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概念魔法。  作者: 閑話休題
第一幕
11/11

おはよう。

「……ふあぁ」


ぼーっとした頭のまま、ぺたぺたと洗面所まで歩く。


じゃぼーっ、て水道の水をいつもよりぜいたくに出しちゃうのだ。


ぱしゃぱしゃ。


「ぷはぁっ」


覚醒っ。


勅使河原蒼弐等訓練生、目が覚めましたっ!


備え付けの鏡に向かって、ぴしっと敬礼。

鏡の向こうでは、まるであたしみたいな顔した女の子が敬礼を返してる。

あたしが笑うと、その子も笑った。



体調がいいのだー。

体が軽いのだのだー。


「ぜっこーちょー、ってやつですな」


足取りも軽く、ベッドルームに戻る。


「うーむ、やはりいつ見ても最高にかわいいですな、千歳の寝顔は」


ふむふむ、とあごをさすって何度もうなずいてみたりして。



いつもなら千歳は、あたしが起きだした気配で目を覚ますんだけど、今日はちょっとおねぼうさんみたいだ。


まあしかたないね!

昨日の夜はちょっとアツかったからね! お疲れだよね!

おふろではのぼせちゃったんだし、うん、しかたないしかたない!

千歳の寝顔がちょっと赤いのもそのせいかな!!


あはっ。



それはそれとして。

壁掛けのアナログ時計は、7時の5分前を示している。

いそがなくては。あさごはんに遅れちゃう。

ちとせー、おきろー。


ゆさゆさ。


ほらー、ちとせー。

おきろー。あさだぞっ。


ゆさゆさ。


「……んぅ、……やぁあ」


やーじゃないでしょ、もう。


かわいいけど。

ねぼすけさんのちとせ、すんごくかわいーけど!


「……ぁお、ちゃ、……んー」


なーにー。


「んー」


んー?


こてっ、と首を傾げつつ、千歳に顔を近づける。

どうしたー。


「んー」


がばっ、と。

千歳の両手が、触手のように、食虫植物のように、あたしに絡みついてきて。


「んっ……」


「ちょ、……ぁっ」


「…………」


「っ…………」


「……ぷは」


「はぁっ……はっ……ちょ、ちとせ」


「……ん?」


ぺろり、と。千歳の真っ赤な舌が、千歳の唇を濡らす透明な液体を、艶めかしく舐め取るのを見てしまった。そうしてあたしは、一瞬、硬直してしまう。あたしの背筋を、冷たいだけじゃない何かがぞわっと駆け上がった。


「なぁに、あおちゃん?」


ちょ、だから、


「んー?」


ち、近いってば。


「いーじゃん」


いい、けどさ。いまは良くないというか、その。


「むぅ」


視界の端の隣のベッドに、千歳愛用の目覚まし時計が見えた。7時じゃすと。


「ほ、ほら、あさごはんっ、まにあわなくなっちゃう!」


「…………」


「……ち、ちとせ?」


「うん、わかったよ。……おはよう、あおちゃん」


「お、おはよ。ちとせ」



悪魔みたくきれーな笑顔で、千歳は朝の挨拶をしてくれましたとさ。

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