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俺はお嬢様が恋をしたことに気付いていない  作者: 海原羅絃
第1部 第1章 鈴川蘭というお嬢様
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第六話 自分で決めた人

 どうにもさっきの鈴川の言葉が気になる。ダンスを踊っている最中でもその事しか頭になかった。

 「このダンスは足を軽快に動かすだけでいいのよ」

 「え、ああわかった」

 言われた通り俺は足を複雑な動きをせずに軽快に動かす。

 確かにこれなら音楽に合わせながら踊れる。

 しばらくすると音楽が鳴りやみ会場に再びざわめきが生じる。

 「案外よかったわよ」

 そう褒められても恐らくこれからこの場でダンスをすることは余程なことがない限りないだろう。

 そんなことを考えていると俺たちの間に一人の男が割って入ってきた。

 「鈴川家のご令嬢ですか?」

 なんだ?こいつ。

 見るからに俺たちとほぼ同年代できっちりとタキシードを着こなしている。どこからの御曹司なのかもしれないな。

 「僕は源都電力の御曹司です。今度一緒にドライブでもどうですか?」

 源都電力って確か関東一帯の電力を締める大型電力会社じゃないかよ。

 そこの御曹司って・・・・・・・・・・・・・・・

 知っているぞ・・・・・これは世間で言われるナンパという奴だ。

 ちなみに俺は生で誰かがナンパするところを見たのはこれが初めて。

 まあ、俺でもその結果は分かっているんだけど。

 「ごめんなさい。私既に彼氏がいるのよ」

 と言いながら鈴川は自分の腕を俺の腕に絡めてきた。

 もちろん結果は予想を超えてしまった。

 俺が彼氏!?

 「でもその人は何処のグループにも所属していないただの一般人でしょ?そんな貧相な人より僕と一緒にいたほうがいいよ」

 貧相で悪かったな。だいたい人間どこかのグループに所属していなきゃいけない運命なのかよ。

 一発殴りたいと思ったが場所が場所であり立場が立場であるから今この場で問題を起こせば鈴川に迷惑がかかる。今は我慢だ。

 「申し訳ないけど私いくら顔がいい男の人でも自分が好きになった人以外とはどこにも行ったりはしないし、付き合ったりしないからその辺は分かってほしいな」

 そういうと源都電力の御曹司はあきらめて俺たちから引いた。

 「こういうのしょっちゅうなのか?」

 「毎回そうよ。今の人だって多分6回くらいは私を落とそうとしているかもしれないわ」

 それだけ鈴川蘭という人物には魅力というものがあるのだろう。

 まあ、学校でもファンクラブあるし他校からも告白されるくらいのやつだからな。

 「さっきも言ったけれど私は自分で自分の幸せを決めたいのよ。誰かに選べばれるような恋もしたくはないし、生活も送りたくはない。私の人生は、自分の人生はやはり自分で決めていくのが当たり前なのよ」

 俺と鈴川は歩きながら近くのテラスに出て星空を眺めていた。

 「俺はその辺については経験とかないけれどお前の言うとおり幸せっていうのは自分で掴まなきゃいけないもんな」

 俺の幸せは・・・・・・・・・・・・・・・・・

 「そろそろパーティーがお開きになるわ。行きましょう」

 「おう」

 まあいいや。これで楽しいパーティーもお開きか

 そういえばまだ明日も学校だったな。

 家帰ったら帰ったていろいろやらなきゃな。

 こうして俺の参加したパーティーは何事もなく幕を閉じたのだった。








 俺の朝6時は変わらずやってくる。

 あれからパーティーから帰ってきた時刻は11時前。それから風呂に入ったり課題に手を付けたりとすれば俺の睡眠時間は大幅に削られていく。

 だからいつもより眠気がどっと押し寄せてくるのだ。

 それでもいつも通り眠たい目を擦りながら起きて朝飯と昼飯を作る。

 久しぶりに作る飯だが購買の物が多かったからしばらくは弁当にしていこう。

 二つフライパンを用意し一つには卵とベーコンを。もう一つには豚肉を投入する。

 先に焼きあがるベーコンエッグをさらに移しまた違うものを作る。

 そういえば昨日パーティーに連れて行ってくれたお礼に鈴川には飯をごちそうするか。

 咄嗟に思い付いた考えに俺はもう一人分の弁当箱を用意した。

 あいつはおそらくあまり脂っこいものは食わなそうだから俺は卵を割ってフライパンにだし卵焼きを作り始める。味付けなどいつもと変わらないものにし卵を巻いていく。

 結局弁当が出来たのはそれから45分後の事。

 鈴川の弁当の中身はかなりヘルシーで上手そうな彩をしている。

 俺のは相変わらず育ち盛りなのか肉類や野菜類などバランスよく入っていることが分かる。

 最近購買のパンとかだったからな。

 鈴川にもうまいものを食わせてもらったし。

 俺は最後の一口をぺろりと平らげ弁当を包み学校に行く準備をした。

 よし、忘れ物はない!!

 俺は元気よく玄関を飛び出していった。







 学校はいつも通り、なのはあたりまえだ。その中でやけにテンションが高い男子生徒が一名いる。

 「よっ、蓮司。調子はどうだ?」

 別にウザいとか俺は思わない。どちらかというと俺はこいつの性格は好きだ。

 俺に声をかけて来た男子生徒の名は林俊哉。こいつとは中学からの友達、簡単に言えば、『悪友』である。

 案外校内の情報を網羅しているらしく俊哉曰く自分はデータベースらしい。

 「で、調子ってなんだよ」

 「そのまんまの意味だよ。意外と大変そうじゃねえか」

 俊哉が言いたいのはおそらく俺が現在、校内のほぼ半数の生徒、つまり男子生徒から目をつけられている事。大変なんてもんじゃない。先日は何故だか校内で暴動が起こるからと言って俺が先生に怒られるし なんか女子までにも反感を買われるようになってしまった。

 何したんだよ俺は。

 「まあ、人生はこれからだぞ」

 お前は死んで仙人にでもなったのか。

 俺が軽い突っ込みを入れるが俊哉は「そうだそうだ」といって手を軽く打った。

 「俺の情報なんだけど、鈴川蘭のファンクラブ『鈴蘭の会』の会長が近々お前に勝負を申し込むらしいぞ」

 「はぁ!?なんでまたそんなことになるんだよ」

 「俺もはっきりとした情報はまだないんだが、会長は1年らしい」

 勘弁してくれ俺は普通の日常が欲しいんだ。

 しかしそんなことを愚痴っても今の状況は変わらないのは確かな事。

 ってか近々っていつだよ。

 「まあ、いいや。情報をありがとな」

 俺は俊哉に手を振って教室へと戻った。

 ってかなんで俺が鈴川と話して一緒に出掛けただけでこんなことになるんだよ。

 鈴川と一緒にいたいのなら自分から来ればいいのに。

 「はぁ」

 「溜息ついていると幸せが逃げちゃうよ」

 ため息を吐いた俺の目の前に鈴川がひょいっと顔を出した。

 いきなりだったから俺は椅子から飛びのいてしまった。

 「ビックリしたぁ」

 「ふふ。驚いた瀬原君の顔って可愛いよね」

 こいつ・・・・・・・・サディストだろ。

 こいつの性格はだいたい見抜いているがまさかここまで深く入っているとは思わなかった。

 「最近元気ないわね」

 「そうか?」

 確かにいろいろあったけどそこまでの疲労はないぞ。

 「なんか私の事でも色々と大変みたいだし」

 分かっているのなら自分から止めに入ってください。

 確かにこいつ、こういう俺がこういう関係に巻き込まれると遠くから楽しそうに見ているもんな。止めに入るわけないよな。

 「まあ・・・・・・・・・・・大変なのかどうかわからないけど、もう少し理解してほしいよな。俺がどんな感じでお前といるのか」

 「え////////」

 俺の言葉になぜか鈴川は頬を染めた。

 俺なんかいったっけ?

 「私も・・・・みんなに瀬原君とどんな気持ちでいるのか理解してほしい」

 ちょっとまて。俺とおまえがどんな気持ちでいるのかって・・・・・・・・・・・。

 「お熱いですなー」

 「うえ!!」

 俺たちの空間に声を入れて来たのは先ほど話した俊哉だった。

 「なんだよいきなり」

 「いやー、なんか異様な空気を放っている二人がとても目立っていたからどうなっているのかなーっ て」

 後ろ指差しながら言う俊哉を見て俺はぎょっとした。

 俊哉の後ろでは何人もの男子生徒が戦闘態勢に入っていた。

 間違いなくおれの日常は今日でおしまいだ。

 「まあ、一応俺の方から仲介は入れておこうか?」

 「そうしてくれ」

 もうどうでもよくなったわ。

 「瀬原君」

 「なんだ?」

 「その・・・・・・今日の放課後ちょっと買い物に付き合ってくれない?」

 「別にいいけど」

 俺は了承すると鈴川は「じゃあ、またあとで」といって席へと戻った。

 なんだかなー。

 俺もそうなんだが妙に引っかかるんだよな。

 鈴川と話すときには心臓の鼓動が速くなっていることが。

 いまいち自分でも現状がつかめないのである。

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