通路。
「ふあーっ、おいしかった!」
三時のスイーツに満足して、あたしたちは校舎に歩いて戻る。
そりゃ駆動通路に乗っちゃうと楽だけどさ。
甘いもの食べたら歩かなきゃ!
歩いてく通路脇の壁には、ちらほらと記念祭関連の告知が見える。
「あー、記念祭までもう1ヶ月かぁ」
「そーだよ、あおちゃんまさか忘れてた?」
「や、流石に覚えてるけどね。忙しくなるなーって」
「年に一回だけだもの。でもあおちゃん、いつもはもっと盛り上がるのに、どーしたの?」
ちょっと心配そうに覗き込んでくる千歳。
……ぬぬ。
「てや」
「ふにゃっ!」
不意打ちで抱きついてみた。
千歳の柔らかい髪に頬摺りする。
うりゃうりゃ。
身長差があるから、高さがちょうどいーんだ。
「ふわわっ。……急に何、あおちゃん?」
「千歳がかわいーから、くっついただーけ」
「……むぅ」
うりうり、ってやりながら、歩く。
「なんかねー、記念祭のちょっと前にー、来るってさー、言ってたの思い出した」
「……何が?」
ぐみゅ、って千歳の上につぶれてみる。
「何ってか、師匠が」
「えっ、ハルさん来るの?」
「そーだよぅ……、忘れてたー」
「へー、ハルさん会うの久しぶりだぁ。いつもあおちゃん連れてすぐ行っちゃうんだもの」
千歳は楽しそう。
「……甘い、千歳。人混み嫌いの師匠が、記念祭の時期にわざわざ来るってことは、厄介事の気配がする! すごいする!」
てか厄介事以外あり得ないって気がしてきた。あぁぁ、絶対そーだ。間違いない!
ぐっ、と拳を握る。
で、あたしの結論。
「逃げなくては! 切実にっ!」
あたしは面倒がってるんじゃない!
師匠のトラブルは難易度が高すぎるんだもん!
決意新たなあたしから抜け出して、千歳がにっこり笑って言った。
「ハルさんに聴かれてるよ」
……はっ!
多分今、後ろ振り返った速度で世界記録を出した。
「……ぬ、いない。しかし油断大敵。……そこかっ!」
すぱっ、とまた振り返る。
でも、そこにいるのは笑顔な千歳だけで。
「……く、どこだ。何故隠れている。……隠れ、て、る?」
……あれ?
なんで師匠が隠れてるの?
普通ならあたしが気付く前に、30メートル紐無しバンジーとか決めてくるのに。
違和感、辺りを見回す。人気のない通路。目の前には千歳。
「……あ」
千歳がすごい楽しそうな笑顔なんだけどっ。
「……ちーとーせえぇぇえぇ、騙したなぁ!」
「あははっ、だってあおちゃん、すごいおもしろいんだもにゃああぁぁあぁっ!?」
「お仕置きだっ! うりゃうりゃうりゃっ!」
「ふみゃぅ。ぅにゃっ! にゃうっ! むぅ、仕返しっ」
「うりゃうりゃ……ひゃぅ! ぬ、ちょやめっ、ちと、きゃーーっ!」
もまれた(泣き)。
「てあー」
「ふゃーっ! ちとせ、そんなとこはっ、にゅあうっ!」
「…………何じゃれてんの」
「はっ」
「あぅ」
ここ外じゃん!
部屋にいるときみたいなノリでけんかしちゃったっ!
「……お恥ずかしいところをお見せしまして」
止めて下さった夕護くん様々に、2人そろってお辞儀。
「ふたりとも、見つけたのが俺で良かったね。けど男に見せるものじゃないよ、ちょっと刺激的過ぎるかな」
「はーい……」
「反省する」
「うん。気を付けること」
そう言って立ち去る夕護くん。
我らが頼れる大賢者、夕護くんに怒られてしまった……。次の授業、大人しく受けよう。
……あ、実技Ⅱじゃん、次。
訂正、千歳と組み手だ!やらいでかっ!
Q.何をもまれたのか。
①胸(壁じゃないってばby蒼たん)
②お尻
③ほっぺた
A.④ふくらはぎ
……ぇろてぃっくですよね? 黒ニーハイ×まっさーじ。
ああっ、冷たい目で見ないで! 帰らないで!