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俺はお嬢様が恋をしたことに気付いていない  作者: 海原羅絃
第3章 文化祭とお嬢様
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第一話 文化祭準備

 日本中の高校生が学校で一番楽しい行事は何?と街中で選ばれた高校生500人があるテレビ番組で聞かれたのを俺はたまたま見ていた。

 その中で一番多かったのは文化祭。

 それもそうだ。俺も今のような質問をされたらそういう風に答えるかもしれない。

 文化祭と言えば生徒が自由に行動が制約されない唯一の時間とも言っても過言ではないはずだ。正直中学校の頃の文化祭はそれほど楽しいという感じではなかった。

 楽しいと思ったのは中一の頃、先輩がやっていた一発ギャグくらいだけど。

 自分たちの代になってからはなんかシリアスなものしかなくて受験勉強に追われていた俺にとってあまり面白いものではなかった。

 なんて、そんな話を突然思い出したのは俺の通う学校、笹野川学園の文化祭が近いからである。

 文化祭名は、笹ノ葉祭。私立校でしかも大学付属の学校であるからかなり豪華な文化祭をやると思うけれどそこまで豪華ではないが結構賑やかで他校からもかなりの生徒が俺の通う学校の文化祭を見に来る。

 確か10月の初旬あたりにやるような・・・・・・・・・

 そんなことはいいか。

 というわけで夏休みが明けて二学期から一週間とちょっと経った今、俺のクラス一年二組では現在午後のLHRの真っ最中。

 文化祭の準備だから男子どもがうるさく騒いでいる。別にうるさいという訳ではない。

 このクラスは悪くない。別に問題を起こすようなことをしないしみんな楽しい奴らだ。

 まあ、若干夏休み中にあほな行動をした奴が一名いるわけなんだけど・・・・・・・・

 どうやらあの後、俺と鈴川は病院行で鈴川は三日間、俺は一週間入院という何とも無様なオチとなってしまった。

 それを知ったクラスの仲間もお見舞いに来てくれたけどあまりにも他のクラスの男子の視線が痛く真夏に毛布に潜り込むことになるなんて思いもしなかったな・・・・

 鈴川は頭をに擦り傷ができている程度だったが、俺の場合はガラスの破片が至る所に刺さっていたので違う意味で重傷だったと医者が言っていた。

 まあ、顔とかそこらじゅうにガラスが刺さっていたわけだからな。無理もないな。

 そのおかげで一週間休みを棒に振り、溜まっていた宿題を結局は休み終了二日前にやる羽目になってしまった。ちなみに鈴川は夏休みが始める前に七割程度は終わっていたらしい。

 どんな化け物だよ。あいつは。

 まあ、どうやら留学の話も婚約の話も一時的には保留になった事だし、一件落着といったところかな。

 そんなかんなで休みが明け、二晩徹夜寸前でやった宿題も無事提出でき、休み明けのテストがあることに前日知ることになった俺はその日、俊哉、大野、田中、佐藤の四人と共に勉強会を開くもののテスト当日は物の見事に撃沈してしまった。

 と、休み明けから波乱万丈であったけれど今ではだいぶ落ち着いてきた方である。

 文化祭という行事が頭になかったら。

 現在、俺のクラス一年二組は文化祭でのクラスの催し物を決めている。そんな中、俺は窓越しに見える景色をぼうっと見続けているのであった。

 「じゃあ、何か意見のある人はいますか?」

 文化祭実行委員である鈴川が意見の有無を聞く。

 「お化け屋敷やりたいです」

 一人の男子生徒が意見を出した。

 お化け屋敷かぁ。確かにベターかもしれないけどこの文化祭、確か色々な賞が授与されるとか言ってたっけな。

 この学園、だけがどうかは分からないが全三日で行われる笹ノ葉祭は一日目にクラスパフォーマンスがあり各クラスの催し物が開催される。

 二日目は部活対抗のパフォーマンスだか何だか。三日目が一日中クラスの催し物の方に回る形式である。ちなみに各日にちには前夜祭、中夜祭、後夜祭とあり前夜祭は運動会、いわば体育祭のようなもので中夜祭はのど自慢に一発芸大会、後夜祭はこの文化祭一番目玉であると言われている告白タイムであるらしい。

 中学校の頃もそう言ったものがあったけれど生徒会のほうで却下された記憶がよみがえる。

 まあ、義務教育だったしな。あのころは。

 俺の予想だと俊哉がおそらく・・・・・・・・・

 いや、ここはあえて想像しないでおこうか。

 「ほかはありますか?」

 「俺メイド喫茶やりたいです!!」

 メイド喫茶って・・・・・・・漫画やアニメじゃねえんだから。

 けれど・・・・・やっぱそれくらいしか案はねえもんな。

 「ほかは・・・・・・瀬原君はどう?」

 次は瀬原君か・・・・・瀬原君は一体どんな意見を出すんやら・・・・・

 って!?

 「俺かよ!!」

 「あなた以外誰がいるの?」

 もちろん俺です。

 ここで話を振る理由が俺には理解できないんですけれど。

 夏休みの一件があっては鈴川が入院していると聞きつけたうちの学校の生徒は波のように病院に押し寄せ、他人に迷惑をかけたのは言うまでもない。

 しかも俺と鈴川が同じ病室にいたのを見たうちの学校の生徒はすぐさまその情報を学校中にばらまきやがった。おかげで新学期始まってからのあの鬼の形相の様な顔をでみられるのは勘弁です。

 「何かないの?」

 「いや、何かないのって聞かれても・・・・・」

 何もないんですけれど。

 まあ、ここは適当に答えておこうかな。

 「俺も・・・・メイド喫茶でいいんじゃないかなって思う」

 適当に便乗する。これで納得してくれるだろうかと思ったんだけれど現実はそう甘くはなかった。

 「瀬原君てそんなに私のメイド姿みたいの?どんな趣味しているのかしら。

 あなたの脳みそ一度でいいから見てみたいものだわ」

 誰ですか。あそこにいる毒舌女は。

 別にメイド服を見たいっていう訳じゃないしなんで鈴川が着るのをって限定されているんだよ。

 「まあ、いいわ。ほかはない?」

 クラスからは沈黙が。

 さすがに文化祭と言ったらこれくらいしか思い浮かばないだろう。普通に考えて。

 「じゃあ、多数決を取るわね。一人一回手を・・・」

 鈴川がメモを取ろうとしていたその時、どこからか声が降りかかってきた。

 その場所は一番右列で俺と同じ列の子だった。

 たしかあの子学級委員だった記憶がある。

 えー、確か名前は・・・・・

 「春富瑠奈よ、瀬原君」

 そうそう、春富春富。

 「って、何人の心呼んでるんだよ」

 「で、何かしら。春富さん」

 うわぁ、これは完璧に喧嘩腰ですよ。みなさんどうにかしてくださいよ。この二人が戦争をおっぱじめようとしています。

 っていったところで止められる奴なんて誰ひとりいないけれどな。

 「学校というのは学習する場であって決してメイド喫茶など破廉恥な事をするような場所ではありません。ですからメイド喫茶という案はとりさげ、お化け屋敷だけでやった方がいいと思います」

 流石学級委員と言ったところなのか説得力がなかなかある。

 でも明らかお前がやる気無かっただけのように聞こえたんだけど。

 「でも学生にもたまには息を抜く必要があるのではなくて?」

 「確かにそうですけれど文化祭は互いの中を深め合っていくもの。決して遊びではないんですよ」

 そんなこと散々担任にいわれた記憶がある。なんかお家につくまでが遠足ですよ的な。

 「確かに春富さんの言うとおりかもしれませんね。けれどあくまでこれは文化祭ですよ。先ほどの二人が言った通りお化け屋敷にメイド喫茶以外何をするの?」

 まあ、鈴川の言うとおりそれ以外することは何か考えろ言った方が難しい。

 教卓の周りは今でも戦場と化してもおかしくないくらいのオーラを教室に漂わせていた。

 「では春富さん。あなたはこのクラスで催したいものはあるのですか?」

 いつになく今日は喋るなぁ。と頬杖をつきながら俺は鈴川を見ていると自然と目が合ってしまった。

 いや、別にやましいことなどではないが目が合うのはよくあることだ。

 でも目が合った瞬間不意に逸らされたのは何故?

 しかも頬を真っ赤に染めていますけど大丈夫ですか?

 「わ、私はですね・・・・・・」

 珍しい。学級委員があんなに動揺している。

 まあ、そこでこんな意見。なんてことはさすがに・・・・・・・・・・・

 「私は郷土料理についてみんなで調べてもいいかと」

 「ボツ」

 早っ!!

 いくらなんでも早すぎるけどさ。春富も春富だろ。いくらなんでも高校生の文化祭に郷土料理を調べるなんて中学生がやるようなことはさすがに無理があるだろ。

 「にしても結論が出るのは早すぎだろ」

 「じゃあ、こんなところで話していても埒があかないから瀬原君に決定権を委ねましょうか」

 また瀬原という人物かよ。早く答えて次の題に・・・・・・

 「ってまた俺かよ!!」

 デジャヴか?デジャヴなのか?

 「馬鹿なことしていないで早く答えて頂戴」

 馬鹿ですいませんでしたね。

 ここは二人の意見(鈴川に至っては男子生徒二人の意見を横取りしたようなものだが)を尊重しなければ後がなくなる気がする。

 余談であるが、鈴川蘭、賀川利華、春富瑠奈のこの三人はわが学園では『三大美女』と呼ばれ、一年生限定で秘密裏で行われた通称、かわいい子ランキングの番付によって先ほどの三人がトップスリーに入賞。

 ちなみに一位は鈴川で二位は賀川、三位は春富であるが俺は参加していない。

 と、そのベスト3のうちの二人がいるわけなんだから今この状況を強引に打破すれば鈴川のファンクラブはおろか、一学年、最悪に至っては全校生徒を敵に回す羽目になる。

 それを想像するだけで身震いがする。

 「下らない事を考えていないで早くしてね」

 はやりこの女は超能力者なのか。違うのか?と突っ込みたくなるくらいいろいろと言いたいことがある。

 「瀬原君はやく」

 んー、やはりすでに敵に回していたな。前言撤回だ。

 とりあえず何か言わなきゃこの先がないにも等しい。

 「どっちでもいいんじゃない?」と答えようとしたが、なぜか鈴川の口元が緩んでいるような気がしてそこから紡ぎだされる言葉を俺は脳内で理解したところでなんだかありそうな予感がして怖かった。

 気のせいであってほしい・・・・

 「メイド喫茶でいいんじゃない?」

 いや、これは失言だ。だって、何かしそうな勢いで俺を見てきていたし生活費も持って行かれそうで何かと怖い毎日。

 という訳でメイド喫茶でいいすよね。

 「そんな・・・・・・・・・・・」

 がっくりと膝からうなだれる姿勢を取る春富。あんがいこいつって乗ろうと思うけれど乗れない奴らなんだよと思っている居るに違いない。

 でも最終決定権は結局俺だったんだ。

 「じゃあ、係をこれから決めるわね。料理係にウエーター係。この二つに分かれるくらいだから各自分割していって」

 けれど俺はさすがに調理場だよな。

 「あら、瀬原君は執事よ」

 は?何を言っているんだよ。俺はどっからどう見て料理を作る方に適正だろうが。

 何を考えているのかさっぱりわからない。

 「料理の方は春富さんに任せるとしてウエーターは瀬原君よ」

 「いやだからなんで俺なんだよ」

 「スーツ姿が似合っているから?」

 そこなんで疑問形何なのかさっぱり理解できないんですけれど。

 「でもどうやって他を配分するんだよ」

 「メイド喫茶だから主に女子がメインね。だから男子が料理の方に行ってもらうわ」

 「おい、いくらなんでもうちのクラスの男子を見る限り料理能力を持っているなんて皆無に近い奴ばっかだぞ。そんな奴らに料理させたら一瞬にして料理が炭素になっちまうぞ」

 いや、仮定の話ではなくホントにありがちな話だ。

 「じゃあ、交代制にしてちょくちょくやっていくようにしましょうか」

 ちょくちょくって・・・・・・・・なぁ。

 「さぁ、みんな、張り切っていこー!!」

 声を張り上げたのはもちろん立ち直りが早い学級長の春富だった。

 はぁ、これから忙しくなりそうだ。

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