実技Ⅱ。
つーことで、バトル。
うあぁ描写の練習しなきゃ!
「千歳、覚悟っ」
「あおちゃんこそ」
本日午後最後の授業は、実技Ⅱ。内容はよーするに組み手。実技Ⅰだと獲物はなしなんだけど、実技Ⅱは殺傷の低いものだけ認められる。
あたしは、獲物はあってもなくてもいい人。千歳は短刀とナイフで長さを変えて二刀。
なんで、今日のあたしは素手、千歳は警棒っぽいのを片手ずつ構えてる。
「3組どーじ、か」
「飛び道具の心配もなさそうだね」
「あぁ、久米りんだけみたい。安心だね」
飛び道具、何が怖いってこれが一番。広い闘技場って言っても、複数組が同時に使うから、他の人が放ったショック弾とかが流れてくるんだもん。下手な人が横にいると、そっちにも意識を割かないといけない。
不意打ち、何度喰らったことか!
と、そろそろ始めかな。
「おらおまえら準備出来たなよし始めんぞォおら始めェ」
いつもどうり、てきとーな倉敷氏の掛け声で、開始!
「……けっこぉとばしてるじゃん、千歳」
くすくす。
千歳が、たぶん笑った、んだと思う。
「……もー見えなくなってきた」
くすくす。
千歳の輪郭が“にじむ”。そこら辺に居るのは判るし、なんとなくは見える。
けどもうはっきりはわからないや。声も聴こえて来ないしー。
「どーしよっかなー。“蛍燎原”は効かないしー」
新技はとっときたいし。
右手を突き出す。
取り敢えず、
“加速”
口の中で呟いて、イメージ。
からだ中を駆け巡る、漠然とした何かを、
赤く、
熱く、
速く、
赤熱させて。
加速させて。
……大気に滲んだ、千歳らしき輪郭が、曖昧模糊として、でも動いたように見えた。
させない、よっ。
「先制、こーげきっ」
ぶぉおおぁあぁ!
突き出した右手付近の、空気を加速させて、疑似空気砲。空気が赤く色付いちゃうのはご愛嬌。
B級映画の特撮みたいで、恥ずかしい。
千歳が大きく避ける。
あたしは、強化した脚力で一気に距離を詰める。
やっぱ打ち合い、だっ!
体を少し赤く発光させつつ、遠慮なく連打!
「とぅ、はっ、た! はっ! ……っち!」
ぶぉん。
振り抜かれた警棒もどきをかわして、少し間合いを取り。
「上げてく、よっ」
“加熱”
打撃に熱を付加してみたり!
「はあっ!」
ストレート、フェイク、フェイク、
もらった!
踏み込む。
そして、右手を撃ち抜く。
ぼふっ。
布団叩いたみたいな緩い音だけど、これは入った!
千歳の滲み具合が、収束していく。
崩せた。
……と、思ったけど、
「やば! そーきたかっ」
右手が抜けない。
「……不覚っ」
……って言ってみたかったんだ。なーんて。
「……ぐぁっ、だぅ、……痛ぅ」
警棒もどきが振られて。脇腹に二発もらった。
……で、も。
にやりと、笑う。