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俺はお嬢様が恋をしたことに気付いていない  作者: 海原羅絃
第2章 夏休みとお嬢様
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第六話 手と手

一時的に雷はおさまったがまだ雨は降っている。窓ガラスに激しく雨粒が当たっているので音が響く。これじゃあ真面に夜も寝ることができない。

とりあえず怖がりな状態でいる鈴川をどうするかが今は先決だ。

自室からオーディオ機器を持ち出し再び和室へと戻る。

そこまでどうにも鈴川は口を開かず俺の服の裾を掴んでいた。

こんなに雷を怖がるってことは小さい頃トラウマになるほどの経験でもあったんか?

和室に入り腰を掛ける。俺の前には鈴川が座りその間には俺が持ち出してきたオーディオ機器。

電源を入れラジオにつなげる。

ここから一番近いラジオ局の周波数を探す。

電波が一致するところがあったのでその局に固定する。

やはりそこでは落雷情報などのニュースがやっている。

『ザザッ、につきましては防波堤にてとても強い強風が吹いているので近隣住民の肩は十分に注意してください。

尚、一部地域では落雷がまだ怒り雨は今夜は大きな雨粒となって降ってくるでしょう』

どこからどう見ても新米レポーターにしか判断できないこのラジオからえられ得た情報は少なかった。

一部地域で落雷って・・・・・・どの辺なのかそこまで考慮してから言ってくれよ。

けれど今夜一晩ずっとこの状態だっていう事なんだな。

落雷が一番の難点だな。

鈴川をどうするかだな・・・・・・・・・・・

先ほどまで青白かった顔はだいぶ良くなってきていたが表情がまだ硬い。

「どうする鈴川。時間ももう遅いわけだし俺は部屋に戻るけれどいいか?」

俺もさすがに眠気がピークに来ている。

このピークを通り越せればいいんだが流石にそこまで行くわけにはならない。

「だったら私も瀬原君の部屋に行く」

俺の部屋に行くって・・・・・・・

困ったもんだな。これじゃあ手の施しようがない。

またいつ雷が堕ちて来るのかわからないのにそんな状況で鈴川を置いたまま自分だけ寝に行くなんて男としてどうかしている。

そうじゃなければ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「どうする?俺と寝るか?」

自分でも気が狂ったようなことを聞いてしまい唖然とする。

「え?ほんと?」

一瞬目の色が変わったのは俺の気のせいでしょうか。ホントにダメなのか?

ドカーンッ

「きゃ!!」

静かだった夜に一瞬光の矢が走る。また雷が堕ちたのだ。

驚いた鈴川は迷わず俺の腕の中に飛び込んできた。それぞれの手で俺の腕を強く握りしめる。その力は強いように感じたいたがそれと上腹にひ弱そうな感じもしてくる。

「ったく、今晩だけだぞ」

ちょっとまて、落ち着け俺。何を言っているんだ。

考えている事とは真逆に口が出てしまう。

何が今晩だけだ。それじゃあただの変態じゃねえか。だれだよこんなやつ育てたのは。

・・・・・・・・・すまん親父。

「あら、瀬原君て案外プレイボーイなのね」

何遠回しに人を変態扱いしているんだよ。

絶対こいつ俺を遊んでいるだろ。

けど雷が怖い事は本当のようだけれど。

でも困ったことが1つ。

布団が一式しかない。

これ一個で二人で寝るなんて幼稚園児でもあるまい。俺は健全な男子高校生だ。こんなところで花の女子高生と一緒に寝ることなんてできると思うのかよ。

と言って押入れを開けても何にもない。そう、この部屋にはこの布団しかない。二階から持って来れば楽なんだけれどベッドと布団がなんか知らないけれど固定されているため外すのは一苦労。枕だけなら何とか問題ないんだが。

でもここで男子高校生と女子高生が寝るなんて・・・・・・しかも有名グループのご令嬢だこんなことが仮に学校でばれたとしたら・・・・・・・・・・

最終的には鈴川の祖父である理事長に公開処刑の通知が来るだろう。

そう考えていればそこに入らないていうのも違う意味で遠慮してしまう。

しかし鈴川は一緒の布団で寝る気のようだ。

仕方なく俺は布団に入る。

何気小さいその布団は鈴川との距離がとても近く体が密接するくらい。いや、正確には既にくっついているくらいかなりの狭さである。

狭い。息苦しい。やばい。

鈴川てこんないい香りしていたっけ?

なんか甘酸っぱい香りが俺の鼻腔をくすぐる。いや、これは明らか犯罪だろ。

この匂いは犯罪だろう。

しかも初めて共に夜を過ごす人がかの有名な家のご令嬢で学校ではモテモテの存在。一つのベッドで夜を過ごすなんて本当にいいのだろうか。

そんなことを考えているとまた雷が落ちて来た。鈴川は頭を沈め光が目に入ってこないような仕草をした。強がりでいるっていうのは俺の単なる先入観だったな。

「まあ、停電程度だったからいいだろ?近くに木とかあまりないから火事にはならないだろうけれど」

木がないから火事にはならないというのは断言できることではない。

再び光が走る。

今度のはかなり音も大きく頭が痛くなるくらいこの町一帯をとどろかせた。

さすがの俺も今のはビビった。これだけの音量の雷が落ちて来たのは初めてだから。

今度の鈴川はかなり来ていた。両手をしっかりと俺の腕を握り締めていた。ググッと握られた鈴川の手はひんやりとしていた。

触れれば壊れてしまうぐらい可愛らしい手。人形じゃないかと間違えるほどだった。

これだけ俺は抵抗しなかった。だって腕だけ握りしめられているから。

けれどここから鈴川の行動は徐々にエスカレートしていった。

甘く見ていた俺も迂闊だった。だんだんと腕を握り締めていた手が俺の背中へと回っていき抱きしめる形になる。そして真っ直ぐに伸ばしていた足が俺の脚に絡まって来て動くにも動けない状態になってしまった。

寝息を立てているのでどうせ寝相だろう。

だけれど寝相でここまでする奴見たことないぞ。

結局俺はこの体制のまま朝を迎える羽目になったのだ。









朝起きても昨日の夜の体勢だった。ここからどう動こうとしても鈴川の手や足からは逃れられない。ってかこれは一種の拷問かよ。拘束状態って・・・・・・・・・

窓の外から出ている光を見れば、今日の天気は昨日の晩の天気がウソだったように思えるほど晴天だった。

今日はこんなにいい天気だからどっか遊び行くかな。

そのまえに・・・・・・・・・・

「おい、鈴川起きろ」

速くこの体制をどうにかしてほしい。

俺は何度も鈴川をゆすって起こしてみるがなかなか起きる素振りが見られない。

強行策。と言ってもそんな強情なことをしてもこいつが嫌がるだけ。自然に自然に。

動かしても起きないのならもう少し声のボリュームを上げてみよう。

俺は鈴川の顔に近づけ声をかけようとする。

荒い息が鈴川にかからないように注意していく。

これだけ近くにまで来るとなんとなく鈴川が可愛いという事が分かってくる。まあ寝顔だからな。そりゃあ誰でも可愛いと思っているだろう。

その瞬間。

鈴川はタイミングよく目を開けた。

俺はほんの寸前のところで動きを止め硬直した。時間が止まったように感じ今自分が何をしようとしていたのか恥ずかしいように脳内をリピートしていく。

「おはよう瀬原君。朝から大胆ね」

朝っぱらから可愛く言ってんじゃねえよ!!少しは驚けよ照れろよ!!

しかも俺は今の自分の体勢を改めて黙視する。完全に馬乗り状態で一歩間違えれば犯罪になりかねない。

大胆な理由は分かりましたけどそのつもりはこれっぽちもないです。

「早く起きろ、お前の腕と足で俺もあまり身動きが取れない」

「この体勢でいいじゃない」

よくねーよ。お前がどいてくれなきゃ朝飯も作れねえじゃん。

こうなったら自力で行くか。

「よいしょ」

う・・・・・・・重力に逆らっていると言った方がいいのか鈴川はナマケモノ状態になっている。

「今日天気いいからどこかに出かけようと思っていたけどやめておくか。この状態じゃあ無理だろうし」

かけたつもりなんだがなんか言葉に出している自分が罪悪感に満ちているように感じて憎たらしいだけなきがする。

鈴川は急に眼の色を変えたように俺から離れる。

分かりやすいな。

物でつられると言った方がいいのか。悪い言い方になるがこいついいことになりそうなことになると真っ先に食いつくんだな。

「じゃあ、飯の用意しておくから着替えてこい」

「はーい」

相変わらずマイペースなお嬢様だとおれは頭を抱えたまま部屋を出て行った。

和室から出た俺は洗面所へと行き、顔を洗う。寝汗を少しだけかいたのでシャワーを浴びたい気分だが、どうせこれから行くところだとその必要はないだろうと思い洗顔だけで済ませる。

リビングに行き朝飯の用意をする。

昨日の騒動もあってまだ眠気が多少あり頭がまだ完全に回らない。

冷蔵庫に何があったのかすら思い出せないので確認する。

「・・・・・・・今日もこれだけかよ」

卵とその他ものものだけを見つめ俺はため息を吐く。

今日はハムエッグとか野菜かな。

鈴川が来るまで粗方やっておくか。

フライパンを取出し油を敷く、そこにハムと生卵を二つ割、バランスよくフライパンに乗せていくと形のいい目玉が二つで来た。

我ながら今日は絶好調だ。

その間にキャベツやキュウリ、トマトといった野菜類を盛り付けていく。これで簡単な野菜の盛り合わせができる。そこにイタリアンドレッシングをかけて出来上がりその間に先ほど焼いていたハムエッグが程よい感じで出来上がる。

更にオレンジジュースをコップに入れテーブルへと持っていく。

「あいつ遅いな」

まさか着替えている途中で二度寝なんて・・・・・・・な訳。

念のために確かめ行けば着替えを済ませていたが布団に座ったまま携帯を眺めていた。

「飯で来たぞ」

俺が声をかけると鈴川は猫に気付かれたネズミのようにビクッと体を跳ね上がらせる。

おいおいどうしたんだよ。

「どうしたんだよ。飯で来たから早く来いよ」

「ご、ごめん。すぐ行くね」

携帯を仕舞い、鈴川は立ち上がって俺の横を通り過ぎていく。

なんか暗い表情だな・・・・・・・・・・・

まさか今朝の俺のあれか・・・・

しまったという感じで俺は顔を隠した。恥ずかしい・・・・・・・・

鈴川はリビングに入り食事に手を付けようとしている。

「顔は洗ったのか?」

「うん」

端的な返事をして鈴川は合掌してから食に手を付ける。

今日もさすがに貧相ではあるがまあ、朝食のベースと思ってくれればいいんだけど。

思ってくれるわけにはいかないよな。

鈴川がどんな表情でいるのか窺うと何気普通に食べていた。

「そうだ、鈴川。今日プールに行かないか?」

突然の質問に鈴川は驚く。

「なんで急に・・・・・・」

「どうせ水着とか持ってきてんだろ?だったらいこーぜ」

喧嘩した父親の事を一定期間の間だけでも忘れたい彼女にとって遊びはほんの少しの時間。プールに行くのも彼女は望んでいるはずだ。

行くだろ?という顔をして俺は鈴川を見る。

「分かったわ・・・・」

何とか成立だな。

今日も平日だしいたとしてもたまたま仕事休みの父さんと一緒に来た親子にこの夏季休暇を利用してきた高校生や中学生だけだろう。それなら問題ないよな。

まあ、知り合いがいくらいるのかは除いてだが。

「じゃあ、飯とか食ったら準備とかしておいて、俺その間にやることやっておくから」

せめてこいつにとって楽しい時間に過ごせるよう俺は精一杯の努力を尽くすつもりだ。

しかし、そのプールにて事件が起きることは誰もが知るはずがなかった。

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