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俺はお嬢様が恋をしたことに気付いていない  作者: 海原羅絃
第3章 文化祭とお嬢様
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第五話 恋愛心理学?

 文化祭というものはやはり学生にとっては一生に一度しかない思い出を作れる絶好の場であるのだろうか。前夜祭のダンスで意中の女の子を連れ出しその場で告白。相手がOKの返事が来れば周りから喝采の拍手の嵐。

 取りあえずそんなことをしなくても大抵の学校には面白半分で告白タイムとか作ってそうですけれど。

 ちなみに笹野川学園の文化祭は全三日制・・・って前にも言ったと思うけれどそれぞれの日にちの最後のプログラムに決まったものがある。

 一日目が『前夜祭』で二日目が『中夜祭』三日目が『後夜祭』とそれぞれの日程の最後に組まれている。

 確か・・・・・・前夜祭が体育祭のようなものだ。リレーだったような気がしたけれどまだ誰が出るなんてうちのクラスが決まっているはずがない。

 中夜祭が部活動対抗パフォーマンス。踊りとか一発芸など部活動で練ったものを披露する場。

 確かその後にフォークダンスがあったような気がする。

 そして後夜祭がメインイベントと言われている(らしい)告白タイム。

 聞くところによると去年が確か参加者が100人弱とか言っていたようで一人の人に対して告白してきた人数が20人とかいう。

 それが今の生徒会長らしい。

 今年は・・・・・・あまりこれも想像したくない事だな。

 なんか二学期になっても俺と鈴川がつるんでいるという理由で同学年から、上級生から目の敵にされてしまっている。

 三日目は・・・・結構暇な日になるなと俺はつくづく思うけれどそんな俺の横で三日目の後夜祭に向けてすでに準備を始めている熱心な輩が暑苦しくてしかたなかった。

 「なあ、いい加減にシンプルにいけば?」

 暑苦しいオーラを教室中に放ちながら俊哉はルーズリーフにペンを走らせている。

 何を書いているかというと実は俺も知らない。ただ三日目の後夜祭である告白タイムで今狙っている女の子のハートをゲットするため何とかおってくれそうな文を今書いているそうだ。

 誰に告白するなんか既に俺は知っているけれどここはあえて場をわきまえよう。

 ちなみに内容はまだ見せてもらっていない。

 なかなか言い分が思い浮かばなのかさっきから書いては書いてはルーズリーフをちぎっては投げ、ちぎっては投げの始末。

 とりあえず貴重な紙資源を大事にしようぜ。

 「ああ!!思いつかね!!小野小町やクレオパトラや樋口一葉を落とせる文が思いつかねー!!」

 いや、そこまでスケールでかく悩まなくていいから。あと、そこまで言ったら樋口一葉じゃなくて楊貴妃にしておこうぜ。

 でも、告白でそこまで悩む必要があるのかよ。

 「でもさ、なんでそこまで今回は真剣なんだよ」

 「俺はいつも真剣だ!!」

 いや、そこまでえばらなくていいしいつも真剣でした宣言に俺は少し驚く。

 こいつとは中学からの付き合いだけれど性格も多分俺がよく知っていると思う。

 まず、可愛いものに目がない。

 初っ端からこれを言ってしまえばトドメを刺したも同然のことになる。

 まあ、小学校はどうだったのかよく知らないが真面だったのは中学二年を境に今のような正確になってしまった。

 理由は・・・・どうやら合コンに行ったらしい。

 現実上中学生が合コンなんてまず非常識すぎる。ましてや相手は大人だ。

 どんな軽油を使って合コンに参加することになったのかは俺は知らないがおそらく俊哉に聞けば、「大人の事情」と言い俺は顔面にグーパンを入れているだろう。

 それで可愛いお姉さんがいっぱいいたらしくそれまで女子に興味がなかった俊哉が急に湧き出したようで・・・・・

 ちなみに合コンに行ったと本人から聞いたときは真っ先に担任に報告して生徒指導の対象として入れてやった。

 それに限って今回が本気って・・・・・・

 お前の本気は何処から何処までだがさっぱりわからん。

 本気とか言ってどこかのアニメみたいに上着をぶち破るのか?まさかこいつがそこまですると・・・・・・・あり得るな。

 「だからさっきも言った通りシンプルでいいじゃん」

 「いや、シンプルで言ったら逆に引かれる。ここはあえて」

 「あえて?」

 なんか物凄く嫌な予感しかしないんですけれど。

 「高校を入学しての朝、君の瞳に惚れました。私の心に火をつけてくれたのはあなたです。

 私は・・・・・あんたを運命に人だと悟ったのです。どうか、私と結婚を前提におつきあいを」

 「ぶっ!!」

 思わずふいてしまった。

 ちょ・・・・待てよ。なんだよ。君の瞳に惚れましたって・・・・

 べ、ベル〇イユのバラかよ。

 まずこんなこと言ったら即引かれるぞ。大丈夫か。こいつの恋愛脳。

 もう、笑いたくて笑いたくて仕方がなかった。

 「おい!!人が一生懸命考えた言葉を・・・・・くそ!!」

 「わりぃわりぃ。あんまりにもお前の考えた言葉が意外すぎて笑いそうになっちまった」

 一体いつの時代の人を落とすつもりだよ。

 やべ、また笑いそう。

 「やっぱシンプルで言った方がいいって」

 「そうだよ・・・・・な」

 あれ、やけに納得してくれているじゃん。

 なんかこいつにしては珍しいような気がするんだけれど。

 「まー、また授業中考える。じゃあ、教室に戻るわ」

 ルーズリーフをちゃっちゃと片付け、俊哉は俺たちの教室を後にした。

 ったく、世話のかかる奴だ。

 とりあえず、あいつがいい思いで作れるためにも手助けの一つや二つくらいやらなきゃな。

 気が付けばクラスの人たちがどんどんと入ってくるので俺は自席で一時限目の準備を始めた。







あれから俊哉は考え付いたのだろうか。あいつのことだからおそらく授業そっちのけでルーズリーフに書いていたものを先生に取り上げられていないだろうか。

 まあ、心配しなくとも俊哉の事だからうまくやっているだろう。

 最近賀川ともうまくいっているみたいだし。

 あとは、部活の方かな。

 朝昇降口を見る限りじゃ紙切れ一枚すら入っていなそうな感じだったしこれなら来る件数は少なさそうだな。

 でもさすがの鈴川も部活こっち文化祭あっちを行っていて大丈夫なのだろうか。かなり手間がかかるはずなんだけれど。

 どうせ俺にあとは全部任せるだのとか言いそうだけれどあいつもあいつで何かと引き受けたり実行したりする物には最後までやり遂げるやつだからな。伊達にお嬢様であるわけだし。

 「なー、蓮司。助けてくれよー」

 食堂で一人ぼんやり考えていた俺の前に俊哉がぐったりとした体勢で俺にヘルプを求めて来た。

 おい、さりげなく俺のヒレカツ取ろうとしているぞ。

 「で、何が助けてくれだよ」

 「言葉が思いつかねー」

 「朝も言ったけれどシンプルでいいじゃん。妙なセリフ組み込むとそれこそ終わるぞ。

 賀川も多分・・・・ふぁんふぁ?」

 俺が喋っている途中、俊哉は俺の口を手でふさいだ。

 困り果てている俺に俊哉は耳元に口を寄せ、周囲には聞こえない声で話しかける。

 「分かっている情報なんだけれどさ。今年の文化祭で、後夜祭で誰に告白するっていう奴を調査したら一位が鈴川蘭。推定人数48にん。倍率48倍。二位が現生徒会長の漆原悠乃亜うるしはら・ゆのあの45人。倍率45倍。三位が賀川利華の38にん。倍率38倍だぞ!!」

 どーでもいい情報ありがとうな。そんなん聞いて俺はどうしろっていうんだか。

 「さすがデータベースと言ったところだけれどそのランキングがどうした?」

 「みろ、この三人とも過去例年にない位の倍率なんだぞこれは壮絶な戦いになるに違いない」

 「あのなー、倍率もくそもねえだろ。高校入試じゃねえんだからこんなのだしたって意味ねえだろ?

 だいたい0っていう場合もあるじゃねえか」

 「いやいや、鈴川さんに至っては蓮司が告白すれば倍率も何もないんだからそういう事か」

 ちょ、何言っているの?あなた。

 俺が鈴川に告白するなんてそんなことしたらすで最終戦争アルマゲドンすよ?

 「でもあながちウソじゃないかもよ。鈴川さんなら蓮司を選ぶと思うけど?」

 「あああああー、もうその話は分かったよ。で、その倍率がなんですと?」

 何とかこの話はダメだ。禁句タブーだ!!どうにもこうにもこの話をされるとだめだ。

 俊哉ははいはいと言いながら話を続ける。

 「でだ。こうなれば徹底的に標的にアピールしなきゃいけない」

 「アピール?」

 「現在おれのクラスの男子の数人がすでに彼女がいる。

  けれど、残りすべての男子生徒は鈴川さんか利華を狙っている。それも告白タイムに向け自分の好感度を上げるために毎日毎日話かけている。さて、質問だ。お前がモテモテの女子だったら毎日毎日男子に戯れられたらどうする?」

 いきなり質問かよ。

 けれど、

 「そりゃあ、うんざりしてくるよな。何?こいつらみたいな」

 そういえば鈴川も前にそんなこと言っていたっけな。

 一度に話しかけられるとうざい以外いう事がなくなる。私は聖徳太子になった覚えはないわって。実際には言っていないようだけれど。

 「そこでだ。女の子と唯一話せる時間帯、あるいは手段と言ったら?」

 お前、このまま恋愛心理学者の道でも歩けと言いたくなるくらいこいつは真面目だ。今回は相当真面目だ。俺の眼に狂いはない。

 「夜にメールとか電話?」

 「それだ!!」

 ビシッと親指を俺に突き立ててくる。

 さらに俊哉の声に反応したのか食堂にいた人が驚愕した表情で俺たちを見る。

 頼む。騒がないでくれ。

 ああ、頭が痛い。

 「で、夜にメールとか電話だっけ?」

 「そう、それが女の子の唯一話したいと思っている時間」

 「けれど中には勉強とか部活で忙しい奴もいるんじぇねえのか?」

 確か賀川とかバイトやっていたもんな。今は何処だか知らないけれどプールでバイトしていた時はさすがに俺でもビビッていた。今でもそこでバイトをしていたなんて情報・・・・・・・

 こいつならさすがに知っているか。

 「いやいや、そこは敢えて勉強や部活で疲れた時にお疲れ様などという言葉をかければ間違いなく好感度アップだ!!」

 やっぱりこいつは恋愛心理学に歩むべきだ。あと今からでも遅くはない。精神科に行って来い。他人事だと思って全力でやり過ごしたい。

 「それでその第一歩としてまずは連絡先の入手だ」

 「お前賀川の連絡先持っていなかったのか?」

 こいつであろう男が珍しい失態だな。

 と思ったがどうも違うらしい。

 「いや、既に持っているしメールは既に一日50件以上はこなしている」

 もうお前ら付き合え。俺はその言葉ですべてを一掃させたかった。

 どうにかできねえのか。なんか俺も巻き添い喰らいそうで怖いんですけれど。

 「いや、意中の女の事ならメールの100件や200件は余裕だぜ」

 いや、今50件って言ったよな?

 「ところで蓮司君は鈴川さんと一日どれくらいメールしているんですか?あくまで参考として聞きたいだけだから」

 その改まったいい方だとなんか狙っているな。ってか俺が鈴川の連絡先持っていること知っていてこれを言っているのか?

 気持ち悪い奴。

 「一日メール・・・って言っても10件?くらいかな。朝おはようとか今日の出来事とか話しているだけだけど」

 実際、大したことじゃないけれど。

 「ほー、それは興味深い」

 こいつにとっては大したことらしい。

 いや、興味深いとかそんな目をされても俺は困るだけなんですけれど。

 「じゃあ、証拠としてメールの文面を見せていただきましょうか」

 え・・・ちょっとそれは

 「もらったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 俺は猛獣に携帯を・・・・・・・ぐすっ。










と、あれこれしていれば文化祭まであと一週間と迫った。

一年生は初めての文化祭で毎日忙しい準備に。二年生は去年と同じ手際なのか分からないがスムーズに進んでいるらしく、三年生にとっては最後の文化祭であるため多分ピリピリとした空気の中で準備をしているに違いない。

 そんな中、俺たち一年二組も文化祭の催し物とは違う決め合いに没頭していた。

 「よっしゃ!!お前等、文化祭と言ったら体育祭だ!!」

 学級長、キャラ変わってるぞ。

 春富の気高きテンションに圧倒されない一年二組は現在は前夜祭で行われる体育祭のリレーの選抜メンバーを決めているさなか。

 ちなみに鈴川ちゃんは文化祭実行委員の方で不在。

 まあ、学年別リレーだしまずうちらの学校では1学年7クラスという私立にしては多いような少ないような微妙なクラス数であるがリレーなどするにあたっては出来栄えのよさそうな数である。

 リレーの選抜メンバーは8にん。1人トラック一周とこれも長いのか短いのか分からないが一回体育の授業でこのトラック一周ダッシュの3セットをやった時はそこまでの疲れが出なかった。

 「じゃあ、選抜メンバー決めるわよー。誰が足早いか推薦する奴はいないか!?」

 だめだ。このテンションに追いつけない。春富よ。誰に洗脳されているんだ?鈴川か?鈴川なんだろ!!

 「確か大野って足早かったよな」

 確かにこいつ中学校の頃陸上部だったな。県大会でもそれなりの成績を残していたしリレーにとっては必須のメンバーだな。

 うんうん。このクラスにはなかなかいい人選がいるぞ。

 「推薦では今のところ大野君だけ?じゃあ、私が勝手に50M走のタイム見て決めるからね・・・・・。えっと、男子で一番早いのは・・・・・・え?瀬原君!?」

 「は?おれ?」

 いや、俺も知らない。俺ってこんなに足早かったけ?いやいや、ほんと知らないし。

 自分で運動神経はいい方だよ。言っちゃ悪いけれど。

 「そういえば蓮司って足早かったね」

 え?大野も今更?

 俺も今更ですけれど。

 「えっと・・・・タイムが6.14校内新記録らしい」

 「いやいや、待て待て。俺がそんなタイム出せるわけねえだろ確かに小学校時代は陸上とかやっていたぞ?けれど何年も昔の話だ。そんな能力が今芽生えるはずなんてねえだろ?」

 「じゃあ、瀬原君アンカー決定と・・・・」

 「人の話を聞けよ!?」

 「いいじゃない。別に」

 え?俺まさか決定事項?

 ・・・・・という事で俺は体育祭のリレーの選抜メンバーに選ばれてしまった。

 ちなみに同じアンカーとして、俊哉がそこにいたことも俺は驚いた。

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