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25話

私が一人報告に訪れてから随分と時間が経った。


森の外にいた兵士に中で起こったことを報告すると、その兵士はすぐに教官と責任者に報告した。


近くの基地まで早馬がとばされ、アレを倒すためにの戦力を集めることに決まった。


その増援を待つ間、誰も戻ってこない。


アンナも、アンナを連れ戻しに行ったリリエルも。


アキラは無事だろうか?


ヤエトはまだ持ちこたえているのだろうか?


たぶん無理だ。


アレは私たちにどうにかできるものではない。


幼い頃から森に入り狩人として働いていた私にはわかる。


私たちがするべきなのはアレに対抗することではなく、アレの存在を他の人たちに教えることだ。


しっかりとした装備と十分な訓練をつんだ集団の力を用いらなければアレは倒せない。


でも、とも思う。


私がしたことは他の仲間を見捨てたことに等しい。


アンナはすぐに抱きついてくるのが少し困るけどあの笑顔が好きだ。


アキラの明るさはいつもみんなを楽しくしてくれる。


リリエルは私の知らないことをたくさん知っていていつも驚かされる。


ヤエトはいつも私が聞きたいことに応えてくれる。


そんなみんなを見捨てて私はここにいる。


まだみんな生きているだろうか?


それとも死んでしまっているのだろうか?


わからない。だけどこのままここで待っているだけでいいのだろうか?



「ああ、こんなところにいた」


「…なんでしょうか?」



私が悩んでいる中、声をかけてきたのは少し風体のおかしな女だった。


兵士の駐屯地であるにもかかわらず着ているのは軍服でも鎧でもなく白衣。


髪はぼさぼさでろくに手入れがされている様子もなく、目元には濃い隈ができていてこちらに向かってくる足取りもふらふらと危なっかしい。



「私はラーサ・フォーゲン、あんたの所属する魔法科の学科長さ」



驚いた。年のほうはおそらく教官と同じくらいだろう。


その若さで第三訓練校の学科を一つまとめるだけの地位を得られるのは並大抵の能力では無理だろう。


たとえそれが僅か十人しか生徒がいない新興の学科であってもそれは変わらない。



「学科長としてリサ訓練生に命じる。すぐに森の中に向かってこいつをヤエト訓練生に届けろ」




そう言って渡されたのはアンナが使っていた風の固まりを打ち出す魔法武器によく似た物だった。


ただそれよりも太く、持ちやすいように取っ手がついている。


なぜこの人はこれをヤエトに渡そうとしているのかわからない。


そもそもまだ生きているかどうかさえわからないのに。



「すでにB班にも現場に行かせてある。

まだ試作品と言うのさえ恥ずかしいような代物だがね。

それがあれば報告にあったオーガを倒すことができるはずさ」


「これにそれだけの力があるのですか?」



アレを直接みた私にはとてもではないが信じられない。


しかしこの人は当たり前のように肯定する。



「ヤエト訓練生が私の予想通りの男なら可能だね。

それと伝言を一つ頼むよ。

マーク・フォーゲンの遺産をはめ込み『集束』を用いて放て。


使えるのは一度きり、必ず成功させろってね」


「…わかった」



この人の話を信じていいのかわからない。


ここにいていいのか迷っていた私はそれに従うことにした。


再び森の奥に向かいながら私は思う。


きっと自分がしようとしていることは馬鹿なことで、他の人ならとめるかもしれない。


それでもきっと私は後悔しないだろう。




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