邂逅
~山本隆司 視点~
大学の帰りだった。親友の卓弥と由希はバイトで遅くなるらしく、同じく親友の春香と2人で帰っていた。
ルームシェアというのが近いのだろうか、僕たち4人は一緒に住んでいる。元々僕の家には空き部屋があったのでそこに卓弥と由希が住むことになり、その後に春香が住むことになった。
だから春香とは一緒に帰っていたのだか、途中で車窓から非日常な光景を目にした。
「ええっ!?」
「どうしたのぉ?」
少し間延びした声で問われるがそれどこではない。
「いや!今っ!誰か倒れてた!!」
慌てて路肩に車を止めて倒れている人物の元へと駆けつける。
「大丈夫ですか!?...反応がない!?きゅ、救急車!」
「隆司ぃ、スト~ップ、スト~~ップ」
相変わらずの間延び声、いつもなら気が削がれるところだけど、緊急時だ慌てない訳がない。
「でもこんなところで倒れてる!早く呼ばないと!」
「でもぉ、この人たちぃ、眠ってるだけみたいよぉ?」
「え?」
「ほらぁ」
女性だからあまり注目しないようにしていたんだが、確かに規則正しく胸が上下している。わずかに寝息も聞こえた。
「よ、よかった~。だけどやっぱり連絡はしないと。警察か病院か」
「う~ん、そうなんだけどぉ。一度家に運ばないぃ?」
「え?家に?でも警察や病院に連絡は...大事でないのなら後回しでいいか...」
春香は口調こそ間延びしていておっとりとした性格に見えるが春香の人をみる目は確かだ。春香なりの基準と正確な判断で人を見極めている。
「ええぇ、そこはぁ大丈夫だと思うぅ」
と返答がきたので、人目を気にしながら女性と子供2人を車に乗せる。
「こういう時は普通車の方がよかったんだけどな...」
とはいえ誰かが倒れていた時の為に備えることは難しいので1人で愚痴るだけにしておく。
彼女らを車にのせた後、我が家へと戻り彼女たちを客間に寝かせておいた。
「でも、どうしてあんなところで倒れてたんだ?」
リビングに戻り先程の出来事を思い返す
「さぁ?大事ではぁないと思うけどぉ、少し大変なことになるかもぉ?」
話が噛み合っておらず、しかも曖昧な表現で反ってくる。
「大変なこと?でも大事じゃない?よく意味がわからないんだけど...」
「安心してぇ、私も分かってないからぁ」
ダメじゃん!と突っ込むのは我慢する。春香の言い分に振り回されないためには話を鵜呑みにしてはいけないんだ。
「まぁとりあえず、卓弥と由希待ちか」
「そうねぇ、まずはぁ夕飯をつくらるねぇ、今夜は洋食中心よぉ」
この家の家事はローテンションでやることになっている取り決めの1つだ。
春香が夕飯を作っている間、僕は連れ帰ってきた彼女たちの容態を見ながらテレビをつけ時間を潰す。
「「ただいま~」」
「お帰り~」
「おかえりぃ」
卓弥と由希が帰ってきて春香と2人で迎える。
「疲れた~。そして腹減った~」
「ハルただいま!」
2人が帰ってきて家の中が明るく、賑やかになる。...やっぱり人数が多いと楽しいな。2年たった今でもそう思える。
「二人とも、夕飯の後議題がある」
僕の真面目な雰囲気に2人とも反応する。そして、
「わかった。けどまず飯食ってからだな。もうすぐ腹と背中がくっついちまう」
笑って夕飯を促す卓弥、少しとぼけた言い方に3人が苦笑しつつ夕飯をとりにいく。
誘拐と保護の境界線はどこにあるんでしょうかね?