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秋の夜長の神様

「ご主人様!起きないのならば…」


いつものように起こしに来た卯月メイド神。


「夢操作バッドドリーム!」


「……ぐわっ…はぁ、はぁ…夢か…」


「おはようございます!ご主人様!」


「おはよ…。今凄い嫌な夢で目が覚めた…」


「はい。りんごの中にご主人様が閉じ込められて上から包丁が来るものかと思ってたらまさかの横からで包丁が命中してしまった…って夢ですね?」


「なんで分かったの…?」


「私がご主人様の夢を操作したんです。悪夢を見れば起きるかと…」


「精神的な攻撃は止めて!」


「朝ご飯、できておりますよ」


「あ、うん」


今日は遅刻しなくて大丈夫そう。

只今午前5時半。


「現人神様!おはようございます」


先に起きていた水無月に声をかけられた。


「ん~…。おはよう」


「どうしました?」


「ちょっと悪夢を…」


食卓にはすでにみんな集まっていた。


「遅いぞ誠!寝過ぎだ!」


「いやいやいやいや、睦月たちが寝無さ過ぎなの!」


「人は何時間くらい寝るんですか?」


如月が聞いてきた。


「6時間は最低でも…」


「私たちは3時間ほどで大丈夫なんですけどね」


「だからか…。俺が毎日速く起こされるのは!」


「いいじゃないの!琴ちゃんだって悪気はないんだから責めないであげてよね!」


弥生が言った。


「分かってるけどさ…。眠い…」


「じゃああんたが早く寝なさい!」


「文月うるさいよ!」


「……美味い…」


葉月が朝食を食べながら呟いた。




学校。


朝の会での出来事。


「え~。今朝の新聞に出ていました。月野誠、ちょっと前に」


先生に言われた。


「前?何やらかしたんだ?昨日早退したじゃん。まさか、新聞に乗るほどの難病に!?」


ざわつく教室内。


「え~静かに!昨日月野誠は泥棒を捕まえました」


「え?泥棒?すごっ!」


「どんな感じだったのか話してもらいましょう」


どんな感じと言われてもなぁ…。


「えっと、まず犯人が逃げるのを追いかけました。そしたら犯人が転んだので腕を取って動けなくして警察に通報しました」


「だということです。拍手!」


パチパチパチパチ!


取材のことは黙っておこう。


「誠のお手柄だ!どうやら犯人は仏像マニアで連続して仏像を盗んでいたらしい。誠!サボった甲斐があったな!先生も嬉しいぞ!」


「いや、サボったわけじゃ…」


朝の会終了。


お決まりの神保進登場。


「何?捕まえたの?」


「え?うん。弱かった」


「ゴキブリの話だよ?」


「は!?何の話?」


「うそうそ。泥棒の話」


「何だお前?」



帰宅。




「おかえりー!誠~!」


「ん?何だ?睦月?」


睦月が何だか嬉しそう。


「えへへ~。じゃーん!」


睦月が居間のドアを開けた。


「どうだ!誠~!私たち全員で手作りしたんだぞ!」


テーブルの上には見たことないような大きなケーキ。


「どうだ!マッコウ!恐れいったか!?」


弥生が嬉しそう。


「これは…?」


「今日は現人神様の誕生日じゃないですか!」


「ん~?あっ!そっか!何で知ってんの?」


「ゴッドウェブでゴドりました」


如月が答えた。


「ゴドるって何!?」


「検索するってことです」


「ああ…。え…?」


「わかりませんか?ゴッドなのでゴドるです」


「いや、わからないのはそこじゃなくて…」


「はい?どこですか?」


「何で俺の情報が検索できちゃうんだよ!?」


「日本中の現人神の情報が検索できますよ?」


「そうなの…?」


「はい!」


「そんなことより誠!このケーキの土台は私ときっちゃんが作ったんだぞ!」


凄いだろ!と言わんばかりの睦月。


「はい。でもむっちゃん味見しかしてませんでしたよ」


あっさりネタバラしした如月。


「あ、それは言わないで~」


「で、飾り付け担当が私と琴ちゃんと水無子」


弥生が言った。


「ご主人様のために頑張りました!」


「現人神様の誕生日ですもの!丁寧にやりましたよ!」


「いや~、これデカくて大変だったんだから!」

それぞれ感想を述べていく。


「私は1人で果物乗っけた!」


楽な仕事を任されたと思われる文月。


「文子にはそれくらいしか任せられないのよ」


「ちょっと弥生!どういう意味よ?」


「そのままの意味よ」


「ムカつく!」


「ムカつくのは自由だけどそれを行動に移さないでね」


「もういいわよ!」


「で、葉月は何したんだ?」


多分自分からは話さないから聞いてみた。


「……神業を使って…味を整えた」


「そうか!じゃあさぞかし美味いんだろうな!」


「……苦くした…」


「はっ?えっ?何で!?君凄い余計なことしたよ!?」


「……嘘だよ…」


「もう!何で嘘つくんだよ!?」


「………」


「答えてよ!」


しばらく後…。


「そろそろケーキ切ろうよ。みんなで食べよ!」


「おー!誠切ってくれ!」


「俺?」


「ご主人様、私がやりましょうか?」


「あいや、せっかくだし俺やるよ」


「でも…」


「じゃあ一緒にやる?」


「はい」


「せーのっ!」


ナイフをケーキに入れた。


「ちょっと~。結婚式のケーキ入刀みたいじゃない?」


弥生が言った。


「え…?そうだった?」


「かなりぽかったよ」


「そう…?」


なんとなく恥ずかしい。



「ご主人様、ケーキはどうですか?」


「うん!美味い!苦くないね~」


「……だから…あれは嘘だって……」


「そういえばさ、葉月の背中の羽って意味あんの?」


聞いてみた。使ってるの見たこと無い。


「……世の中に…無意味なものなど…無い…よ……」


「じゃあ飛べるの!?見せてよ!」


「……飛べないよ…。……飾り…」


「じゃあ意味無いものじゃん!」


「……うん…割と…」


「自分で直前に言ったこと否定したよこの娘!」



そのときチャイムが鳴った。

ピンポ~ン。


「テレビ局かな?」


玄関へ。


「あ!誠!御守り忘れてる!」


「あ、睦月サンキュー!」


玄関前にはテレビ局のアナウンサーとカメラマンが立っていた。


「月野誠さんですか?」


「はいそうです」


「では早速、お話を伺ってもよろしいですか?」


「はい…どうぞ」


ホントにいきなりだな…。


「仏像窃盗犯を捕まえたというわけですが、どうやって捕まえたのですか?」


「はい。ロープで足ひっかけて転ばせました」


「凄いですね!よく思いつきましたね~」


「どうも」


「ところで、その御神体と言うのは、見ることは可能ですか?」


「え!?本殿の中はちょっと…」


「そうですか。残念です。この木札は…?」


来たー!


「これは御守りです。うちの神社で発売しているものですよ。最近の流行として萌えを取り入れてみました」


「そうですか。ありがとうございました。それではスタジオにお返しします」


取材終了。



「緊張したよ~」


「誠!私たちの活躍を一言も喋らなかっただろ!」


「そうだぞ現人神!何で言わないんだ?神と交信して撃退したって!」


睦月と文月が抗議してきた。


「話せるかよ!?しかもこれ交信とは違う…。いくら神社でも痛い子だよ」


「でもぉ…」


腑に落ちない睦月。


「じゃあ僕は何もできなかったけど神様が代わりにやっつけてくれたって言えば良かったんだよ!」


バカな文月。


「だから神関係は言えないでしょ!文月はバカだな…。しかも作戦立てたの俺だからね!」


「バカじゃない!天才!最強!無敵!」


「無敵ねぇ…。そりゃ誰も相手にしてくれないから敵が無いってことだろ?」


「バカ現人神!」


捨て台詞を吐いてどっか行った文月。


「でも誠、宣伝だけはかかさなかったね」


弥生が言った。


「まぁね。これで収入が増えれば俺の手柄だからね!」


「……せこい男…」


「葉月うるさいよ~!」


「現人神様のテレビ、ちゃんと録画しておきます!」


「あ~…水無月。いいんじゃないの?録画しなくて…」


「何故ですか!?せっかくテレビに映ったのですよ!?」


「そうだけどさ…」



「そうだ、神様に御挨拶しなきゃ」


思い出したように俺が言った。事実忘れてた。


「普通の人が神に挨拶って言ったら神社に参拝することですけどね…」


如月が言った。


「現人神だと召喚するからね」


弥生が言った。




御神体に向き直り座る。


「今日は座りましたよ」


「マッコウなりにパフォーマンスを考えてるんじゃないの?」


「……あれが…パフォーマンス…?」


「誠も面白い人間だねぇ」


「バカ現人神!」


「というか長月をつかさどる神様って…」


「…あっ!!!!!」



「そーれぃ!く・が・つ!キェェェーー!」


「わっ!奇声上げた!」


「おっかないですね…」


「誠…大丈夫か?」



こんな適当でも神様を召喚できるのだから不思議である。


召喚されたのはまた少…幼女。

頭やお尻にオプションは無い。

ただの幼女。


「お兄ちゃーん!」


突然叫んで俺に飛びついて来た。


「ぐっ…!うっ…。何!?え?」


「お兄ちゃん!」


「俺!?」


「うん!あたしのお兄ちゃん!」


「えーー!?」




「あたし、長月ながつき ゆいな。宜しくね、お兄ちゃん!」


「あ、うん…」


「どうしたのお兄ちゃん?」


「いや、俺兄弟いないからさ…お兄ちゃんとか呼ばれるの…なんとなく恥ずかしくて…」


「誠素直だねぇ」


「まぁ、私たちもお姉ちゃんって呼ばれてるしな」


「私たちはもう慣れちゃいましたけど…」


「ゆいちゃん!あんまり現人神様にくっつかないでくださいよ!」


「な~に~?水無月お姉ちゃん、嫉妬?」


「ち、違う!そうじゃなくて!現人神様が困ってますよ!」


「お兄ちゃん?困ってる?」


「え?…いや…大丈夫…」


「ほーら!困ってないって!水無月お姉ちゃん!」


「もう!現人神様!しっかりしてくださいよ!」


「うん…」


「マッコウ、これから頑張りな!」


弥生が言った。




「御飯できましたよ!今日はご主人様のお誕生日なのでいつもより頑張りました!」


「琴お姉ちゃん!」


「あら?ゆいちゃん!?ご主人様に呼んでいただいたんですね」


「うん!」


「良かったですね。ここのご主人様は優しいですよ!」


「良かった!やったー!」


「あ~。卯月ありがとう。悪いね、俺なんかの誕生日に」


「いえいえ!大事なご主人様ですから!」


「……恋…か…」


「ん?葉月何か言った?」


「……何も…」





運ばれてきた晩飯。

目を見張るものがある。


えらい豪華だ。


「ご主人様、どうでしょうか?」


「凄いねこれ!何品あるの!?」


「15品作りました!ご主人様のお好きな物だけを揃えたつもりです」


確かに俺の好きな物ばかり。


「じゃあ食べますか!」


「ハッピーバースデーです!現人神様!」


「んー!水無月ありがと!」


「おめでとう、お兄ちゃん!」


「ありがとー!」


食べながらいくつか質問してみる。


「みんなって同い年なの?」


「ん~。難しいですね」


如月が答えた。


「なんで?歳だよ!?」


「はい。神様って言うのは人間が生み出すものなんです。人間が信じればそこに生まれるのが神様…といった感じです」


「うん」


「私たちは暦を司ります。ですから、『1月良いことありますように!』とか思われた瞬間に神様は生まれるのです」


「うんうん」


「しかしこの神社ができた時にみんな一緒に祀られました。その時にちゃんと御神体を持つ神様として転生したんです。ですから…生まれたのが転生した時か信仰が始まったときか…」


「なるほど…。」


「マッコウ分かってないね」


「現人神様…」


弥生と水無月が苦笑している。


「じゃあみんな見た目が違うのは信仰が始まった時期が違うから?」


「見た目が違うって…。お兄ちゃん!あたしが小さいっていうの!?」


怒る長月。


「え?いや、そうじゃなくて…」


「成長の差は個人差です。300年生きてれば個人差も大きくなりますよ」


「神様って寿命あるの?」


「人間の信仰が無くなるまで…ですかね?」


「多分そう」


「へぇ~…」



「ご主人様のおかげで私たちも下界に馴染んできましたね」


卯月が言った。


「でも、何度も呼ばれてるんでしょ?うちの親とかに…」


「呼ばれてませんよ?私たちみんな下界初です」


「そうなの!?」


「はい。多分ご主人様のお父様が呼ばれたのは…」


「何?」


「もっと…こう…」


「言っていいよ!」


「八百万の神様にもなれなかった単なる使い魔かと…」


「何それ!?」


「私たちの下にいるペットみたいなもの」


卯月に代わり弥生が答えた。


「何それ!?俺もそれ呼べないの!?」


「あ~…。あいつらはダメ」


「なんで?」


「現人神だとね、神しか呼べないから。奴ら、ちょっと神学学んだ人間なら呼べるよ。神じゃないし。私たちが月ならばやつらは日付って感じかな」


「何それ!?うちの親は何?」


「ん~…。ダメな現人神だったんだな」


「じゃあ誠と一緒だ!」


「睦月うるさいよ!?ダメな親父だったのか…」


「あ、別にマッコウが優れてる訳じゃないよ?」


「弥生うるさい!」





夕食も終わり俺は布団へ。


「あたしお兄ちゃんと寝たい!」


長月が言い出した。

「俺と?お姉ちゃんたちいるのに?」


「誠~。お姉ちゃんとか呼ぶな~」


「こら現人神!姉の言うことは聞け!」

「……お姉ちゃん…」


睦月から文句。

文月は無視。


「葉月何照れてるんだ?」


「……照れて…ない…」


「でもそろそろこの部屋も狭いですね。布団敷く部屋を分けましょうか?」


気が効く卯月。


「明日からでいいよ。ん~…やっぱ一人では寝られないか…」


「申し訳ございません」


「いやいや、卯月は悪くないよ」


「お兄ちゃん!一緒に寝ていい?」


「あ~いいよ」


「やった!」



俺と長月と卯月は隣の部屋へ。


あれ?卯月も?


「ご一緒させていただきます」


「はいはい」




一方隣の部屋。


「マッコウってなんだかんだ言いつつ面倒見いいよね」


弥生が切り出した。


「確かにそうですね。ゆいちゃんが一目で懐きましたからね」


如月が言った。


「そういう人じゃないとあのお子様は懐かないからねぇ」


付き合いが長いとわかることだろう。

睦月自身は懐かれてるのだろうか?


「……文子…もう寝てる…」


葉月が密告。


「あ?おーい文子ぉー?寝てんの?」


弥生が文月を起こす。


「ふあっ?ん~!寝てないわよ!」


「バカは寝るの早いね」


「寝てないって言ってるでしょ!」


「はいはい」


「ムキーッ!起きてた!」


「ムキーッ!って言う神初めて見た…」


「私もです…」


「文子!水無月もう寝てるんだからうるさい!」


「あれ?いつのまに…。起こさないの?」


「何で起こすの?可哀想でしょ」


「私は起こしたくせに…」


「ほらやっぱり寝てたんじゃない!」


「あっ…。口が滑った…」


「ん~…。現人神様ぁ…。ダメですよ~。えへへ…」


「水無子何の夢見てるんだろうねぇ?」


「さあ…」



このあとすぐにみんな眠りについた。

暦通信~えくすとら・すて~じ~



長月 ゆいな

ナガツキ ユイナ


見た目は他の神様より各段に幼い。

みんなを「お姉ちゃん」と慕う。

元気な娘。



長月の言われ~


「夜長月」の略。

言わずと知れた秋の夜長。



な:夜が長いんだって!お兄ちゃんとあたしが夜遅くまで…!


ま:…俺は寝るぞ。明日学校だし。


な:そんなぁ!お兄ちゃん!遊ぼうよ!大人は夜遊ぶんだよ!


ま:それ違う…。夜長ってのは夏と比べて日の入りが早まったって意味だろ?


な:そうなの?


ま:いや、知らない…。

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