人たちが作り出した伝承だろうとずっと思っていたが、もしかしての話だが本当に居たのか」

「絶滅してないんですかね?」

「まあ呼び出せればわかるだろう、早く呼んでみろ」

「はい」


 俺はもう一度、木を触れる。

 もしこれでダメなら終わりだ、そう思うと緊張してくる。

 俺は震える口を懸命に動かし言う。


「む、無の精霊よ、我と契約を」

『いいよ』

 

 言い終わると同時になんか了承の声が聞こえた気がする。

 気のせいか?


「あの……今ヒートなんか言いましたか?」

「いや、俺ではないが」


 ヒートにも聞こえたのだろう、ヒートも俺と同じように辺りを見回していた。

 誰だろう? 

 俺も見回すが俺たち以外には誰もいない。


 『君が私の主君?』

 「は、はい」


 また、声が聞こえた。

 声の主は俺に主君かと聞いてきた。

 俺は声が裏返りそうになるのを堪えながらひとまず肯定する。

 主君と聞いてくるということは、おそらくは精霊の声なのだろう。

 精霊の声は子供の声だったが聴いているだけでなんだか威圧されているような気がする。

 ヒートも同じ気持ちなのか、いつもは背筋を伸ばしているのに今は、背中を丸めていた。

 これが精霊、なんだか不思議な感覚だ。


『そうかあ、やぁっと私と契約できる器の持ち主が来てくれたんだあ。正直待ちくたびれたよう。でも来てくれたからいいかなあ』


 精霊はテンション高くはしゃいでいた。

 伝承どおりなら消えてから数千年経つのだがその間ずっと一人だったのだろうか?

 そう考えると精霊が可哀想に思えてくる。

 それにしても、こんな簡単に契約していいのかな?

 俺は隣のヒートを見るが何も言わない。

 うん、どうやらいいみたいだ。


「本当に契約してくれるんですか?」

『うん、君の器の量は強大だし、断る理由が無いんだよお』

「器? 器ってなんでしょうか?」

『器もしらないのお? 器はね、精霊の力を引き出せる量を決める“カギ”みたいなものかなあ』

「それはつまり器が大きいほど強大な力を使えるということでしょうか?」

『うん、君の器は初代無の精霊神にも匹敵するくらいあるみたいだよ』

「ほ、本当ですか?」

『うん、とは言ってもレベルを上げないと、強大な器を持っていても使いこなせないけどね。つまりは可能性が0ではないってことかなあ』

 

 やっぱり物事はそう簡単にはいかないか。

 まあ、でも精霊神クラスになるのも夢じゃあ無いみたいだし最高だな。


「俺からも無の精霊に一つ聞きたいことがあるんだがいいか?」


 俺と精霊との会話を聞いていたヒートだが彼もこの精霊に興味があるようだ。

 ヒートはいつの間にかに俺の後ろから、俺の横に来ていた。


『うん、いいよ。それでなにかなあ?』

「君は初代無の精霊神に遣えていたのか?」

『仕えてはいないよ? あのころの私はまだまだひよっこで力が無かったし』

「じゃあ、なんで無の精霊神の事を知っているんだ?」

『だって初代無の精霊神は私たち無の精霊を作った人だし』

「え? 初代無の精霊神が作ったの君たちを?」


 俺もヒートも突然の精霊のカミングアウトに呆然としていた。

 初代無の精霊神が無の精霊を作った?

 どうやって作ったんだ?

 そもそも精霊って人工物だったの?


「………」


 ヒートもあまりの発言に驚いているようだ。

 口を開けぱっなしだ。


『あれえ、どうかしたあ?』


 そんな中無の精霊だけはのほほんとしていた。

 まあ実際には声しか聞こえないからなんとなくなんだが。


「せ、精霊ってもしかして全部人工物なの?」

『違うよ、私たち無の精霊だけだよう』

「で、作ったのが初代無の精霊神だということか?」

『うん、初代様はね、神様だから、私たちを作るなんて簡単なんだよ』

「「か、神様?」」


 俺とヒートの声がかぶった。

 珍しいな人と発言がかぶるなんて。

 とそれよりも。


「初代無の精霊神って神様なんですか?」

『うん、初代様はねこの世界を作ったんだよ。今から数万年前にね』

「…………。」


 ダメだ、ヒートは完全に脳が停止している。

 まあ、それくらい衝撃的な話だしな。

 精霊の話が嘘だという可能性もあるが精霊は嘘をつくことが出来ないということだしそれもないか。

 でも本当な話なのだろうか。


「今も初代様は生きているのですか?」

『ううん、今から数千年前に消えちゃったの、そして初代様が消えた結果なぜか私たちまで封印されたの』

「ということはあなたの他にも無の精霊は沢山いるということですか?」

『うん、どこにいるかまではわからないけど居るはずだよ。でも他の精霊たち皆そろそろ寿命かもしれないなあ』

「精霊にも寿命があるの?」

『うん? そうじゃなくて神獣の餌になってるかもしれないってこと、私たちは主君が見つからないと動くことが出来ないみたいだし』

「そうなんだ」

『うん、私たちも苦労してるの。それよりも早く契約しよう、神獣が近いんでしょう?』

「わかるの?」

『うん、とは言っても契約しないと何もできないんだよねえ』

「君なら神獣を殺すことがが可能か?」

『うーん、神獣の強さ次第かなあ、でも、君の器なら倒せると思うけどねえ。じゃあ早速、契約しようか』

「はい、それでどうすれば?」

『えーと、まず木から離れて、右手を前に出してなるべく動かさないようにしてね』

「はい?」


 俺は精霊の言う通りに木から離れ右手を前に突き出す。

 これでいいのだろうか?


『じゃあ契約するよお、逃げないでねえ』

「は?」


 次の瞬間目の前の木が凄い勢いで輝いていく。

 そして木から輝くエネルギーの光線が俺の右手に向かってきた。

 光線が手にぶつかると反射はせずに吸い込まれていく。


「え、え、これは?」

『私の力を君の器に移しているんだよお、もうちょっと待ってねえ』

「は、はい」


どうやら光線は精霊本人みたいだ。

隣に居るヒートが驚いていないところを見るに正しい契約の儀式なのだろう。


『はい、終わりだよ』


 精霊がそう言うと同時に木からの放出は止まった。精霊がもともといた木の幹や枝は小さくなり、そして輝きが消えてしまった。

 おそらくだが、この木は精霊によって巨大化していたのだろう。だから精霊が居なくなったことで元の大きさに戻ったのだろう。


「これで契約は終わりか、なんだか簡単に終わりますね」

「ああ、まあこんなもんだ」

『そうですよお、契約は簡単なのですう』


 どうやらこれで俺も精霊使いの仲間入りみたいだ。

 なんだか簡単に力を貰えたけど、これも俺の器が特別だったからなんだよな。

そう考えると選ばれるのも実力のうちってところか。


「それで、どうやって戦えばいいんでしょうか?」

「ああ、俺の剣を使え、ほら、これだ」


 ヒートが空中の何かに触れた途端、目の前に一本の剣が出現した。

 剣の柄には直径5cmほどの精霊石が埋め込まれておりとても高そうだ。

 これもヒートが作った剣なのだろうか?


「いいんですか、貸してもらっても?」

「貸すわけではないぞ? お前にただでやる」

「え、いいんですか? この剣ってかなり高そうですけど」


 確かヒートの作り出す剣はかなり高額だったはずだ。そんな高額な剣をただでくれるなんて気前良すぎだろう。


「ああ、俺が作る剣は一度でも精霊の力をまとわせて使えば他の人が使えないような仕組みになっているからな。だからお前が精霊の力をまとわせて使うともう二度と他の人は使えなくなるんだ。だからやる」

「ほ、本当にただでもいいんですか?」

「ああ、それに神獣を殺すと国から達成金を貰えるんだ、ルールではその場に居た5人までは同一の金を貰えるからな、だからお前が神獣を殺せばそれだけで俺は黒字になるのだ。だから気にするな」

「へえ、神獣を殺すと達成金がもらえるんですか、因みにどれくらい貰えるんですか?」

「うーむ、相手によって変わるが基本的には一人当たり100万アルスは貰えるな、だから買おうと思えば俺の剣だって10本は買えるな」

「100万アルス!?」


 かなりの高額な達成金だな。それだけ貰えれば確かに黒字だろう。途中に5万アルスの地図を使ったけど、100万アルスも貰えるならヒートに地図代と剣代を払っても85万アルスも手元に残ることになる。

 それだけあれば、旅にでも行けるだろう。


「まあ、とは言ってもそれ相応のリスクがあるから相当腕っぷしに自信がある奴じゃないとしないけどな」

「まあ、そうですよね。いくらお金を貰えるからって、挑んで殺されても意味が無いですしね」

『君なら大丈夫だよ、私が居るしい』


 うん、初代無の精霊と同じだけの素質を俺は持っているらしいし何も心配しなくてもいいか。

 それにしても、剣は貰ったけど使えるかな。

 俺って今まで剣を使う勝負なんてしたことが無いんだよな。


「あのう、俺今まで剣を使ったことが無いんですけど大丈夫ですかね?」

「無いのか? 普通は10歳位の時に習うはずなんだがな?」

「それも忘れたみたいです」

「そうか、それなら、これかな」


 そう言うとヒートは今度は銃を取り出した。

 色は白く、剣同様真ん中付近に精霊石が埋め込まれている。

 ヒートから受け取ると白かったのが赤色になった。


「これは銃ですか?」

「ああ、魔法銃と呼ばれるものだ。精霊の力を銃の弾丸に纏わせ打ち込む武器だな。因みにこの銃は炎の精霊向けの武器だから水や土とかの精霊は使えないが無の精霊なら関係ないだろう?」

『うん、私は万能の精霊だから大丈夫ですよー』


 なるほどな、だから白かったのが赤になったのか。

 剣同様、銃も使ったことは無いが剣よりはましだろう。


「これもヒートが作ったんですか?」

「いや、これは俺の知り合いが作った逸品だ。俺は剣しか作れないからな」

「へえ、そうなんですか」

「ああ、品質は保証するぞ。早速情報を見てみろ」

「はい」


 俺は早速、銃の情報を見てみる。


《 火炎銃・A級 スキル・自動追跡LV1・速度上昇LV1 耐久度・A級 》


「これは凄いんでしょうか?」

「ああ、凄いぞ。普通に買えば30万アルスはするだろうな」

「そんなにするんですか?」

「ああ、この銃は全体の中でもトップクラスの銃だし、さらに輸入品だからな高いのだ。それに俺の作る剣も現地だから10万アルスなわけで遠くの地で買えば30万アルスは行くぞ」

『かっこいい銃だねえ』


 そんなにするのか、でも俺には剣の腕は無いし、銃の方が向いているかもしれないな。

 それにしても、これで本当に神獣を倒せるのかな?

 そう考えていると精霊が俺に指示を出してきた。


『主君様、右手の方に銃を撃って!』

「え?」

『早く!』

「りょ、了解!」


 俺は銃を右手に構え、引き金を引いた。

 すると、銃が少し輝き、真っ赤に燃え上がる弾丸が発射された。

 弾丸は真っ直ぐ進むかと思ったが、20m先くらいで進路を変え少し右手に飛んで行った。


「くったたたったたがああああ」


 そして謎の声が聞こえた。

 今の声は。


『主君様、気を付けて、神獣がきたんだよ!』

「バル、とにかく打ちまくれ」

「は、はい」


 俺は銃の先を声の先に向けトリガーを何回も引く。

 すると時間さをつけて何発も神獣が居るとされる場所に方向修正をしながら飛んで行った。


 これが銃のスキル、自動追跡か、便利だな。

 それ以前にこれ誰が撃っても当たるんじゃないのか?


 複数発の弾丸は神獣に向かっていくと大きく爆発し、辺り一面を焼野原にした。

 威力凄いな。

 隣を見るとヒートも俺同様に銃の威力に驚いているようだ。


「や、やりましたかね?」

「さすがにこれだけ撃ち込めば神獣といえども倒れるはずだが」

『二人とも気を付けて、神獣の奴まだ生きているんだよ!』


 これでも、生きているのか、とんだ怪物だな。

 俺はもう一度銃のトリガーを引き撃ち込む。

 弾丸は同じように、神獣に向かって飛んでいくが途中何回も曲がりくねりそして、勢いが無くなり地面に墜落した。


「気を付けろ、まだその銃の追跡スキルは低いはずだから相手が高速移動していると当たらんぞ」

「そうなんですか?」

「ああ、後銃を撃つときにお前の魔力も減るからな。この銃は燃費がいいがお前の魔力量じゃあ、合計25発が限界だからな」

「25発ですか……今のところ12発撃ったから、後13発か」


 いくらでも撃ち込めれるのかと思っていたが限界があるのか。

 残り13発、これで精霊の息の根を止めなければならないのか大変だな。


『主君様、撃つときにもう少し貯めてはなったほうがいいかと思います』

「貯める?」

『はい、貯めて撃つと威力が上がります。5発分を纏めて撃ったら神獣を一瞬のうちに倒せるかと思いましてえ』

「なるほど、その手があったか。でもどうやれば5発分撃てるんだ?」

『主君様には、まだ出来ないと思うので私に任せてください』

「任せる?」

「簡単に言えばお前の体を一時的に精霊が乗っ取って神獣に攻撃するってことだ。本来は信頼関係が無いとやらないんだが、状況が状況なだけにしょうがない。精霊が体を操ろうとするが抵抗するな」

「はい?」

『じゃあ、憑依するようお』


 憑依?俺の体を乗っ取る?

 つまりは精霊が俺の体を代わりに動かして、代わりに撃ってくれるということか。

 まあ、今の俺では5発纏めて撃つなんて不可能だし精霊に任せるか。



「う、うわあああああああああ」


 俺の体に何かが入り込もうとしている。ヒートに言われなかったら必死に抵抗していただろう。

 足の先から徐々に体の感覚が無くなっていく。

 精霊には悪いが今まで感じたことが無い気持ち悪さだ。正直もう止めてほしい。


「絶対に抵抗するなよ、少しでも抵抗したら精霊の乗っ取りが0になってしまうからな」

『そうですよお、主君様には失礼ですが、今のままでは神獣には勝てませんよお。だから少しの間、私の乗っ取りに耐えてください』

「わ、わかってます」


 俺は抵抗しそうになるのを堪えながら、神獣の方を見てみる。

 すると、30m先くらいに神獣はゆらゆら揺れながらこちらに向かって歩いてきていた。

 先ほどの爆風で全身がボロボロになっていた。そのせいか、動きはとても遅い。

 俺たちが話している間に襲ってこなかったのは、その間に少しでも休憩し体力を回復していたのだろう。



『それじゃあ、撃ちますよお』

「ああ」


 俺の右手の指が銃のトリガーをゆっくりと引いていく。

 体中の感覚が麻痺しているのに体が勝手に動くというものは不思議なものだな。


『「火銃弾」』


 精霊の声と俺の声が混ざり合って一発の弾丸が神獣に飛んで行った。

 弾丸は今まで以上に輝き、溶岩のように真っ赤に燃えていた。そして光の濃度も先ほどよりも濃く、太陽のように光り輝いていた。


「ガアアアアアアアアアアアアアア」


 神獣も先ほどの弾丸と威力が桁違いなことに気が付いたのか、俺たちに近づくのを止め、後ろ向きになり逃げようとする。

 だが弾丸は逃げようとする神獣に向かって方向修正をしながら向かっていく。

 神獣も最後のあがきなのか高速で逃げようとするが、俺が放った弾丸も徐々に加速しているのかだんだんと神獣に近づいていく。

 これが銃のもう一つのスキル、速度上昇だろう。

 弾丸は加速していく。そしてとうとう、神獣に追いつき被弾した。

 弾丸は神獣の腹付近に当たると、神獣の体を切り裂き、体内を通過した。


「グアアアガアアアアア」


 神獣もあまりの痛みで動けないのか、その場に倒れ込んだ。

 神獣の腹付近は弾丸によって抉られ、酷い有様となっている。


「や、やりましたかね?」

『うーん。あと、もうちょっとかな?』


 遠くの場所で倒れ込んだから、はっきりとは言えないが、だいぶ神獣にダメージを与えることが出来ただろう。

 だが精霊が言うにはこれでもまだ足りないらしい。


「グアアアアアギャアアアアアアア」


 それでも、神獣はユラユラと立ち上がる。そしてゆっくりとだが俺たちから逃げようとする。


「お、追いかけないと」

『うん、もう一発撃とうよ!』


 俺は逃げる神獣を追いかけようとするが、隣のヒートに止められた。


「何をするんですか、早く追いかけないと!」

『そうですよお!』

「心配するな、まだだ」


 まだだ?まだだとは、どういう意味だ。

 ヒートはこんな場面で意味なく俺の動きを止めようとはしないはずだ。それは数日一緒に過ごしただけで俺でもわかる。

 でも、止める理由がわからない。

 いくら、ひん死状態の神獣でも一般人では敵わないだろう。

 このまま、逃げるとやばいことになるかもしれない。

 なのに、なんでヒートは俺を止めたんだ?


 そう疑問に思っていると、神獣周辺が大爆発した。

 爆発によって辺りの木は吹き飛び、そして燃え上がっていた。


「えっ? これはいったい?」

『えー、なにこれ?』

「だから言っただろう? 心配するなって。お前にあげた銃はだな、一度目標物の体内を通り過ぎたとしても、エネルギーがある限り何回でも目標物に向かっていくスキルを持っているんだ」


 ああ、なるほどな。

 確かに自動追跡ってスキルがあった。

 うん? でもそれじゃあ。


「あの、一番最初に放った弾丸って神獣が高速で逃げたから、途中で地面に落ちましたよね。今のは何で落ちなかったんでしょうか? さっきよりも神獣との距離は遠かったのに」

「スキルというものはだな、魔力の注入量でも段階が変化するんだ。今のお前が普通に撃っても3m位相手が左右に動き続ければ回避することが出来るが、お前が成長して魔力量が上がれば数10m揺れ動かないと逃げれないような弾丸を放つことが出来るようになる。つまりは魔力量の向上によって強力な力を発揮することが出来るんだ。通常はレベルを上げないと出来ないんだが、精霊に任せれば無理やり撃つことも出来るんだ」

「……つまりは、俺が10LVとか20LVとかの高レベルになった時に、本来は使えるのが今回は精霊によって無理やりだが使うことが出来たってことですか?」

「ああ、まあ、そんな感じだ」


 なるほどな、だから一度は通り過ぎた弾丸が戻ってきて、神獣にもう一度当たったのか。

 銃の注入魔力量が上がるほど、強力な攻撃を放つことが出来るということみたいだ。


「それで、神獣は死んだんでしょうか?」

「ふーむ、さすがにあれだけのダメージを与えれば死ぬはずだが」

『大丈夫だよ? 神獣の心臓は止まったよ!』


 そうか、なんとか倒せたのか、良かったああ。


「先ほどから疑問に思っていたが無の精霊は神獣が生きているかわかるのか? 確か他の精霊はそんな力は無いはずなんだが?」


 そういえば、そうだな。さっきから無の精霊は神獣の生死を教えてくれたが、なんでわかるんだろう?


『うーん、オーラみたいなものが纏わりついているか、ついていないかの違いかなあ』

「オーラ?」

「オーラって何だ?」


 ヒートも同じようにわからないようだ。

 オーラというと、某海賊漫画の覇気みたいなものしかわからないけど、そんな感じなのかな。



『オーラはねえ、色がついた煙みたいなもの……かなあ。精霊にはそれぞれ色があるんだけどね、神獣が精霊を食べると同じように色がつくんだあ』

「なるほどな、精霊を食べることで神獣も同じように色を放つということか。それでオーラか」

「なるほど、それで神獣の状態がわかったのか」


 無の精霊の固有の力みたいだが、何とも便利な能力だな。この力があれば、旅の道中に神獣からの不意打ちを防ぐことが出来るということか。

 精霊ってなんだか思っていたよりも便利な存在なんだな。



『それでさあ、そろそろ私からのお願いを言っても良いのかなあ?』

「お願い?」


 お願い?

 確かに無の精霊のお蔭で神獣を殺すことが出来たし、報奨金もこれから貰えるみたいだから、精霊の頼みを聞いてあげてもいいか。

 それに、お願いを聞かないことで精霊に嫌われて力を貸してくれなくなっても困るしな。



「それで、お願いって何? もしかして将来、怪物が復活した時に倒すのに協力するって話の事?」

『うん? それは私たち全精霊の願いであって、今回のは私個人の願い事だから違うよぉ』

「ヒートさん、精霊の願いを聞くのは普通なことなんですか?」

「ああ、そうだな。 俺も精霊と契約するときに願い事を聞いてやったぞ」

「へえ、どんな願いだったんですか?」

「俺の精霊は変わってるから、剣を作るのを協力したいとか言われたな。 まあ、精霊ごとに願いなんて違うからあまり参考にはならないが」

「そうですか」


 まあ人がそれぞれ違う個性を持っているように、精霊も別々の個性があるってことか。

 まあ、できる限りのことなら叶えてやるか。



「……それで、どんな願いなんだ?」

『実は2つあるんだけどいいかな?』

「……願いの規模によるな、世界征服とかなら不可能だ」

『世界征服なんて望まないよお、どちらかと言えば、世界平和の方を望んでいるしい』

「そうか、まあまずは聞くだけだ、聞いた後、俺に出来る範囲なら何とかしよう」

『うん、じゃあ一つ目の願いはね、私のことを、名前で呼んで欲しいんだ』

「名前? お前に名前なんてあったの?」

『うん、他の精霊はどうなのかは知らないけど、私たち無の精霊にはちゃんとした名前があるんだよお』

「で、なんて呼べばいいんだ?」

『うん、ルシアってよんで』

「ルシアだな、わかった。 それで次の願いは?」

『うん、私と一緒に旅に出て、今もなお、封印されている仲間たちを助けてほしいの』

「旅か」


 俺はもともと精霊と契約したら世界観光の旅に出るつもりだったし、何も不都合はないか。むしろ、ルシアの仲間の無の精霊たちに恩を売ることが出来るし、意外と良いことだらけかもしれない。



「うん、わかった。 ルシア俺と一緒に旅に行こう」

「はい、主君様、ありがとうございます」




―――――――――――――――――――――――――――――――――――



名前・ジュラリアル・ド・バルーシュ

 職種・無の精霊使い LV2

 能力値・攻撃力―100(初期値100)

     防御力―100(初期値100)

     体力 ―200(初期値100)

     魔力量― ∞(初期値100)

     敏捷度―400(初期値100)

 スキル一覧・剣術LV1(初期値LV1)

       狙撃LV1(初期値LV1)

       料理LV1(初期値LV1)

 魔法一覧 ・無

 金銭・0

 持ち物一覧


契約精霊・ルシア(無の精霊)

 特質能力・魔力合算

     ・神獣察知

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