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俺はお嬢様が恋をしたことに気付いていない  作者: 海原羅絃
第1部 第1章 鈴川蘭というお嬢様
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第二話 お嬢様、守る

 鈴川蘭。彼女はかの有名な鈴川グループの一人娘でありなんと俺が通っている学校、私立笹野川学園の理事長の一人娘である。

 恐ろしながら、彼女は容姿端麗、スポーツ抜群であり校内の彼女のファンはとてつもなく凄い。

 聞いているのは彼女の玉砕人数がそろそろ300人を行くんじゃないかという噂。ちなみにうちの学校は 全校生徒だけで800人近く男子はその半分くらいではないのだろうか。そうと考えれば他校からも彼女を目当てにこの学校にお出入りする奴もいるかもしれない。

 だがこう説明したところで俺みたいな一般人がそう気安く話しかけられるのも無謀で相手にされるわけがない。

 しかし、先ほど話してしまったのだ。願ってもいない当の本人と。

普通だったらあまりの嬉しさにおかしなことをする奴のいるだろう。

 まあ、俺以外の人だったのならばさぞかし嬉しくて屋上から飛び降りたいくらいだろうがまずそんなことはない。

 しかし俺がもっと驚いたのは彼女が屋上から降ってきて俺が受け止める予定が失敗して彼女と共に保健室で寝る羽目に・・・・・・。

 これは完全におれも思ってもいなかった。

 だって空から人が降ってくるんだぞ?

 どこぞのアニメのシチュエーションかと俺は錯覚してしまった。

 だから平凡な日常を求めている俺にとっては完全な非日常だ。

 更に彼女がどんな性格だとかもわかってしまい俺の高校生活一年目はこの暑い時期でボロボロである。

 さて、長い前置きはおき、体に走っていた痛みもだいぶひいたところで俺と鈴川は授業が終わるのを見計らって保健室から出た。

 「・・・・・・・・・」

 それにしてもこうして学校一美女の鈴川と並んで歩くというのは緊張するな。

 今こうしている間でも肩と肩が触れ合いそうな距離だ。

 「私生まれて初めて同年代の男子と並んで歩いたわ」

 突然の言葉に俺は頭の上に?を浮かばせる。同年代の男子と並んで歩いたことないってそれはそれですごいな。さすがに卒業式などそう言った行事では大抵男子と女子は並んで歩くんだったが。

 「まあ、俺も同じような事なんだけど小学校の卒業式以来同年代の女子と歩いたことないぞ」

 「あら奇遇ね」

 口に手を当て小さく笑う鈴川。

 ・・・・・・・今思えばこいつって可愛いんだなって仕草でそう思える。

 突然変なことを思って悪いんだが俺はこいつを遠くからでした見たことがなくこんな間近で見たなんていうととても緊張するし心拍数もかなり上がってくる。

 髪の毛も、あまりにも艶々でワックスでも塗りたくっているんじゃないかっていうくらいの光沢を現している。

 「そうだ!!」

 何かを思い出したかのように突然声を上げ俺の方を向く鈴川。

「うわ!どうした?」

 適当なリアクションを見せつけるが、事実、突然叫ばれたものだから俺は思わず飛び跳ねてしまった。

 「瀬原君、突然なんだけど今週の土曜日空いている?」

 「ん?空いているちゃあ空いているけど。それがどうしたんだ?」

 「今日助けてくれたお礼にいっしょにどっかいこうかなんて」

 俺が・・・・・この鈴川と今週の土日どっかに出かける?

 「おい鈴川。それって・・・・・・いわゆる」

 「そうね。簡単に言えばデートのような物ね」

 ・・・・・・・・・でーと。

 非リア充と悪友から言われ続けていた俺にとってデートとは未知の世界だった。

 もちろん悪友も非リア充の真っただ中。

 けれどそんなことは俺の中では非日常としてあり続けていたがまさかこんなところで・・・・・・・

 「いや?」

 可愛げなまなざしをこちらに向けて質問してくる小悪魔鈴川。

 思ったんだけどもしこれが大勢の前とかだったら完全に俺は悪者扱いだよな。

 戦争が起こるか怒らないかの瀬戸際・・・・・・・

 嫉妬深い男の子って怖いものだな。

 「別にいいんだけど・・・・・・・行き先とか俺が決めていいのか?」

 「行き先はもう決まっているわ」

 「どこ?」

 まあお出かけだからどこに行くかは教えてくれるだろう。

 しかしそう期待はするもんじゃなかった。

 「内緒♪」

 片目ウィンクの黙秘権行使に俺は危うく失神するところだったのは言うまでもない。

 これがモテるわけなのか?鈴川さん。





 鈴川と予定通り(?)、授業の終了を見計らって俺と鈴川は教室に入ってきた。鈴川が入るのと同時に教室の視線が戸をひく音がしたのを一瞬で確認した。

 それと同時に鈴川のもとへと歩み寄ってくクラスメイト。さらに数分後には他クラスからも来る人が増えあっという間に俺のクラスは戦場と化した。

 付け加えると鈴川のもとへと走っていった人は大半が男子生徒。しかも鈴川のファンクラブの会員である。

 にしても授業終了後から僅か数分でこうも他クラスの男子が来れるものだな。

 そのファンクラブ会員はダンプカーの如く、鈴川に寄っていく。

 まあファンクラブと言っても全校のほとんどの男子加入しているけどな。

 俺はたむろいの場から離れ自分の席へと腰を掛けた。

 周りからは「鈴川どうしたの?」「具合でも悪かったんですか?」とこの辺まではよかったのだが途中から「鈴川付き合っている男子はいるんですか?」「今日お家に上がらせてもらってもいいですか?」などもうどうでもいいし入学式からずっと聞いている事ばっかが俺の耳に入ってくる。

 確かに鈴川は可愛い。だがなにもあそこまで本気にならなくてもいいと思う。ましてやもっと自然に話 しかけたりした方が彼女もそれがいいはず。あまり強引に会話を持っていったりは彼女に対して失礼だ。

 と、考えているうちに俺は携帯でお勧めのデートスポットをネットで検索していたのだった。

 「・・・・浮かれすぎるな」

 人生初めてのデート。と言っても自意識過剰すぎるとかえって逆効果になる。まさか・・・・あいつ俺のこと遊んでいないよな?

 不安らしきものが俺の頭の中を揺らいで行った。





 今日最後の授業を何とか乗り切り俺は帰り支度をする。

 「そういえば」

 俺はあることを思い出し鈴川の席に近づく。

 いつも通り何人か男子などがいたが俺それを払いのけた。

 「なあ、鈴川」

 後ろから男子の冷たい視線を感じるがそれはどうだっていい。

 「一応連絡とかあると思うからお前の連絡先教えてくれない?」

 「別にいいわよ」

 さっとメモ帳を取出しそこにメアドや電話番号、さらには住所まで書いた。

「 じゃあ、俺のも」

 俺もさっきと同じ要領でメモ帳にメアドなど連絡先を書いていく。

 よし、これで連絡先は・・・・・・・・

 一つ忘れていた。

 ここは教室。まだ生徒が何人もいる時間帯。俺はその場でこの鈴川とメアドなどを交換してしまった。 もちろん事態は最悪に決まっている。

 「鈴川さん!!俺ともメアド交換して!!」

 「俺も!!」

 「俺も俺も!!」

 次々に迫ってくる男子たち。

 「あー、もう!!」

 じれったくなった俺は鈴川のバッグを持ち鈴川を抱きかかえ教室を一目散に逃げた。

 「鈴川!!このままどこに行きたい!?」

 「そうね・・・・・・宇宙の果てまで連れていっちゃって☆」

 「ロマンチックなこと言うなぁ!!」

 この際学校から出てあとは適当にまけばいい。一応どれだけの人数が・・・・・・・・

 とんでもなかった。

 人数が半端じゃない。

 下手すれば鈴川のファンクラブの半数はいっているんじゃないか?そう考えると背筋がぞくっとした。

 階段を駆け下り俺は鈴川をかけたまま校門を出た。

 「私を抱えたまま走るなんて結構な体力あるのね」

 「結構疲れるんだぞ・・・・・」

 幾らスポーツがあってもさすがにこの距離をこの速さでしかも人を抱えて走るのは正直つらい。

 ダメだ。喋るともっと体力が持って行かれる。

 とりあえず俺は学校から数メートル離れた河原に行きそこに鈴川をおろした。

 「お疲れ様」

 労いの言葉をくれるのはありがたいが俺が走っている間楽そうな顔をしていたのはなぜだ・・・・

 「けど・・・・悪いのは俺だ。場所も考えずに連絡先とか聞いたから」

 「いいわよ。あんまり気にしていないし」

 いや、気にしているはずだ。きっと何回も同じような事が在ったはずだ。

 しかしおれがそう聞くと鈴川は首を横に振った。

 「はっきり言っちゃうとね。私ってこういう身なのか分からないけどあまり人が寄ってこないんだよね。さっきの男子だってきっと私と話すがの目当てだと思うんだけどその面でもきっと連絡先とか欲しかったはずだよ。けど私の立場上聞き出せないかもしれないっていう不安があったのかもしれないわね」

 「という事は俺はただの空気が読めていないっていうだけだったのか?」

 「そう言いたいけれど彼らもあなたおかげかもしれないわね。私も貴重な体験をしてもらったし」

 半分嫌味を言って半分いいことを言うこの女は天然なのか。それとも人を軽々乗せるやつなのか。

 「また、今日みたいな事が在ったら守ってね」

 「!」

 一瞬。

 何かが胸に突き刺さったような感覚。

 心臓の鼓動が速い。走って生きてまだちょっとしか経っていないがそれでもこれは早すぎる。

 何なんだ?これは・・・・・・・

 「じゃあ、わたしはそろそろ。瀬原君。今週の土曜日楽しみにしているわ」

 鈴川はその言葉を最後に帰っていった。

 「にしても・・・・・・・・・」

 今のはなんだったんだ。

 心臓の鼓動が速くなるって・・・・・・まさか。

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