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8/12

???

 「・・・きなさい・・・丈か」

 どれくらい寝ていたのか。いや、寝ているってことは、生きているのか?

 目を開けると、大木の手前で車が止まっていた。

 どうやら突っ込んだのは駐車場で、縁石に乗り上げて事なきを得た。そんなところだろう。

 周囲の霧も晴れているみたいだし・・・だが、どうしてだろう?

 「赤い光?」

 ちらちらと、赤い光が周囲を照らしている。車のテールランプじゃない。

 不意に聞こえた、窓ガラスをノックする音で、意識が戻った。

 そこには初老の警官。

 「君、大丈夫かね?」

 おかしい。この街に、人はもういないはず。

 「あの・・・どなたですか?」

 警官は不審な目で、彼を見た。

 「頭でも打ったのかい?」

 アダムは状況がわからない。だが

 「・・・あれ?」

 周りの木々が、さっきより青々としている。

 そんな馬鹿な!!

 車から降りると、2台のパトカーが後ろに停車し、人も数人。

 「どうなっているんだ?」

 よく見ると人々が着ている服は、どこか時代遅れで、パトカーも角ばってボンネットからサイドミラーが生えている。

 明らかに2048年じゃない。

 「まさか・・・タイムスリップ?」

 もう一度言おう。そんな馬鹿な!!

 古い映画みたいに、車に電流が流れたってか?

 「ここは・・・どこ?」

 「何を言っているんだ?F市中央公園だよ。

  君の車は、ハンドル操作を誤って、テニスコート駐車場に突っ込んだんだ。縁石に乗り上げていたからいいものを、間違えていたら人を轢いていたかもしれないんだぞ」

 やはり、ここはF市。

 警官は不審な顔をしながら、アダムに聞いた。

 「とりあえず、君の名前と住所を教えてもらえる?」

 「あ、あの・・・」

 恐らく、彼らに言っても通用しない。信じてもらえないだろう。

 「言わなくても、車のナンバーで分かるんだよ」

 まずい!

 ナンバー照会されれば、この車が市役所の車であることがバレる。そこから身元照会されれば、自分は存在しないはずの人間になっちまう。

 狼狽するアダム。

 そこへ―――

 「兄さん!!」

 こちらへ走ってきた女性。アダムと同い年くらいの若さで、ショートヘアーと綺麗な黒い瞳が印象的だ。

 「大丈夫?だから言ったじゃないの、明日にしなさいって」

 「あんた、この人の身内かい?」と警官

 「ごめんなさい。兄さん、風邪をひいて具合が悪かったんです。風邪薬を飲んでもよくならないもんだから、自分で運転して病院に」

 女性は話を進めるが、何が何だか・・・。

 彼女は、アダムの体をさりげなくつついた。演技しろと。

 「ええ、そうなんです。

  でも、衝突のショックで気付いたら、どうも具合がよくなったみたいで」

 警官は、溜息をつき、続ける。

 「あかんよ、風邪薬を飲んで運転しちゃ。具合が悪くなったら、救急車を呼びなさい」

 「救急車って、有料じゃあ・・・」

 「はあ?」

 「いえ、何でもありません」

 アダムは確信した。ここは、俺の知るF市でも、日本でもない。

 2048年には市販薬から副作用は無くなり、イタズラ増加や民間企業参入で救急車は有料になっている。

 じゃあ、ここは一体?

 「兎に角、今回は見逃すから、帰ってすぐ寝なさい。今、車を引っ張るから」

 警官は4WDのウインチをパトカーにつないだ。

 縁石から脱出したランドクルーザー。アダムは、その女性を乗せて公園を去る。

 しばらくして、女性が話す。

 「あなた、ここの人間じゃないわね?どこから来たの?」

 「東京だ」

 「へえ。どうして、こんな辺鄙な場所に?」

 「それより、どうして俺を助けたんだ?」

 「困ったときはお互い様。それに、バスを逃しちゃって・・・ここから家まで歩くのは骨が折れるわ」

 車はそのまま、住宅街へと向かう。

 その光景に、アダムは驚いた。

 かつて図書館で見た、昔の住宅街と全く同じなのだ。

 塀で囲われた欧州風の住居に、白い団地群。屋根にはソーラーパネルは無い。

 「済まん。頭を打ったみたいだ」

 「大丈夫?」

 「今、何年何月何日だ?」

 「え?198X年X月X日でしょ?」

 おい、何て言った?198X年?

 半世紀以上前じゃないか!?

 「あ、ああ。そうだったな」

 平然を装い、ラジオを付けた。

 もし198X年にいるなら、作動してくれるはず。

 ザーというノイズ音の後、ニュースが流れた。

 ―――次のニュースです。NASA、アメリカ航空宇宙局は、スペースシャトル・ディスカバリー号が無事軌道に乗った事を発表しました。チャレンジャー爆発事故後初となったスペースシャトル打ち上げ成功に宇宙科学界のみならず・・・―――

 やはり、ここは2048年じゃない・・・。

 あんな時代遅れの飛行機が現役だなんて。

 アダムは絶望に浸っていた。これからどうしようか、と。

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