第三話 委ねられる判断
二日間、さぼってしまいすいませんww
やる事がたんまりあってどうしても無理でした。
ではどうぞ
あの後、俺は有耶無耶な気持ちのまま学校を出ていった。
別に獅子堂から言われたことを気にかけているわけではない。
鈴川も深刻そうな顔していたし。
まさかよりを戻しに来たの?今更?なぜそんなことを?
とはいえ、考えたところで何の解決にもつながらない。
突然の出来事で頭が回らない。今までそんな空気を漂わせることすらなかった鈴川がそんなことがあったなんて。
そんなことを思っていると、耳に入る音が遠ざかる錯覚に襲われた。
夕暮れの街を歩いていると、人でざわめく音が聞こえるはずなのに実際、耳に入ってくるのは自分の心臓の鼓動だけ。
考えることがいっぱいあるうえ、複雑な思いで逆上せそうな感じだった。
気が付けば、よく俊哉と言っている喫茶店の前で立ち尽くしていた。
ここで考えていてもしょうがないから俺は立ち寄ることにした。
「よぉ、蓮君。今日は俊ちゃんとは一緒じゃないのか?」
俺が店内に入ってくるなり、この喫茶店の店長である桜田さんが俺に声をかけて来た。
おしゃれは喫茶店とは裏腹に、ごっついおじさんが店長だという事は最初に驚いたけれど店長はいい人だ。
閉店時間をとっくに突入しているはずなのに俺のテスト勉強に付き合ってくれたり俺が風邪をひいたときに兄さんの代わりに看病したりと。
先入観だと近所に住む雷親父っぽいイメージがわくけれど気前でやさしい人には間違いない。
中学校から常連さんとかしていた俺たち二人によくサービスをしてくれる人だ。
「いえ、俊哉は今日用事があるみたいで」
「ほう、俊ちゃんにも彼女ができたのかぁ」
用事=彼女という関連性は一体どこから生まれるのかわからない。
実際にいるのは本当だけれど、下手に口にするとあとで厄介なことになる。
でも用事というのはホントらしい。
「はは、そいつはないと思いますよ」
適当な愛想笑いを浮かべて俺は誤魔化した。
「にしても蓮君一人は珍しいパターンだな」
「ちょっと疲れて。ここのコーヒーを飲んでから帰ろうと思っていたんです」
「最近風邪はやっているから手洗いうがいはしっかりやれよ」
店長に念を押されて俺はいつもの席へと行く。
窓際の席だから歩行者や車がやけに視界の隅に入ってくる。
今の時間帯は学生が多い。
他校の生徒間でもこの喫茶店は人気で週に二回くらいのペースでスペシャルデーとかやっているらしい。
俺はそのうち数回しか言ったことがないからよくわからないけれど限定のケーキが出たりとかなりかなり客受けはするらしい。
時間があったら行ってみることにするかな。
「お待たせいたしました」
俺の元にお盆を手に乗せたウェイトレスさんがやってきた。
お盆の上には湯気を立てているコーヒーがあった。
ソーサーと一緒にコーヒーは置かれ、ウェイトレスさんに一礼をする。
コーヒーを一口すすると、いつも違う事に気が付く。
温かさは冬には適している。けれどこの苦さは俺の下にはまだ若すぎる。
いつもはこんなに苦くないはずなのに・・・・・・
おそらく店長の手立てだろう。
ないんかと意味の分からない事をする店長だっていう事は分かっている。
にしてもこれに恩恵は示した方がいいのだろうか?いつものパターンのようだけれど。
とりあえずこれから何をするべきかだな。
鈴川に詳しい事情を聞くっていっても直接本人から聞けるはずがない。
となれば賀川あたりか。
賀川に聞く方が一番楽かもしれないけれど何せあいつの連絡先を知らない俺にとっては最早、教えてくれるおしえてくれないのレベルにすら達していない。
俊哉に聞くのが妥当だけれどあいつの変な嫉妬心を出すようだったら完全に俺が引けを取ることになる。
でも聞くだけ聞いてみるのも無難な選択肢か。
携帯を開き、俺は俊哉宛てに文面を送った。
まだ学校に残っているだろうから家についたときに返信が来ているだろう。
なんてことを考えていてもすぐに返事が来た。
マナーモードに設定していた携帯が震えだす。
「早っ」
ただそう呟いて俺は携帯を開くと予想通りの答えだった。
【件名:ほざけ】
【別にいいけれど下手に手出したらどうなるか分かっているよな?】
件名と文面に何の関連性があるのか俺には全く理解ができない。
ってか中盤はどんなセリフだよ。上手に手出したら何が起こるんだよ。
ものすごく気にかかる・・・・・・・
【件名:そういや】
【今日得た情報があるんだけれど聞きたくない?新鮮だよ】
さかな屋みたいに宣伝するな。もう帰りたいっていう気分な俺にとってはこれはかなり苦痛だ。
けれど俊哉の情報と言えば聞きたいな。
でもどうせ変なランキングな気がするんだけれど・・・・・・
【件名:・・・・・・・・】
【お前にしてはノリが悪いな。ちなみに情報というのは・・・・・・・・・・・】
ここまで行ったのなら理解しろっていうのか。
あいつと行ったらあいつしかないない。
わざわざ推測する意味がない。
携帯を持っている手が自然と震える。
あいつ、獅子堂玲音の情報をおれは知りたがっている。
某ウェブサイトにある〇〇メーカーを使えば俺の今の頭の中はやつの情報でいっぱいだろう。
気づいた時には携帯は勝手にテンキーを押していてディスプレイには送信完了の文字が浮かび上がっていた。
コーヒーを一気に飲み、カップをソーサーに置く。
閉店時間間際なのか客がどんどん減っていく。
窓際に張り付けられた時計を見ると時刻は既に六時の位置にあった。
洗濯物に洗い物とやらなくてはいけない事がたまっているから早めに帰らなければいけない。
「店長、そろそろ帰りますよ」
「おう、そうかそうか。んじゃ、これ持って行けよ」
カウンターにいる店長に声をかけたら、店長は棚からごそごそと何かを探していた。
正直、いつものあれだったらほんと申し訳ない気持ちでいっぱいなんだけれど。
「ほれもってけ」
投げ渡されたのは少し大きめの紙袋。中を見ると、俺の好きなチーズケーキが入っていた。
「いつものやつだから持ってけよ」
いや、去年はこんないいものじゃなかった気がする。
八百屋の店長のように威勢よく俺に渡してくる。
ホントはおしゃれな喫茶店の店長なんだけれど。
「いつもありがとうございます」
「なんのなんの、あの鈴川グループのご令嬢と付き合っている蓮君なんだから」
そんなデマ、誰がどのように流したのかぜひとも教えてもらいたいものだな。
「それじゃあ俺行きますね」
店長の言い草に俺はリアクション1つ見せずに会計を済ませる。
店の外へと出ると周りの建物に取り付けられたイルミネーションがある。
そういえば店の外へと出るといくつもイルミネーションが付け加えていることが分かってよかった。
そういえばバレンタインの季節か。
喫茶店など色々なお店は既にバレンタインフェアなんてことを開催している。
俺にはあまり関係のない事だけれど彼女を持っている俊哉や春富にぞっこんの大野がウハウハになっているだろうしな。
まあ、来週あたりには学校中でそんな騒ぎになっているのかもしれない。
足もそろそろ冷えてきたし飯もなんだか材料がなかったような気がするからコンビニ弁当で済ませるかな。
コンビニは家から逆方向にあるけれど多少の帰りの時間が遅くなってもいいや。
俺は方向を近所の=コンビニへと踵を返した途端だった。
目の前に鈴川と獅子堂がいた。
制服を着ているから学校帰りのところだったのだろう。
でも鈴川の家はこっち方面だと少しばかり遠くなってしまう。
「へー、お前もここに来るんだ」
「いや、予想通りだよ。蘭がコーヒーが美味しい喫茶店であるからそっちの方へ行けば君にあるのかなってね」
なんだよこの自信。むしろ言葉からして元から俺に用のあったような感じだったし。
「店の中を見るとそこまで繁盛していないんだね」
「閉店時間間際だからみんな帰っていくんだよ」
「おいおい、なんで俺だけにそんな怖い目を向けるんだよ」
確かに過剰に意識しすぎなんだと思う。
何かと気に食わない。むかつく。憎悪感が自然と溢れてくる。
間だこいつが何をたくらんでいるのかは知らない。けれど今ここにいる以上、聞き出せない手なんてないはずがない。
このチャンスを逃すわけにはいかない。
「何が目的だ」
自然とすらすらと言えた。
「えらいアバウトに来たね」
「前置きは止せ」
獅子堂は肩をすくめ、さっきとは真剣な表情が俺へと向けられる。
そして、鈴川の肩を掴み、いきなり自分のところへと抱き寄せた。
「こいつとやり直しに来た」
まさについさっきまで考えていたことだ。
丸々あっている。
こいつは・・・・・・・・・やっぱりそういうのが目的だった。
「こいつは・・・・鈴川はそれでいいのか?」
「まだ決定の段階じゃないよ。だって敵がいるんだよ?その敵を放っておけるわけないじゃん」
「その敵っていうのは俺の事か?」
「じゃない方が俺としていい方なんだけれど」
意味は理解できた。しかし趣旨がいまいち理解できない。
でもやり直しに来たというのは間違いない。
「なるほど、お前は元カノとよりを戻すために害である俺をつぶしに来たのか」
鈴川はうつむいたまま。
どうやら俺たちで話が進んでいるけれど大丈夫なようだな。
「悪く言っちゃえばそうなるね。でも、考えはあっているよ。僕は本気でつぶすから」
「上等だ」
夜の街通りで俺と獅子堂の火花は塵上がった。




