歪んだ鏡の戦い
「待てーっ、ドロボー!!」
深夜の王都に巡回兵士の叫び声が木霊する。
が、それで止まった犯罪者はいた例しがないのを、並んで走っている巡回兵士アルフォンスは知っていた。
叫んだのは、息せき切って走る上司だ。
深夜のカレリア王立博物館に賊が侵入したのは、ついさっきの事。
そして、今は侵入したその賊を追って、アルフォンス達は王都の細い通りを駆けていた。
賊の背中は遠い……が、追いつけないほどではない。
街灯に照らされているそれは、黒尽めである以外は軽装のそこらにいる若者と大差が無さそうだ。
「よし、いいぞ……」
走りながら、隣の上司がニヤリと笑った。
「は?」
アルフォンスが疑問を顔に浮かべると、上司は右手のさらに細い通りを指差した。
「この先の道はグルリと一周する造りになっているんだ。時計回りにカーブを描いて、そこの右の通りから出る事になる。お前はそこで待機していろ。俺が追えば、奴は必ずそこから現れる」
「は、はい!」
「よし、任せたぞ!!」
上司に託されて、アルフォンスはその場で待機する事となった。
そして待つ事、ほんの1分程度で通りの向こうから駆け足の音が響いてきた。
よし……とアルフォンスは腰に差していた警棒を抜く。
そして、相手が姿を現わした。
「え……」
思わず、声が出た。
街灯が相手を照らす。
いや、そうでなくてもアルフォンスには分かった。
だって、こちらに駆けてくるのは大人しそうな三つ編みの少女だったのだ。
服は、いつもの草色のブラウスに茶色のスカート。
「何で? どうしてエルナがここに?」
アルフォンスは混乱した。
相手はアルフォンスの恋人だ。
そして、後ろをしきりに気にしながら、彼女はこちらに近付き、そして――。
「腹をぶん殴られて、気絶したと」
「はい……」
話を聞いたコルネリアのオチに、アルフォンスはティーカップを手に包んだまま、項垂れる。
魔術で化かされたという事だ。
当然、盗賊は取り逃し、上司には後でしこたま叱られた。
今は謹慎処分の身である。
ここは、カレリア国の王城、裏口にほど近い場所にある地下室、宮廷魔術師ヨハンの工房だ。
騎士団の訓練を終えたコルネリアが訪れ、ヨハンがクッキーと香茶をテーブルに並べた時、アルフォンスは訪ねてきた。
という訳で、卓を囲む人数は3人となった。
……相手の姿をそのまま反映させる魔術『姿鏡《マネミラ》』は冒険家業を営んでいる魔術師達でも知っているが、アルフォンスが受けた術はおそらく違う。
という訳で、ここを紹介されたという話であった。
そして、アルフォンスが受けた術に、ヨハンは心当たりがあった。
「ああ、それはあれだべ。『想鏡』の術だなや」
ボリボリと硬質の髪を掻きながら、答える。
「『想鏡』……?」
「んだ。相手の身近な人物に姿を変える魔術だ。『姿鏡《マネミラ》』にさらに心術を組み合わせた上級魔術だよ。アルフォンスさんの前には、婚約者の姿で現れたんだべな」
そこでコルネリアがクッキーを摘みつつ、口を挟んできた。
「ヨハン。その術は、相手の技能なども真似たり出来るのか」
「んん、そこは出来るというか何というか」
「違うのか?」
コルネリアは首を傾げる。
まあ、真似できるなら出来ると答えるだろうし、出来ないなら出来ないと答えるだろう。
そこが曖昧では、コルネリアだって納得はしない。
「や、ちょっと説明が厄介なんだよ。例えばアルフォンスさん。婚約者のエルナさん、特技は何かあるべか?」
「えっと……そうですね、パンを焼くのが好きで、デートの時はよくサンドイッチとか作ってくれますけど……」
「なら、化けたその人物もパンは焼けるべ。んだども、例えばアルフォンスさんが知らないエルナさんの特技は真似出来ねえべ」
ヨハンの説明に、コルネリアはポンと拳を打った。
「なるほど、化かす相手の記憶に依存するのか」
「だべ。これ本来はどちらかといえば、相手を怖がらせてから使う術だよ。そうすると、相手が恐ろしいと思ったモノに化けられるだ」
「ちなみにヨハンの怖いモノは?」
「体長10メルトの黒油虫」
即答するヨハンに、2人は総毛立った。
「……それは……怖いな」
「……ええ、怖いです」
「ちなみに破る方法はそんなに難しくねえだよ。これ、複数人相手には通用しねえ術なんだべ。例えば最初にアルフォンスさんに術を掛けたらば、エルナさんで固定になっちゃうだ。別人になるにはもう一度術をかけ直す必要があるだよ」
「あくまで1対1で役に立つ術という訳か」
「術としては、だべ。おっきな黒油虫に化けられたら、普通皆逃げるだよ」
そりゃそうだ、と聞いていた2人も同意する。
「使い方次第という奴だが……魔術の悪用は、同業者としてはちと困るでなあ」
小さくため息をつき、ヨハンは席を立った。
「やるのか、ヨハン」
「まあ、特に切羽詰まった用事もねえし、こういうのはさっさと捕まえた方がいいべ? 」
何でも賊は連日、貴族の館や博物館などを荒らしているらしい。
狙うのは、主に呪具と呼ばれる魔術を秘めた道具類。その中でも稀少モノを標的に定めているという。
今日から、遠く東にある国の宝物の展覧会が、今回の事件とは別の博物館で行なわれるというので、それに参加させてもらう事にしようとヨハンは考えている。
「ならば、私も手伝おう」
コルネリアも、鞘に納めた剣を手に立ち上がる。
「え、や、コルネリア様は騎士団のお仕事が……」
「今日の分はもう終わった。何より、ヨハンの力になりたいんだ」
「は、はぁ」
「そもそも、ヨハンが捕り物をするというのにのうのうとベッドで寝ていられるはずがないだろう。翌日寝不足になるのは間違いない。寝不足は美容の大敵だ。そして肌が荒れるとヨハンからの印象が悪くなってしまう」
すごい論法であった。
というかそれなら夜更かししても同じではないかと思ったが、どうせそれも言い負かされるだろうとヨハンは踏み、要するに諦めた。
「……という事だが、アルフォンスさん、よいべか?」
「え、ええ……あ、でも騎士の方だと、ウチとの管轄で上がいい顔しないかもしれません」
城下町の治安は、巡回兵士達の管轄だ。
そこに王立騎士であるコルネリアが口を挟むと、ささやかとはいえ縄張り争いの種になりかねない。
「何、私はヨハンの弟子という事にすればいい」
「ちょっ、それは畏れ多いだよ」
「姫は弟子に出来て、私は出来ないのか」
姫、すなわちこのカレリア王国の王女、漆黒の髪と同色の瞳が印象的な『黒真珠』と謳われるフィーネである。
現在は、隣国に留学中の身だ。
コルネリアにしてみれば、何故彼女はヨハンから直に魔術を教われて、自分は駄目なのかとよく愚痴ってもいた。
「う……それを言われると、弱いだ」
「それにしても君は目が高い。宮廷魔術師の中でも、ヨハンの力は素晴らしいのだ.よく声を掛けた」
「あ……」
コルネリアの言葉に、アルフォンスは目を逸らした。
「……その」
ヨハンは、アルフォンスが持ってきた紹介状をもう1度改めた。
複数枚有り、冒険者組合から王立図書館、図書館から王立魔導院、魔導院から賢者の館……とたらい回しに遭い、最終的にここに辿り着いたらしい。
ぶっちゃけ他の連中は研究で忙しいので、ここに押しつけた、という事だろう。
「あー……うん、大体理由は分かるべ。だども、オラも相談されたからには、全力を尽くすだよ」
自分で動く事は特に苦にしない性格のヨハンとしては、不満はなかった。
「よ、よろしくお願いします」
そして深夜。
等間隔で街灯の並ぶ細い小道に、コルネリアは立っていた。
この辺りは工場街で、夜になるとほぼ完全に無人になる。
逃走や荒事には格好の場所だった。
博物館のある方角を見上げると、騒動の音と共に幾つもの光が夜空を照らしていた。
事件が起こったのだ。
やがて、誰かが駆けてくる足音が響いてきた。
「さすがヨハン。大したダウジングだな」
ヨハンはダウジングによって、2つの逃走ルートを予測していた。
コルネリアが立っているのは、その内の1つ。
ヨハンの方は外れらしかったがまあ、すぐに追いついてくれるだろう。
「そこまでだ、賊め! 足を止めろ!」
剣を抜き、声を張り上げる。
すると、通りの向こうでわずかに足音が緩んだかと思うと、茶色のローブを羽織った眼鏡の小男が現れた。
「オ、オラだべ! ヨハンだよ!?」
「残念だったな。私の目は誤魔化せない。お前は偽者だ」
コルネリアは剣を構えたまま、油断なくヨハンを騙る人物を見据える。
「な……そ、そんな事ねえべ!? オラ、今の発光弾を見て、急いで来ただよ。信じて欲しいだよ、コルネリア様!」
「いや、違う。まず匂いがおかしい。ヨハンはもっと泥と草の匂いにまみれている」
「匂い!?」
「それにここまで駆けてきた時の足音。ヨハンの足ならばもっと短い間隔だったはずだ」
「あ、足音、だと……!?」
ヨハン、いや賊の声音が変わる。
「何より最初に私を見た時、その目に好色があった。ヨハンは非常に残念な事にそんな目はしない。常に逸らすから、いつもいつも私はその視界に入るように苦労しているのだ」
「そんな事まで分かるかあ!!」
ついに賊が切れた。
フッとコルネリアが冷たい笑いを浮かべる。
「私とヨハンの強く深い絆を、偽者如きが理解出来るはずもない」
「クッ、こうなったら……」
ヨハンの姿をした賊は、印を結んだ。
すると、周囲の石畳が浮かび上がった。
「む……」
「ゆけ!!」
そして石畳が、一斉にコルネリアに襲いかかった。
だが、その悉くをコルネリアの銀剣は弾き飛ばす。
それどころか、凄まじい速度で賊の側面に回り込み、彼に襲いかかった。
「甘い!」
しかしその剣は、地面からせり出した土の壁に阻まれてしまう。
ヨハンの姿を借り、またその技能まで賊は身につけているようだった。
追い打ちの石礫を回避し、2度転がってコルネリアは姿勢を整えた。
「しまった……」
「クク、どうした。その剣は飾りか?」
「いや、私の計算違いだった。そうか、私にヨハンを傷つけるなどという真似、出来るはずがないのだ」
「…………」
一瞬賊は絶句したが、すぐに気を取り直したようだ。
「つ、つまり、俺の攻撃をアンタは受け続けるしかないという事だな!」
「いや?」
コルネリアは、自分の後ろを軽くしゃくった。
そちらから、短い間隔の駆け足の音が響いてきていた。
「お前も慌てていて、気が回らなかったと見える」
「援軍か!?」
頬や額の汗をタオルで拭い、ヨハンが見たのは石畳を根こそぎ引っ繰り返された小道の姿だった。
「これはまた、酷い事になってるべ……」
「ヨハン来たか!」
コルネリアは、怪我1つしていない。
ただ、その向こうに自分にそっくりの小男がいたのには、驚いた。
「コルネリア様、やっつけてなかっただか!?」
てっきり、コルネリアがあっさり終わらせているものと思っていたのだ。
これは予想外だった。
「うん、すまない。偽とは言え、お前の姿をしたモノを害する事は出来なかった」
「あああ……」
そうだった、こういう人だった。
「ほう……本物が来たか」
賊が呪文を呟くと、地面が揺れた。
そして土と石畳が盛り上がり、それは見上げるような石人形へと変貌していく。
高さは周囲の家と同じぐらいだろうか、巨大なゴーレムは拳を掲げたかと思うと、それをヨハンに向けて振り下ろした。
「おお!?」
ヨハンは、慌てて跳び退った。
「あ、あの……コルネリア様?」
いつの間にか、自分の隣に駆け寄っていたコルネリアに、ヨハンは声を掛ける。
「どうした、ヨハン。早くやっつけてくれ」
「それはいいだども、あの、ちょっと、オラに対して過剰評価しすぎだべ。オラ、あんな強力な術、今の時期は使えねえだよ。あんなに月が細っこくちゃ、無理だべ」
ヨハンは空に浮かぶ月を指した。
「何と、そうなのか」
「部屋で話してた通り、『想鏡』は掛けた相手、この場合はコルネリア様の想いに依存するだよ。だから、偽者はあんな無茶が出来るだ」
「うん、さすが私のヨハンだ。すごいな」
感心してから、コルネリアは反省した。
「……それで、すまないな。厄介なのか?」
「ま、勝てない相手ではねえだよ。無茶なのには違いねえべし」
呟く2人を余所に、ヨハンの姿を借りた賊はご満悦のようだ。
「はっはー、どうやら本物の実力以上の力が振る舞えるようだな。これはいい……」
賊が腕を振るうと、ズン、とゴーレムが地面を響かせ、ヨハン達に迫ってくる。
「……この姿、しばらく貸してもらうぜ? ずいぶんと使い勝手がよさそうだ」
「土魔術師をそんな風に評価してくれるのは有り難い話だども……」
ヨハンは小さく術を呟き、地面を氷上のように滑った。
「な……!?」
土魔術『鏡床』。
音も無く高速で距離を詰めてくるヨハンに、同じ顔をした賊は驚愕を隠しきれない。
「……さすがにオラが2人いられると困るだよ」
慌ててゴーレムに攻撃させるが、ヨハンは素早く身を翻し、拳は地面に大穴を穿つだけに終わってしまう。
そして滑走を続けるヨハンは、ゴーレムの懐に潜り込む。
その股の間から、慌てる賊の姿が見えていた。
「そ、そんな術、俺は知らないぞ!?」
「『想鏡』の術の欠点は、掛けた対象が知らない術までは反映されないって事だべ。あくまで対象の想念から生じたモノだよ」
「なるほど、私は今ヨハンが使った術までは知らない」
後ろで、コルネリアが納得していた。
「く……っ! う、あ……!?」
新たな術を放とうとした賊だったが、それが発動する事はない。
「ゴーレムは巨大な人型の四肢を動かす大技だべ。いくらコルネリア様のイメージする強いオラだとしても、他の術はさすがに同時には使えねえだよ」
「だが、力は俺の方が上だ!!」
ゴーレムが土の雪崩となって崩れ去り、真上からヨハンに降り注いできた。
大量の土砂が、ヨハンを埋めてしまう。
「ハハ! ざまあみろ!」
「や」
「――――」
ヒョコッと土砂の山から、ヨハンが姿を現わし、再び賊は絶句する。
地面の中を自在に泳ぐ土魔術『地行』である。水の中と同じく土中にいる間は呼吸が出来ないが、土属性の攻撃はほぼ無効化出来る術だ。
「その、何というか」
土砂は地面に沈み、平坦な石畳が再生された。
驚く賊に、ヨハンは気まずそうに、頭を掻いた。
「魔術というのは、力が強ければよいというモノではないだよ。いかに巧く、手持ちのカードを切るかが戦闘においては重要だべ」
「ご託を並べているだけで、俺に勝てるか!!」
「無駄だべ」
賊の土魔術が発動する事はもうない。
精霊を扱うモノ同士の戦いは、言わば陣取り合戦のようなものだ。
その場にある精霊の奪い合いであり、それを征したモノが勝利を得る。
賊がゴーレムを動かしている間に、ヨハンはこの場にある土属性の精霊を全て、自分の下に引き寄せていた。
そもそも精霊は基本的に破壊を嫌う。
ヨハンと賊では、どちらにつくかは自明の理であった。
「さ、大人しく捕まるだよ」
「ぐ……!?」
ヨハンが足をタップさせると、賊の足下に生えていた雑草が伸び、彼の足をその場に縛り付けた。
木魔術『縄草』だ。
雑草はさらに触手を伸ばし、彼の胴や腕にも迫りつつあった。
「『想鏡』!!」
追い詰められた賊が叫んだ直後、その身体が虹色の身体に包まれた。
そして銀閃が瞬いたかと思うと、自身を取り囲んでいる草をその剣が一呼吸で散らしていた。
そこに立っていたのは、軽甲冑に身を包んだ銀髪の娘、コルネリアだった。
「この姿なら、どうだ?」
「や、それならもう詰みだべ?」
コルネリアの姿を取って勝ち誇る賊に、ヨハンは困った顔で頭を掻いた。
その脇を、銀色の風が通り抜ける。
「!?」
コルネリアの顔をした賊が、驚愕に目を見開く。
「その姿なら、普通に倒せるぞ?」
その首に、本物のコルネリアの一撃が叩き込まれた。
鞘に納めたままなのは、まあ生け捕りの方がいいだろうという配慮である。
「ひ……ひきょう……もの……」
白目を剥いて、賊が倒れる。
『想鏡』の術は解け、目元にマスクをつけた盗賊の姿が露わになった。
右の中指に嵌められた指輪から魔力を感じ取り、ヨハンはそれを引き抜いた。
おそらくこれが、『想鏡』の術を秘めた呪具なのだろう。どこかの古代遺跡で発見でも下のだろうか。
「そもそも、最初から一対一だなんて言ってねえべな?」
「うむ、何を勘違いしているのやら」
ヨハンとコルネリアは、パンと手を叩き合った。
「ありがとうございました」
「や、いーだよいーだよ。困った時はお互い様だべ」
兵士宿舎の前で頭を下げるアルフォンスに見送られ、ヨハンとコルネリアは帰途についていた。
博物館の方の事後処理は巡回兵士達に任せたので、あとはもう寝るだけだ。
「コルネリア様も、お疲れ様だっただよ」
「私も別に気にはしていない。それよりも、ヨハンと一晩を共に過ごしてしまった……今日の事は記憶が薄れない内に日記に書かなければ」
「……お願いだから、脚色抜きで書いて欲しいだよ」
そこはかとなく不安を感じるヨハンであった。
「そうだな。しかし、ヨハンの格好いい所を書くと、日記1冊が潰れてしまいそうだ」
「たった一夜にどれだけ文章費やすつもりだべ!?」
「ところで話は変わるがヨハン。あの『想鏡』という魔術だが……例えば、鏡に映った自分に使うとどうなるのだ?」
「おっ、面白い事を考えるだな、コルネリア様。その場合は、術者が思った人物に変わる事が出来るだよ」
コルネリアが、隣を歩くヨハンを真顔で見下ろした。
「……ヨハン。私も魔術を学ぶべきじゃないかと真剣に思い始めている。もしくはあの指輪が欲しい」
「動機が不純すぎるだよ!? それにこれは陛下に報告して多分、宝物殿に封印されちゃうべ!?」
「む、まるで私が何を考えているのか分かっているかのようだな。ついに互いの心が通じ合うようになってくれたか」
「……いや、大体何考えてるかぐらい、分かるだよ」
「うん。これで寝る時もヨハンと一緒だな」
「それはなんか違うような気がするだよ!?」
自分と同じ姿の人間が、コルネリアの部屋でゴロゴロ転がっているのを想像し、ヨハンは頭を掻きむしった。
「私もちょっと違うような気がするが、これでも妥協だぞ。なお、ヨハンが毎夜、私の寝床に夜這いに来てくれれば、全ての問題は解決する」
「コルネリア様の個人的事情は何か解決するかも知れねえけど、オラに問題が山のように降りかかるだよ」
「その時は私が助けよう」
「原因になる人の台詞じゃねえべ……」
「ヨハンも好きな時に、私の姿になるといい。私が許可しよう」
「……許可されても困るべよ、それ」
……何か久しぶりに戦闘書いたら、えらい長くなった気がします。