閑話:異世界事情
〜???〜
一件の豪華な住宅で男の声が響き渡る。ここ、ヒューマンが住む街ではエルフやドワーフといったヒューマン以外の種族は少なく、少数のヒューマン以外の種族の大半は奴隷として扱われている。
「早くあの女を見つけ出せ!これ以上時間をかけるな!!」
人目で貴族であることが分かる麗美な服装をしている彼だが、その荒れ様からはとても高貴なる貴族とはいえない有様であった。
「くそ!エルフどもは何をやっている、異端者の粛正はあいつらの仕事だろう!女一人に子供二人を何故見つけ出すことすらできんのだ!」
異端者であり女一人に子供二人、フィーナとルイーダ、エリーゼのことである。彼女らはハーフエルフと匿う物として異端者扱いされ、追われている。もっとも、この世界にはもういないのだがそれを彼らが知る由はない。
「目をかけてやったのに!たった一度、たった一度で子供を産み、それがハーフエルフだと!?恩を仇で返しやがって!見つけたらただで済むと思うなよ」
フィオーレの愛した夫はフィオーレのことは愛しては居なかったようだ。
さらにルイーダとエリーゼが生まれたことで彼の立場は非常に危ない状態になっていた。
ハーフエルフを災いの子として危惧するのはエルフだけでなく、この世界に住む住民全ての認識である。そのハーフエルフを産んだ親として彼は罪に捕われていた。
「旦那様、城からの使いの者がお見えです。」
「追い返せ!」
「王命だと仰っておりますが?追い返し致しますか?」
王命……言葉通りであるが、王様からの命令である。これを背くのなら反逆罪になる。
「くっ!通せ!」
「その必要はありませんよ。公爵、直ぐに王城へ来て頂く」
彼が命令すると同時に扉が開けられ使者であろう者が姿を現す。
「無礼だぞ!」
「犯罪者に礼儀を問われる筋合いはありませんので、それよりも王命に背く気ですか?」
公爵と使者では身分が違う。格下の者に上から言葉を投げられ、憤慨するが王命に逆らうわけにはいかない。罪人だといわれながらも彼は王城へ向かった。
通された場所は謁見の間、扉が開かれた先には王様と王妃様、各大臣と王様と王妃様の隣に立つ岸団長と副長、想像たる面々だ。
「我が王よ、この度お招き頂き真に光栄でございます」
「そんなことはどうでもいい。其方を喚んだ理由分かっておろう」
片膝をつき頭を足れる公爵、そんな彼の言葉に耳を貸さず、本題を切り出す王様。
「はっ、ハーフエルフのことでしたら今捜索をかけております。見つけ次第殺します」
物騒な言葉だがそれはこの世界では当然のこと。彼はそれで済むと思っていた。しかし王様の目はさらに冷たくなっている。
「分かっておらぬようだな。ハーフエルフは災厄を喚ぶ忌まわしき者、彼の者は存在してはならぬ。このことは他国も同じだ。この意味がわかるか」
彼は困惑していた。おそらく存在してはいけないというのが他国と共通ならば殺してしまえば問題ないとでも思っているのだろう。実際はそれ以前の問題なのだが。
「ハーフエルフを我が国の貴族が産んだと他国に知られたことが問題なのだ、外交大臣」
「はっ、恐れながら……簡潔に、我が国への風当たりはかなり強まっております。詳しく申しますと、輸出を制限する国や災厄を喚ぶ者を産み混乱に陥れたと莫大な慰謝料を請求する国などがでております」
「うむ、財務大臣」
「我が国の財務状態は非常に圧迫しております。外交大臣が述べた慰謝料や輸入品に続き、捜索のための費用も湧き水のようにでております」
「軍部大臣」
「捜索費用の詳しい内訳となりますが、ハーフエルフとその母親を捜すために騎士団並びにギルドへの申請、高位の貴族が産んだとのことより治安悪化、その鎮静への騎士団の派遣、他国軍の動きを知るために派遣団の費用があります」
「治安大臣」
「はっ、…表面上は軍部大臣が申した民が国への不満を持ち始め騒動を煽るものや、犯罪へ走る者が多数おります。内部としては他国自国問わず書類が押し寄せ、業務が停滞しております」
各大臣がいう度に公爵の顔色が肌色から茶色、青色、真っ白へと変わっていく。
「わかるか、其方のしでかしたことでこれだけのことが起こっておる。本来ハーフエルフは生まれし時に殺すもの。それを怠った其方の責任だ」
「ま、待って下さい!わ、私は奴らが産まれたとき、ハーフエルフだとは知りませんでした。それを全てあのエルフが隠していたのです!」
「分からぬことは罪ではないが、知らぬことは時として罪となる。
其方のしでかしたことは大きい。知らなかったとでは済まされぬ程にな。この者を捕えよ!」
こうして公爵は捕えられ牢獄へと連行された。彼がこの先どうなるかは想像に難くないだろう。騒動を起こした罪人として公開処刑されるか、奴隷に落とされ死ぬまで労働力として使われるか、どちらにせよ地獄が待っているはずだ。
その後のこの国だが、ハーフエルフを探すためにエルフの里と連絡を密に行い、ハーフエルフは見つからなかったものの、エルフとの交流がかなり深くなったという。以後この国でハーフエルフが居たという記録はなかったが、そもそも産まれなかったのかは闇の中である。




