市役所訪問
〜山本隆司 視点〜
「どうだった?」
卓弥が声をかけてくる。春香と由希の目にも心配のいろが見える。
「結果は上々。大きな問題は解決したと思っていい」
予想を上回る結果に気分がいい。
「どうやったんだよ。いい加減教えろって」
市役所についてからの二時間を思い返す。
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「それじゃぁ行ってくるよ」
フィオを連れて役所へと踏み出す。ここを乗り切ればフィオたちの生活はかなり保障される。
「私は何をすればいいのでしょうか?」
この作戦はフィオにも伝えてないから不安なのだろう。
「フィオはこれから言う事を覚えて。後、役人から何か聞かれても子供第一の考え方で答えて。それ以外は僕が対応するから」
フィオに覚えてもらうこと、設定上だが。
①フィオはこの街でルイとエリーを産んだ。
②フィオの夫は山本正司であり、婚姻はしていない。
③ルイとエリーの保険証を作るために住民票が必要で来た。
④出産後赴任先の海外で暮らしていたが夫(仮)が亡くなったため、1年前に日本へと帰ってきた。
大雑把に4つのことを覚えてもらう。細かいところは全て僕が受け答えするつもり。
「それじゃぁ始めようか。フィオ、先ずは住民票の写しが欲しいと行って窓口に行って。僕は付き添いとして付いていくから」
「は、はい……すいません。住民票の写しが欲しいんですけど」
「住民票の写しですね…あちらへどうぞ」
フィオと一緒に別の窓口へと通される。
「どなたの住民票の写しがご入用でしょうか?」
「ルイーダ・リィ・ルーナとエリーゼ・ラァ・ガイアの写しです」
役所の人が困惑している。住民票の写しと言われて明らかに外人の名前が出てきては戸惑うのも無理はないだろう。
「すいません。彼女の夫が日本人で、このしないで出産したそうですよ。ただ、夫の家名を名乗れず彼女自身が考えたそうです」
僕のいい分に納得したようだ。外人の子を登録するには両親のどちらかが日本人である必要があるからな。
「そうですか失礼致しました。調べて参りますので少々お待ちください」
役人が奥へと去っていく。……ここからが勝負だ。
「フィオ、気を引き締めて。ここからが正念場になる」
「はい、あの子たちのためにも」
フィオが気を引き締める。子供第一の考え方でってのは余計だったかな?そう思っていると役人が戻ってきた。
「申し訳ございませんが、出産届は受理されていないようなのですが、外国で出されたという事はありませんか?」
それはそうだろう。そもそも本来出していないものなのだから。しかしここで受理されていない事を認めるわけにはいかない。
「いえ、それはないですね。出産届は彼女の夫がここに出しにきましたから」
「失礼ですが貴方は?」
「私は彼女フィオの夫である山本正司の息子です。だからこそ、彼女が市内で出産した事も私の父親が出産届を出しにいった事も良く覚えています」
ここで一度畳み掛けておく。
「ルイとエリーが日本で生まれた事について何の問題はないはずです。さらに言えば彼女は出産するにあたり、日本への永住権と住民票を移してあります。ルイとエリーの戸籍と住民票がないはずがありません」
「上司を呼んで参ります。お待ちください」
あわてて奥へと駆け込む役人。一先ず区切りはついた。後はどこまで相手側に引きださせるか。
「お客様。あちらの部屋でお話をお伺い致します」
個室へと通された。役所側も少しは対応するとみてもいいのか?
「お待たせ致しました。もう一度お話をお聞かせ頂きたいのですがよろしいですか?」
役所側に条件を引き出させつつ先手を打つ。
「では私から、彼女は5年前私の父親、山本正司の子を作り、出産しました。その時永住権と住民票を母国から移し、ルイとエリーを出産したそうです。出産届は音の山本正司がこの役所に出しました。
3年前私の親が亡くなったのですが、彼女がそれを知ったのは1年前でして、赴任先の海外から戻ってきたそうです。最近、私の家に住む事になり、ルイとエリーの保険証がない事に気がついたのですが、2年前に役所の不正事件があった事を思い出したものですから。本日住民票の有無の確認のついでに写しをもらいにきたのです。」
上司の方が少しうなる。……2年前の不正事件を引き合いに出されたからだろう。
報道によれば役員全員が入れ替わったそうで、かなりの重大な事件として取り上げられていた。
「先ほどの方にも言いましたが、ルイとエリーの戸籍と住民票がないはずがありません。5年前確かに私の父親が出しているのですから」
「ないと困ります……あの子たちは今後どうやって生きていけばいいのですか……」
フィオの涙に上司の方が慌て始める。
「う、ううむ……..しかし………..」
「彼女は正当な法的手続きを行っているんです。問題なのは市役所側が書類の紛失をしたという事になりますよね?2年前とはいえ個人情報、それも極めて重大な戸籍と住民票の紛失です。対応して頂けないのであれば裁判を起こさざるおえないと思っています」
裁判という言葉に上司の体が反応する。
「誠意ある対応をして頂けるというのであれば。今後一切この事は漏らしません。……こちらとしても必死なんです。5才の子供の戸籍と住民票がないと言われているんですから」
役所側にやらせるのは不正行為になるだろう。通常なら裁判でしか決着のつかないことかもしれないが、現状ここの市役所は住民からの批難の目が厳しい。2年前に起きた不正事件が未だに尾を引いている。
もし、これ以上事件を起こす事はできないと思ってくれるなら、成功するかもしれないんだけど….
「君、部屋から出て鍵を閉めていきたまえ」
そばに立っていた役員を部屋から出すときり込んだ話を始める。
「私どもとしてはこれ以上市民にイメージダウンになるような事はしたくありません。……ですが、君たちがさせようとしている事はどういう事か分かっていますか?」
「はい、市役所側からすればこれこそ不正行為だと言う事だと考えています。しかし、私たちは正しい法的手続きをした上でここに来ていますので
」
「……わかりました。一度書類をとって参ります。そのままお待ちください」
「すいません。念のために彼女の住民票も確認して頂きたいです。同じ時期に提出した書類ですからもしかしてという事もありますので」
「………………お待ちください……………」
印象はかなり悪くなったかな……けどこのままいけばかなりいい結果になりそうだ。
「フィオ念のために覚えておく事が増えたみたい」
書類を書くときに不信感からこの計画が終わってしまうこともありうる。フィオには大変かもしれないが、設定として刷り込む事は多い。
「は、はい頑張ります」
住所から仕事、年齢とにかく必要だと思える事は覚えてもらう。フィオに一つ一つ覚えてもらっていると先ほどの上司が重要そうな封筒に入れた書類を持ってきた。
「これからする事は他言無用でお願いします。……ではこちらの書類へ記入をお願いします…」
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「てな具合でフィオとルイ、エリーの戸籍と住民票を登録する事が出来た」
ドヤ顔で流れを説明すると呆れた顔で見られていた。
「お前……嘘八百もいいとこじゃねぇか……」
「本当に案とは言えないようなやりかたね……」
「隆司はぁ立派なぁ詐欺師にぃなると思うわぁ…」
お前ら……あっちを見てみろあの親子を!
「お母さん大丈夫?」
「疲れたの?」
「ううん、大丈夫、もう大丈夫だから……」
みろあのほっこりする空気!もう少し労ってくれてもいいんじゃないか?
「「「わー、すごいすごい。さすがだね」」」
すごい棒読みだな!?むしろよくハモったよ!
「隆司のことはさておき、フィオちゃんたちの歓迎パーティーでもやるか……隆司のおごりで!」
「「賛成!!」」
おいこら、ちょっと待て、何で僕のおごり!?割り勘でいいじゃないか!
「「「却下!!」」」
今日一番頑張ったのは間違いなく僕だと思うんだけど。
「まぁ隆司、とりあえず帰ろうぜ……運転頼む」
納得いかない!
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