27話
森の中を駆ける。
先ほどヤエトと別れた場所まで戻ったがそこにはもう誰もいなかった。
付近を探索してみるとオーガの死体を一つ見つけた。おそらくこれはアキラが戦っていた奴だと思う。
他にも血の跡と訓練服の切れ端、森の動物が運ぶ人間のにしては太すぎる腕も見つけた。
幸いなことにヤエトたちらしき影は見えない。
どうやら無事に逃げることができたようだ。
しかし森の外に出ていない以上、まだ安全とはいえない。
ヤエトたちが考えていることはわかる。
もし不用意に森の外に出ればアレも森の外へと出てきてしまう可能性がある。
そして近隣の村や町にアレがたどり着けばどれほどの被害が出るか考えたくもない。
だからこそ慎重に、アレを森の外に出さないように気をつけながら逃げているのだと思う。
つまりまだみんなはアレと戦っているのだ。
私はあの学科長を名乗った女から渡された荷物を見る。
形状はボウガンから弓をなくしたようなものだ。しかし巻き上げ機のようなものは見つからない。あるのは何か丸いものをはめ込めるようにできた溝だけだ。
空気を打ち出す魔法武器のように筒状になっているのでここから何かを打ち出すことはわかるのだけれどもそれ以上のことは私にはわからない。
ヤエトならば魔法陣を調べたりしてもっと詳しくわかるのだろうけれども。
学科長からの伝言のこともある。はやく合流したい。
しかし今みんながどこにいるかわからない。一応人間よりも大きな生き物が通ったらしき跡を追いかけているが、あっちへ行ったりこっちへ行ったりしていてはっきりしない。
危険を考えるとあまり使いたくないのだけれどもしかたがない。
私は指を唇に当て、息を吐く。
すると鳥の声にもよく似た音が森の中を響く。
これは狩人が森の中で連絡をとるときに使う指笛を用いた符丁の一つだ。
魔法科には私の他にも狩人出身のトーラがいる。
お互いの使う符丁は少し違うものではあったけれども、二人で相談していくつかの符丁を決めていた。
しばらくすると返事の指笛が返ってきた。
思ったよりも遠くまで逃げていて驚いた。
でもこれで居場所がわかった。
問題は今のやり取りでアレにみんなの居場所がばれた可能性があることだ。
そのせいでみんなを余計な危険にさらしてしまた可能性はある。
だからこそ、私は少しでも急ぐべく、足を速めた。




