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俺はお嬢様が恋をしたことに気付いていない  作者: 海原羅絃
第3章 文化祭とお嬢様
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第二話 お誘い

とまあ、ごたごたであったLHRは無事終了し担任の長つく話を恭しく聞けばやっとこ自由の身になれるとなればうれしい以外の何物でもない。

 自由の身になればの話だけれど。

 「ったく、直前になったそんなこと言われたった暇なんだよ」

 人気のない教室で俺は自分の席に腰掛け頬杖をついていた。

 一体こんなところで何をしているのかと傍から描写だとそんな風に思われるかもしれないが俺は人を待っている。

 誰かって聞かれてもそんなの一人しかいない。

 例のお嬢様だ。

 夏休みのごたごたがあって以来学校で真面に話すようになったのはつい最近の事。二学期が始まってからは無視無視無視無視の連続。

 俺が変ないざこざに巻き込んだのを機に嫌われてしまったのかと思ったけれど案の定違かった。

 そんなこと聞けばあいつが笑うのは最初から分かっていたことだけど。

 けれどこうして久しぶりに面と向かって話せるようになったのは俺としてもうれしい。けれどその面と向かって話すという行為に対して俺はあのお嬢さんともう一度語り合う必要性がある。

 まず一つ。

 話すときの姿勢があまりにも人の視線をひきつけ俺にまで被害が加わる。

 いや、席はそれほど遠くはない。

 だが休み時間となれば毎度毎度のように俺の席に来る。

 彼女も彼女として他の男子が喋りたいという間合いによって、よりによって俺のところへ参上つかまさってくる。いや、迷惑じゃないけれどさ。

 妙に人の視線を感じるんだよこれが。

 普通に隣の席の人の椅子を使えばいいものの、俺の椅子に、いや、この場合は俺に乗ると言った方が正しい。厳密に言えば俺を椅子にして俺の首回りに腕を回してくるという男子にとって一度は女子にやってもらい事ベスト5には入ることをあいつは平然とやってのける。

 俺も拒否権を行使したい。ものすごく。

 けれど解こうにもあいつの腕力が半端じゃ無すぎるのは経験者である俺が語るのだから間違いないはずだ。

 しかも公衆の面前に耳に息を吹きかけるという行為までもやってしまう大胆なやつだ。

 ちなみに思い出すだけで目の前にある壁を殴りたくなるような言葉を俊哉に言われた。

 「残暑でもお二人のアツアツ関係の温度は変わらないですな」

 うん。あの時は物凄く腹が立つ言葉だった。

 いや、照れているという理由でそんなことを口にしているわけではない。他の男子の反感をただ単に買いたくないだけだ。

 なのに・・・・・・なのに。

 俊哉のあの一言で午後の授業中、俺は今でも食い殺そうととびかかる体制に入る猛獣みたいなクラスメイトの男子たちから痛い視線を浴びる羽目に。

 そして長くなるけれど二つ目。

 喋りかた。

 いや、お嬢様だから~ですのよ。とかはありだ。いや、俺が言っているのは喋り方というよりも言葉の使い方の方がニュアンス的には正しかったか。

 けれどどの道変わらない。

 あいつの喋り方と言ったら・・・・・・・

 考えるだけで背中がぞくっとする。

 いや、正直教育上によくない事ばかり並べてくる。

 最近はそうでもないけれど。

 けれど鈴川の趣味とか何なんだよ。まさか・・・・・・

 「鈴川がそんなわけねえよな」

 「何がそんなわけないのよ」

 だから何にもないって・・・・・・・・

 「え!!いつから仰ったのですか!?」

 つい反射的に跳ね上がってしまった。

 待て待て待て。いつから教室にいたんだよ。

 扉も閉まっていたし開ける音もしなかったし・・・・・

 瞬間移動?

 ひょっとして超能力者、いや、すでに死んでいるかもしれないな。例えば幽霊で音を立てずに人前に現れるっていう・・・・・

 「私の勘が違かったら申し訳ないけれどもしかして瀬原君。勝手に私のこと殺しているでしょ?」

 ぐっ、よ、よくお気づきで。

 とてもじゃないけれどそんなこと言えるはずがない。

 女の勘じゃなくてやっぱり超能力者かよ。

 「終わったのか?文化祭実行委員の方」

 俺はお前がそれがあるから待っていたのだが。

 「正直言って私の様な平役員が出る幕じゃなかったわ」

 さようですか。

 「でも前夜祭の時間とか・・・・・ようは時間割の制作をしていたんだろ?だったら尚更じゃねえかよ」

 「あんな委員長じゃいてもみんなの意見を出されるだけで結局は自分の意見で押し通そうとしている。あれじゃただ隣国に勝つことしか考えていない独裁者そのものだわ」

 言いすぎだろ。それは。

 まあ、鈴川の言っていることも分からないわけじゃないけれどさ。

 「まあ、帰ったら外内にあの時間割のデータを一部改編してもらうから別にいいけれど」

 「何の解決にもなってねえ!!」

 むしろ事態が悪化しそうな勢いなんですけど。

 いや、こいつならやりかねないな。これくらいの事は。

 「さて、こんなところで無駄話していてもせっかく待ってくれていた瀬原君に悪いから帰りましょうか」

 「そうだな」

 鞄を手に取って俺は鈴川と共に教室からでる。

 校舎内には人気がそう感じられない。たぶん文化部の部室棟に人が密集しているだろう。運動部も体育館やグランドなどで各部練習とやっているそうだ。

 そんな中で俺たち二人は階段を下りていく。

 つくづく思うけれどなんか最近鈴川と一緒にいたせいかこいつをお嬢様としての対象から外れてきているような気がするんだけれど。

 入学してちょうど半年。まだまだ俺を敵視しているような人もいれば、鈴川と高嶺の華としてとらえている人も少なからずいる。

 でも俺は最初だけこいつをお嬢様と捉えただけなのかもしれないが。

 完全に悪魔ですよ。

 人んちに勝手に上り込んで、メイド服に着替えたり風呂場に勝手に侵入して来たりリンゴを変な形で食わせようとしたり雷が怖いから一緒に寝てくれなど完璧お嬢様であるこいつからしたらまずあり得ない光景だと俺は作文用紙にそうまとめるぞ。

 ぜひとも書いたらクラス中に読ませてあげたいところだ。

 けれどさっきの話を矛盾するが、改めてこいつを見ればお嬢様だな。と淡々と思ってくるのは何故だろうか。

 華奢な体つきは反則を言っていいほどで肌とかどんな手入れをしているのだろうか。おそらく高級エステシャンによるものだとか。

 これだけのプロポーションがあってよく芸能界からお誘いが来ないものだ。

 だって階段を降りるときにスカートがパタパタしているんだぜ?

 余談だがわが学園の校則ではスカートは膝丈20~25と大雑把な数字で済まされいるがその数字こそが校則によるスカートの膝丈上からの高さ基準である。

 何をもとにそれを計測しているのかはどうでもいいとして、問題なのはその校則によって今鈴川のあれ(・・)が見えそうなのである。

 いや、俺は健全な男子高校生だ。そんなものには・・・・・そんなものには。

 興味があると言っちゃあ興味があるかもしれない。

 少しだけなら。という意欲もそこそこわいてくるがここは学校。いつどこで誰が見ているのか分からない場所。これが見つかれば・・・・・・

 間違いなく理事長である鈴川の祖父に知れ渡り俺の罪は・・・・・・・・・

 いやいや、俺がそんな事するわけないじゃないか。ましてやめくれそうなスカートからパンツを見るくらいだろ?んなもん社会に出ても犯罪にはならねえよ。

 ・・・・・・・

 急に出しゃばって俺は何を言っているんだ。

 言い訳ねえだろ。いいわけないだろ。

 「言いわけねえよ!!」

 「何が?」

 「はっ!?」

 やべっ、思っていたことが思わず口から出ちまった。

 なんかいつもは駆け足でおりている階段を今日は歩いて下りているため長い階段が終わるのも何だか長い気がする。

 こう言うときに限って・・・・・・・

 なんてことを考えていると一階にきた。

 よかった・・・・・・やっと一階か。

 「ところで瀬原君」

 「ひゃい!!」

 げ、今度は変な声出しちまった。

 さすがの鈴川も怪しすぎるんじゃないオーラをこっちに出しているしそろそろ危ない気がする。

 「で、なんだよ」

 「今度の休み、私の家で文化祭についていろいろと意見を出し合う会を開くから瀬原君も来ない?」

 文化祭についていろいろと意見を出し合う会?

 なんか中学生みたいな一面だな。

 しかも鈴川の家でかよ。

 「別にいいけれど・・・・・・誰が来るんだ?」

 まさか二人きりなんて・・・・・

 「利華と林君と大野君と田井中君と斎藤君よ」

 いや、メンツは分かったけれど田井中じゃなくて田中な。あと、斎藤じゃなくて佐藤だ。

 どうでもいい話なんだけれど。

 「でも、ほかのクラスのやつらが話に入って大丈夫なのかよ。催し物のコンテストもあるって言ってたわけだしんなところでネタばらししてもいいんか?」

 「別にいいわ。一年生の内に賞を取っても何の嬉しさも感じないわ。

 とるのなら最後の文化祭だっていう三年の時に取りたいものよ」

 まー、モチベーションの方とか考えればそっちかもしれないが別に一年生の内にとってもいいんじゃないか?

 「じゃあ、今週の土曜日。忘れないでね」

 はいはい。

 ・・・・・・さて、クッキーでも餞別しようかな。

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