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俺はお嬢様が恋をしたことに気付いていない  作者: 海原羅絃
第2部 第1章 進級と記憶とお嬢様
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第十一話 桜降りしきる・・・・

 桜降りしきる春この頃。

 春と言えばいろいろな行事があるがその中でやはりベターなものと言えばやはりお花見だろう。

 桜並木の下でみんなで宴会をするあれだ。

 そのお花見が今年、俺の通う学校で行われる。このようなイベントは例年ではあまりなかったが今年度の生徒会は何かとイベントごとに手をかけているらしい。

 だから先日のような部活動関融解などを催したりするのだろう。正直俺は普通の学校生活を送れればそれでいいと思っていた。けれど、その願望はすでに破棄され、日に頂上の有様だ。

 マンガのような経験もあり現実的なこともいろいろとあった。

 けれどそれはすべて真に受けなくてはいけない出来事。決して背けてはいけないことなのである。

 でも、時には背けなければいけない時もあるのかもしれない。それが今なのかもしれない。

 大事な人の記憶が失われ今までのように接することが困難になってくる日常。それがどれだけきついのか。その人の記憶に自分がいないというのはどれだけきついことなのか俺は今現実に味わっている。

 だから記憶を失った人物とは初対面の形でスタートとなる。

 「じゃあ瀬原君はお料理得意なんですね」

 元気のいい声が俺の鼓膜を伝わって聞こえる。やはり口調がいささか慣れない。というか前と違ってほんと接しにくい。

 言葉づかいもなんか敬語のようなそんな感じだし鈴川のようで鈴川じゃない。

 「まあそれなりに料理はできる。一応一人暮らしなわけだし」 

 細かな説明までつけなきゃわからない部分もある。何せ俺の事は覚えていないのだから。

 「じゃあ普段どんなのを食べているんですか?」

 「えっと・・・・・簡単なものだよ。野菜炒めとか・・・・うん。そんなもん」

 曖昧な言葉ながらも俺は答える。

 「じゃ今度ご馳走させてもらえませんか?」

 「まあ、いいけど・・・・・・」

 とは言われてもお嬢様の口あうかどうかなんてわからない。毎日高級料理食っているわけだし。

 というわけで何故か俺の家に鈴川がいる。

 理由は単純明快だ。

 鈴川の親父さんが会議で朝早くから出るというわけらしい。

 使用人の外内さんとほかのメイドさんたちもなんやら出張らしく家には鈴川だけになってしまうとのこと。

 そんなわけで俺が引き取る形に。

 間際に外内さんから言われた忠告を思い出すと背筋がぞくっとしちまう。

 とりあえず貴重品の如く俺は鈴川ときょう一日居るのである。

 今はお昼。そんな中で食事をしているさなか俺と鈴川は会話をしていた。

 「じゃあ今度のお花見でも何か作るんですか?」

 「まあ一応作ることにはなっている」

 しかも全校分俺が何を作るのか把握する。さすがに前項の要望で何を食べたいのかなんてそこまで把握できる能力はないので俺が勝手に献立を組むことになった。

 それでも全校分作るとなればかなりの時間と手間がかかる。さすがに生徒会のほうも俺の負担を考えてくれたのか各クラスから一人ずつ応援要員を用意してくれるとのこと。

 有難いことには変わりはないのだが、こっち応援をしてもる身でもあるから料理が得意な奴が欲しいだなんてとてもじゃないけれど言えない。

 「楽しみですね」

 「ああ・・・・」

 普通鈴川だったら『瀬原君の醜態をみんなの前でさらけ出すことができる』なんて薄気味悪い笑いをしながら言うに決まっている。でも、今の鈴川じゃそんなこと言うはずないか。

 善と悪がすり替わったような・・・・・

 「そのお花見というのはいつやるんですか?」

 「今週の土曜日らしい。九時に現地集合らしい。場所は・・・・・」

 げ、ここってかなり有名な場所じゃん。

 生徒会長から渡されたプリントで日時や日程を確認していたお花見の場所に目を丸くした。

 ここって夜中から待ち伏せていないと超満員になる場所・・・・・会長もやってくれるよな。わざわざこんな場所まで確保しようとするなんて。

 しかし、プリントの一番下に追記として『その日は笹の川学園は一日貸切だからよろしく☆』と明朝体で打たれていた。

 ・・・・・やってくれるな生徒会長。

 まあこれだけの事はやってのけてしまうのが今の生徒会だからな。ああ、来年もこんなのやるのかよ。

 「どうしたんですか?」

 心配している顔で鈴川は俺に聞いてくる。

 俺は鈴川の声で我に返り先ほどの質問の答えを返す。

 「土曜日に九時に新宿御苑だそうだ。ここから結構近いよな」

 「あ、そこ知っています。よく子供のころ遊びに行った覚えがあります」

 なら大丈夫か。とりあえず準備するものを準備しちゃって・・・・・・ 

 そんな形で行けばどうにかなりそうだな。

 「さてと、買い物でも行くとするか。鈴川もついていくか?」

 「では、ご一緒に」

 俺は財布をもち、鈴川ととともに近くのスーパーへと足を運んだのであった。













 買い物を済ませた俺たちはまっすぐ家路をたどる。

 俺は両手にエコバッグからはみ出すくらい購入した商品がぶら提げられ、鈴川は余ったものを両手に抱え込んでいた。

 「わるいな。本来なら俺がすべて持つ予定だったんだけれど」

 女の子にまで荷物持ちをさせるなんて男として不甲斐ないよな。

 しかし鈴川は首を横に振る。

 「いいえ、私が買い物について気の谷荷物持ち一つしないなどそれこそ失礼だと思います。せめてこれだけでもお持ちしたいです」

 俺に強く願望を立てつけてくる鈴川の瞳は真剣だった。そこまでいうのならあれだけれど・・・・・

 それに鈴川の両手に抱えているものが何なのか知りたい。

 いや、買い物と一緒に購入したものだけれどそれは会計を済ませてから店を出ようとしたところ、鈴川は思い出したかのようにまた店へ戻ってしまった。

 その時なのだろうか。たしかレジ袋を持って帰ってきたのだから。

 あのレジ袋の中身が知りたい・・・・・・

 だって普通だったら買ったものを知られたくないのであればレジ袋に入っているものをあんなに大事そうに持っているわけないだろ?どう見ても怪しすぎる。

「な、なあ鈴川。そのレジ袋の中には何が入っているんだ?」

 恐る恐る俺は聞いてみた。

 「これですか?これはですね・・・・・」

 まるでおもちゃを買ってきた子供がお母さんに見せるようなしぐさをする。

 レジ袋から出てきたのは・・・・・

 「げっ!?」

 「これです!!」

 キラーンとおまけに効果音が付きそうなくらい大真面目に、激しく、高々とその物体を突き上げてきた。

 肉切り用の包丁を。

 ちょっとまて。俺には理解できないぞ。

 なんで鈴川が包丁を持っているんだ?」

 「あの、俺は買ってきたものが何か知りたいだけれど・・・・・」

 「どうしたんですか?わたしはちゃんと買ってきたものを見せましたよ」

 「これが?」

 俺は鈴川の手中に収まる包丁を指差す。

 「はい」

 相反する鈴川は、冷静に答える。

 まさか・・・・・なぁ。

 「じゃあまだ何か入っていそうだけれどその中には・・・・」

 「あ、これは包丁研ぎです。念のため買ってきました」

 声高らかと答えるその姿はどこからどう見ても小学生にか見えない。

 まさか精神状態までもおかしくなったんじゃねえだろうな。

 前までの鈴川なら完全に俺はこの状況にお陥った場合やつを山姥やまんばと揶揄しているだろう。

 しかし間の鈴川を見る限りそうには見えない。

 というか見てしまえばそれはそれで終わりなきがする。

 「で、それは何に使うんだ?」

 汗ダラダラじゃねえか俺。

 いつもなら質問してもたいていの返事は予測できるのに今回に至ってはそうにはいかない。 

 「もちろん切るんです♪」

 「何を?」

 「ここは人間と言?ったほうがいいでしょうか」

 「そういう問題じゃねえ!?」

 恐るべし天然予測不可能鈴川さん。

 何を言うのかさっぱり予測できないです。

 完全に悪魔鈴川なら「もちろん夕飯の材料で使う誰かさんの肉を捌く為よ」なんて吊り上った眼でいいそうだよな。

 「とりあえず・・・・・さ、危ないからしまっておかないか?

 「何でですか?」

 「何でもいいからしまえ。じゃなきゃ完全に俺ら変人扱いされる」

 「銃刀法違反者をしてじゃなくてですか?」

 そこかよ!?

 律儀に罪状答えているんじゃん。

 でも包丁での銃刀法違反て武器として使った時だよな。

 何て思考を巡らせながら包丁の柄を握っている鈴川を見る。

 どうする・・・・・ここで鈴川はそのカバーごとおれを刺しに行ったら。

 間違いなく天然じゃ済まされなくなるぞ。

 「というわけだからさ・・・・・しまわない?その凶器」

 「瀬原君、もしかして私の購入したものは気に入らないと?」

 「誰もそんなこと言ってねえしちょっと驚いただけだよぉ!!なんでそんな悲しそうな目で見るのー」

 俺は必死に宥めようとするが鈴川が潤眼になりながら俺に反論してくるからもうどうしようもない。こんな犯罪者いたらみんないちころだけど今立場逆転したよね!?完全に俺悪者扱いになってね?

 周りの視線がどんどん強まる。気づかぬ内にこんなにギャラリーいたのかよ。

 ああ!!

 「帰るぞ!!」

 俺は鈴川の手を取り大通りをまっすぐ走って行った。

 ったく、これじゃ前と変わらねえじゃねえかよ。

 これがあの鈴川との会話だったら・・・・・・

 「ううっ」

 想像するだけで悪寒が走る。

 「ところで瀬原君」

 「あ?」

 息をぜえぜえと吐きながら鈴川が俺に聞いてくる。

 「今日の晩御飯は何ですか?」

 そうだな・・・・・今日は。

 「シチューにするか!!」

 夕焼け染まる中、俺は鈴川とともに走って帰って行った。


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