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俺はお嬢様が恋をしたことに気付いていない  作者: 海原羅絃
第3章 文化祭とお嬢様
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第四話 試着

 誰にも人生の汚点というものがあると思う。いつどこで起こるかなんてその人次第に決まっている。

 多くの人が人生では一回だけ人生の汚点を築き開けたものがいるかもしれない。

 汚点。それはその人の名誉にとって汚らわしきこと。

 多分トラウマになる人が多くなる・・・・・・はずだ。

 じゃあ、俺の人生の汚点は何なのか?強いて言うのなら今この状況だ。

 そう、まさにこの状況こそ俺の人生の汚点と言ってもいいかもしれないほど醜く、恥ずかしい限りである。

 「それじゃあ、始めるわよ。第一回青春を掴むために己を鍛える会略称『青春乙』の文化祭についてのミーティングを始めます」

 息継ぎひとつせず言えたことに敬意を現したいくらい頑張っていったな。

 一回目か・・・・・・・やっとこの部活も本格的に・・・・

 「って、そんなんじゃねえ!?」

 「どうした?」

 脳内で一人ボケ突っ込みしていた俺は思わず勢い余って口に出てしまった。

 それをみて俊哉が俺に驚きの目を向けてくる。

 いや、痛いのは分かっていますから。

 「瀬原君。初めての活動から思わず嬉し言葉が口に出てしまったんでしょ?」

 んなわけあるか。しかも俺勝手に入部させられてたのかよ。

 この陣を取っていてもそれはそうか。

 立ち話(といっても部屋のすぐ入ったところだけど)をしていても話が入らないようだったので言われるまま部屋を入ればさきほど鈴川が設立宣言をした部活動のミーティングをするという始末に追いやられてしまった。

 そもそも文化祭で何するんだよ。

 青春を掴むってよお。

 でもどうせ鈴川の遊び半分だろうけど。

 「じゃあ、長い間合いはこれでおしまい。これから本題に入っていくわよ」

 木製の長机が二つほど並べられ人数分ある椅子に腰を掛けた俺らは自称会長である鈴川を中央に陣取り、後ろにはホワイトボードがある形になる。

 鈴川の後ろに立っている春富・・・・・・はおそらく書記か何かだろう。そんなことを頭の片隅に置きつつ春富の手が動く仕草を目で追っていく。

 そこには黒く凛々しい字で『文化祭にあたっての活動内容』

 いや、さっき聞いたし。文化祭で何をするか決めるっていう話題を。

 「それでは案がある人は?むしろ質問でいいわよ」

 俺はそれを聞いて真っ先に挙手をした。

 聞きたいことが山ほどありすぎる。

 「はい、瀬原君」

 俺の挙手に対して微笑ましい顔で指名する鈴川。

 「この部活は文化祭にすることがないのでは?第一青春を掴むんだろ?どうやって文化祭で青春を掴むんだよ」

 「ほかに意見がある人はいない?」

 おいこら。思いっきりバックられてしますけれど。

 俺の質問に対してはいかいいえの答えもほしいんですけれどそこを何とか答えてほしい位。

 なんてギャーギャー、わめくのも俺のポリシー・・・もなにもないがここは冷静に冷静に。

 「まず俺の質問に答えてくれ」

 「しょうがないわね・・・・・・文化祭で活動することがないっていう質問ね。

 そうね、具体的に言えばこの部は読んで字の如く、青春を自らの手で掴む会よ。文化祭で青春を掴むことが出来なくてどこで掴むの?」

 「まあ、そうだな」

 なんかいつになく鈴川の目がギラギラとしているんだけど。

 おーい、帰って来てくれー。

 こんなつまらない現実世界から帰還してほしい。

 「でも俺たちがやれる事って言ったら文化祭二日目の部活対抗パフォーマンス位だぞ?」

 「そうなると一刻も早く準備しなきゃ間に合わねえよな」

 あれ、みなさんやる気モードですか?俺だけ省かれた身?

 「瀬原君が言った通り、確かにこの部活は設立してわずか21分と43秒しかたっていないわ。そんな部活にやることなんてあるの?ってなるかもしれないけれどあるのよ。実は」

 「もったいぶらず早く言え」

 「二日目の部活対抗パフォーマンスもよりどころがあるけれど本命は三日目の告白タイムだね」

 告白タイムが活動の本命ね。

 まさか昇降口に意見箱を設置して悩みをご相談するとか仕舞いには活動の路線がそれそうな意見までは行ってくるっていう事じゃないよな・・・・・・

 「その告白タイムに向け、昇降口に意見箱を設置するわ」

 そのまさかだったーーーー!!

 なんか嫌な予感だけ当たるっていうのは俺の天性?

 もー、ここから帰りたい。切実に。

 「告白タイム・・・・・・・・・か」

 ふいに俺の隣に座っている俊哉がポツリとつぶやいた。

 「告白タイムがどうしたんだ?俊哉」

 「え?ああ、何でもない。ただ高校でもそういうのあったんだなーて」

 珍しいな。こいつが大物イベントに、ましてや告白タイムとリア充を目論んでいるこいつにとって目玉イベントなんだけれどなんかテンションが低いんだけれど・・・・・・

 俺はちらりと俊哉の視線を追う。

 ああ、なるほどね。

 こいつにもさすがに加減は知っているか。意中にいる人の目の前で「告白タイムきたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」なんて大声で叫んだら俺でも穴があったら入りたいくらい恥ずかしがると思う。

 「ちなみにどんな意見が来たらまた今度こっちに収集掛けるから都合がいい人は来てね☆」

 来てね☆じゃねえよ。少しは自重をしろ。自重を。

 ってか待てよ。本来はクラスの出し物について話し合うべきだろ?既に話の路線がそれているじゃねえかよ!!

 「じゃあ、今日はこれで解散ね。また学校で会いましょう」

 「また学校でなー。賀川、ちょっと近くのデパート寄っていかねえか?」

 「え、別にいいわよ」

 「大野君。ゲームセンター行かない?」

 「ん。いいよ」

 「おい、大野。サッカーしねえのかよ!!」

 「用事で来たからパスするわ」

 お前らホント自由気ままでいいよな。俺なんてもうへとへとだ。

 携帯ポケットから取出しディスプレイに映しだされた時刻を見る。まだ時間余裕であるじゃん。じゃあ、俺も家に帰って飯の用意でも・・・・・・

 と、部屋を出ていく面々につられてドアに手を当てようとした時、白く細い手が俺の腕をつかんだ。

 「瀬原君、帰っちゃうの?」

 だれだ。誰だこいつ。俺こんなやつ初めて見ましたけれど!?

 鈴川さん。どこ行ったの鈴川さん?

 めっちゃ可愛い顔して俺に甘えてきているんですけど。なにこれ、どんなシチュエーション?

 もう、思考回路が停止寸前。どうにもできない。

 「あー、しょうがねえな。何が目的なんだよ」

 「一足先に私のメイド服姿見せてもらいたくてさ」

 やっぱりいつもの事か。心配することじゃねえけれどさ。

 「でも一回俺ん家でメイド服になったから見る必要なんてねえんじゃねえの?」

 「あれはよくあるものを着ただけよ。でも今回着るのは文化祭できるやつよ」

 なるほど。あのメイド服とは違うメイド服を文化祭で着るという訳なのか。

 メイド服には詳しくはないが何が違うんだ?

 「でもなぜおれなんだ?」

 「そ・・・・それは」

 もじもじしているけれど・・・・それほどの事なのか?

 まあ、コスプレとか恥ずかしいと思うけれど前人前で普通にコスプレしていたよな。何が恥ずかしいんだかさっぱりわからん。

 「瀬原君に・・・・最初に見てもらいたいから」

 へ?

 最初に見てもらいたい?俺がか?

 ちょっとまてこの漫画やアニメみたいな展開になりそうなセリフは。正直俺も現実を受け止められるような状況ではない事は把握している。

 でもよ、真顔だぞ?

 あの鈴川蘭が真顔で聞いてきたんだぞ?これは絶対に何かあると思う。

 とりあえず質問をしてみよう。

 「なんか変なものでも食ったのか?」

 「へ?」

 相変わらず可愛らしい返事だなーって、違う。

 「今回は何が目的なんだ?」

 「べ、別にいいじゃない。ただ単にあなたにメイド服姿の私を見せてあげたいのだから」

 「とりあえずキャラを固定しろ。頭が痛くなる」

 すでに痛いですけれど。

 ここでYESの答えを出さなきゃ帰れそうになさそうだからな。見るだけ見ていくか。

 「いいよ、みていっても」

 「ホント?」

 「嘘ついてどうするんだよ」

 「私を貶める」

 「やっぱり悪質だ!!」

 「悪質なのはブルータスよ」

 「またそのネタ!?」

 ・・・とりあえず俺と鈴川は別の部屋へと移動する。

 その部屋はいくつものクローゼットが立ち並べに並んでいてどこかの宮殿のパーティー前を連想させるほどの広さだった。

 待てよ、ここのクローゼットを開けたらメイド服がババババババーなんて・・・・・・

 案の定、俺の悪い予感は当たっていた。

 「すげーな。違う意味で」

 何を根拠にこんなにメイド服が家にあるんだよ。

 「さて、どれから着ようかしら」

 ご機嫌な鈴川はクローゼットから一着一着どのメイド服を着ようか迷っている。

 「うん、まずこれね」

 そういって試着室へと入り込む。

 えーと、その間俺はここに腰を掛けていろと?

 「しょうがねえか」

 ふーっと息を一つはいて腰を掛ける。

 でもあのメイド服全部着るつもりなんか?そうなれば相当な時間がかかると思うんだが。

 そうなれば帰りは結構遅くなるのか。

 課題にも手を付けていないしこの休みで溜めていた平日の分もパパッと済ませなきゃな。

 そろそろ寝そうになるところでカーテンレールがバッと開かれた。

 仲から出て来たのはメイド服姿をした鈴川。

 秋葉原にいるメイドさんの来ているものとは違ってなんかフリル的なものがついていてスカートの丈も少し短かった。

 学校のスカートより短いせいか、いつも以上に鈴川の足が露になっている。

 健全な俺にとって教育上よくない姿かもしれない。

 多分、外部からくる男子も鈴川目当てで来たらいちころだろうな。

 「どう?」

 「いいんじゃないか?お前なら何でも似合いそうだし」

 「お世辞はいいわよ」

 「お世辞じゃねえって」

 「じゃあ、次はこれを着てみる」

 再びクローゼットから取り出したものを持ってカーテンレールの中へ。物好きなやつだな。

 数分後、鈴川がまたカーテンレールから出て来た。

 「ぶっ!!」

 いや、可笑しくてこの声を出したんじゃない。あまりにも着た衣装が予想外すぎて驚いたけだ。それに鈴川もやけに恥ずかしそうで・・・・・・

 「あんまり、こっち見ないで」

 「ああ、わりぃ」

 それにしても・・・・メイド服といったもののゴスロリなんて。

 文化祭当日はコスプレショーになりそうで怖い。

 「でも・・・・・さすがに文化祭当日はそれ着るの止そうな」

 「なんでよ」

 怒っているのか、頬をぷくっと膨らませながら言う。

 いや、衣装に合わせているだけだろうな。

 いくら興味本位とは流石にこれでは彼女自身殺人兵器だ。絶対表には出しちゃいけないものだな。

 それから、俺は20着ものメイド服やその他ものものを着る鈴川のファッションショーを見届けるのであった。

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