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23話

今の俺が繰り出せる中で間違いなく最強の一撃は敵の腕を半ばまで切り裂いて止められた。


もう片方の腕による攻撃をとっさに剣から手を離し


飛び退いて避ける。


だがそれでも一歩遅く爪が耐刃性の訓練服が引き裂かれる。


幸い体には届かなかったが訓練服の前面が引き裂かれた。


耐刃性の高い訓練服をたやすく引き裂いた膂力は脅威だ。


まともに受ければ俺程度ではあっさりと挽き肉にされてしまう。


だからといってよけることも簡単ではない。


常に相手の動きに反応できるように集中してもどこまでかわせるか。


相手に視線を向けたまま手持ちの道具を確認する。


まずナイフが一本、火の魔法陣、水の魔法陣、光の魔法陣が一つずつ。


これらは全て支給品でそれなりの品物だ。


しかしこんなナイフではオーガの皮膚は切れないし、魔法陣はそもそも戦いに使うことを前提としたものではない。


これは俺が自分で持ち込んだ物にもいえることで火の魔法陣が三つに水の魔法陣が三つ、光の魔法陣が四つが残っている。


しかしその内六つは先ほど引き裂かれた訓練服の胸ポケットの中だ。


後は今現在敵の腕に刺さったままの剣と俺の全力でも発動させれたことのない御守りだけだ。


これだけの武器で目の前の敵を相手にしなくてはならない。


一番頼りになるのはやはり剣だ。


俺の全力の魔力を受けて熱魔法を発動した剣は未だに冷めることなくオーガの肉を焼いている。


苦悶の声を上げながら抜こうとしているが、強靭すぎる筋肉が痛みで収斂しているうえ、焼かれた肉が張り付いてなかなか抜けないようだ。


もっともこのままでは俺にも使えない。


こうして剣を抜こうとしている分だけ時間が稼げることは助かるが、逃げれるだけの余裕があるようには思えない。


その想像は正しかったようで、さほど時間がたつことなく剣は抜けた。


いや、抜けたというのは正確ではないかもしれない。


何故なら闇雲に剣を動かしている内によりいっそう腕に食い込んでいったらしく抜けると同時に腕が体から離れ地面に落ちたからだ。


残念なことに血はあまり出なかった。失血によるダメージは期待できそうもない。


剣を投げ捨てたオーガが怒りの声をあげながら突進してくる。


だがこちらとしても戦い方を組み立てるだけの時間は十分にもらった。


勝てないまでもそう簡単にやられるつもりはない。


まずは光の魔法陣をオーガの顔面に向けて放りつつ移動する。


そして待っている間に停滞させておいた燃焼四回分の魔力の内、二回分の魔力を撃ち出す。


本来俺の魔力であれば自然に漏れる分だけで発動させられる程度の魔法陣だ。


そこにそれだけの魔力を送り込めば一瞬で使いつぶしてしまうだけの閃光が生まれる。


その閃光を目の前で炸裂されたオーガは目を焼かれ、せっかくの豪腕も俺の遙か手前で振るわれ届かない。


さらに残り二回分の魔力をオーガの足下にある訓練服に撃ち出す。


距離があるため空中で拡散しつつも魔力は無事に届き、胸ポケットにある魔法陣から水が、火が、光が放たれる。


どれもダメージを与えられるようなものではないが、視界を奪われた上での足下からの攻撃にたたらを踏む。


その間に投げ捨てられたら剣を回収した。


これで準備は整った。


ここまでの魔力の連続燃焼、しかも魔力射出という高等技能まで使ったためいい加減俺も限界近い。


視界を焼かれ闇雲に残った右腕を振り回すオーガを視界にうつしつつ、深呼吸をし、魔力を練り上げる。


練り上げる魔力はもちろん俺に出せる全力の七回分。


それだけの魔力を停滞させ、左手にはナイフを持つ。


むろんこんな物では傷一つつけられない。


そんなことは承知の上でナイフをオーガに向けて放り投げる。


高く、高く、できるだけ大きな弧を描くように。


ナイフが落下を始めるのにあわせて姿勢を低くする。


両手で柄を握り、最後の魔力を練り始める。


これをはずせば後はない。




落下したナイフはオーガの腕によってはじかれ、俺の剣はオーガの足を深く切り裂いた。


そして



先を失った片腕が俺の胸を強く打ち据えた。



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