霜月を司りし神様
朝4時。
今日も学校は休み。
しかし神社の朝は早い。
「ホワイト・アウト!」
卯月が叫ぶとご主人様が起きる。
もう板についてきた光景。
「ん、んー!ちょっ!」
飛び起きる俺。
悪夢再び。
いつかも喰らったスカート被せ。
今日は白…じゃなくて…。
「普通に起こしてよ!」
「これが一番起きるかと思いまして…」
それを言われると言い返せない自分がいる…。
というか、これも技なのだろうか?
「朝ご飯できてますよ。着替えて降りてきてくださいね」
卯月に言われた通りに着替えて下の居間へ。
「まだ4時じゃん…。こんな早くに何~?」
居間に行くとすでにみんな起きていた。
「誠ー!早く食え!これをやるぞ!な?」
睦月が持っているもの、それは…。
「バドミントンか…。いいけど、どこで見つけた?」
「玄関の傘立てに入ってた!」
嬉しそうな睦月。
「やるのは構わんが…シャトルは?」
「はっ?」
「シャトルだよ。え?バドミントンて知らない?」
「知らない…」
「分かった。後でやろう。飯食ってちょっとしたらな」
「おう!」
飯を食ったらと言ったはいいが…。
朝からメタンアイスワーム(昨日の残り)が食卓に登ってるのを見ると食欲が失せる。
どうにかならんのか?これ…。
「…ちょっとこのメタンアイスワームを猫にあげてくる」
海産物だから食べるだろう。
猫はお魚が大好きだ!
二分後…。
「卯月~…。消毒薬ある~?」
手に傷を付けて帰ってきた俺。
「うあっ!ご主人様!どうしました?」
傷を見て驚く卯月。
「猫にあげた瞬間あいつ毛を逆立てやがって…。無理やり食わせようとしたら引っかかれた…」
あらら…
卯月が苦笑している。
「あ~マッコウ、来てみ」
弥生に呼ばれた。
「ほら、傷見せて」
言われたように手に付いた傷を見せる。
「いくよ!あれ?何怖がってんの?」
俺の様子を察した弥生が聞いてきた。
「熱湯消毒…?」
「あははは!違う違う!いいから見てて!」
そういうとひっかき傷を指で撫でる弥生。
手をどかすと完全に傷は完治していた。
「ほれ、完了」
どうよ!と言わんばかりの顔をする弥生。
「すご…何したの!?」
「だから!私は治癒の神なの!これが神の力よ!」
「本当に治療できるんだ…」
「信じてなかったのね…」
「どれくらいまで治療できんの?」
「ん~…。命あるまで」
しかし、猫が怒るほどの食材とは…。
メタンアイスワーム恐るべし!
いや、食材じゃないか…。
「誠ー!早くやろう!」
睦月が急かす。
因みに現在5時半。
せめて8時まで待って…。
そう言って二度寝した。
朝9時。
再び起床。
居間に降りても誰もいない。
外から楽しそうな声が聞こえる。
外に出るとみんないた。
「おー誠!起きたか!これやるぞ!」
シャトルも無しにラケットを振り回す睦月。
そこ、参道なんだけど…。
「どうせ人は来ないんだ!やろう!」
自分の神社に向かって…。
いや、御守り買いに来る人がいるかも知れないし…。
そんなことは睦月を始め誰も気にしなかった。
「盛り上がってるところ悪いんだけど…ローズマリーの挿し木したいんだけど」
俺が言った。
「ローズマリー…ですか?なんですかそれ?」
不思議そうな如月。
確かに神に供えたりはしない。
「……ローズマリー…。シソ科のハーブ…」
葉月が説明してくれた。
「で?それをどうすんの?」
弥生が聞いた。
「挿し木って言って枝を折って地面に刺すの。そうすると増えるから」
「構いませんが…。何故ローズマリーなのですか?」
卯月が聞いてきた。
「先月二つ貰ったんだよ。神社の裏にあるよ」
「増やしてどうすんの?儲かるの?」
金儲けを企む神無月。
「違う、売らない。なんか、集中力とか記憶力がアップするらしいんだ。食べれるし」
「まあ、食べれるなら手伝ってあげてもいいわよ!」
文月の評価基準は食べれるか食べれないからしい。
俺はみんなを連れて神社の裏へ。
そこは日当たりがいいので植物を育てるには好都合。
「あれ?これ、いい匂い!」
水無月が言った。
人一倍鼻が利くらしい。
「じゃ、この枝の先を折って地面に刺して。ほっとけば増えるからさ。初心者にも簡単なんだとさ」
適当に説明する。
「お兄ちゃん!枝折ったら可哀想だよ!」
長月が言った。
確かに枝折って突き刺すだけ。
これで増えるとは考えにくい。
「いや、これはローズマリーのためであって、こうすると喜ぶんだよ!」
適当な言い訳。
あれこれやって挿し木終了。
「誰かさ、水やり当番やってよ!」
みんなに呼びかけた。
「私やりましょうか?」
卯月が名乗り出てくれた。
「あー琴ちゃんいいよ。私やるから」
そう言ったのは睦月。
珍しく引き受けた。
「さて、終わったしバドミントンやろ!」
やたら張り切る睦月。
「だからシャトル!」
「私が召喚するよ、そのくらい」
召喚って…。
外じゃヤバいでしょ。
そんな心配をよそにシャトルを出した睦月。
知らないものでも出せるらしい。
「あ、後ネットも…」
ネットも出した。
賽銭箱の中身まだあるのだろうか?
そろそろ心配である。
メタンアイスワームいくらした…?
コートをセッティング。
適当に線引いて、ネットを接着。
正直俺もルール知らない…。
適当でいいか…。
「えーと。コートの中にシャトルを打ち返す。よく知らないし11点マッチでいいか。卓球がそうだし」
以上。
ルール説明。
俺は縁側で座って見てる。
隣には卯月が寄り添って座っている。
まだ5月。
暑くなく、寒くなく。
スポーツには丁度いい季節。
晴れの下、バドミントンをする少女達。
それを足をパタパタしながら見てる俺。
どうせ神社には人は来ない。
彼女達にとってはいい遊び場かもしれない。
日差しが暖かくて気持ちいい。
いつしか、卯月の膝に頭を乗せて寝てしまったようだ。
「誠ー!誠ー!って…お…?何やってんだ?」
睦月に呼ばれて起きた。
自分の姿を見てみる。
卯月の膝の上…。
まるで恋人同士。
「はっ!いや!その~これは…」
「ん?まあ何でもいいや。シャトルを取ってくれ!」
睦月が言うには、神社の前の道にシャトルが出たらしい。
神社から出れないから取って欲しい。
ということだ。
「ねぇ、ちょっと出ようとしてみてよ」
俺が言った。
本当に神社から出れないのか確かめたかった。
「お?出れないんだって!ほら!」
睦月は神社の土地と道との間を叩いた。
見えないが、壁があるのは間違いなさそうだった。
「これは私たちより位が上の神様が設けた結界。召喚された神様が好き勝手出て行かないようにするためのもの。まあ、現人神には関係ないものだし。シャトル取って!」
シャトルはすぐ目の前にあった。
それを拾って睦月に渡す。
睦月はサンキューと言いながらコートに走って行った。
結界が張られている。
この神様達は言わば虫かごの中から出れないでいる。
生涯外の景色を知ることは無い。
仕方ないことかもしれないが、何となく腹が立った。
本当はみんなを連れて出掛けたい。
今はそれが出来ないのだ。
しかしどうしょうも無いのも事実。
諦めるしかなかった。
「ご主人様?どうしました?」
縁側に座ったとき、卯月に話かけられた。
「ん?あ、いや。何でもない…。卯月はバドミントンやらないの?」
「私は運動は苦手なので…見てる方が楽しいです」
「そう…?」
「はい!」
そう言うと、卯月は太陽を見た。
「あら、もうこんな時間ですね。お昼ご飯の準備をしてまいります」
そう言って立ち上がる卯月。
太陽の位置で時間が分かるようだ。
便利な能力である。
「お兄ちゃんもやろうよ!」
一人でいる俺を見て長月が声をかけてくれた。
「よし!やるか!」
俺の対戦相手は文月。
俺のサーブ。
文月のスマッシュ。
は?スマッシュ?
「うりゃー!どうよ!現人神!」
調子に乗る文月。
「ちょっ!そのジャンプ力反則!」
その猫耳は運動神経も示しているのだろうか?
「現人神もそこまでね!」
さらに調子に乗る文月。
「ならこれでどうよ!」
かなり高めにサーブを打った。
「ちょっ!届かないじゃないの!」
見事得点ゲット。
「どうせ文月のことだから何度も同じ手でくるだろうと…」
「バカにしないでよ!次は私から行くよ!」
文月がサーブを放つもネットを越えず…。
試合はそのまま俺の勝ち。
「満足した?」
「くぅ…。勝てると思ったのに…」
「ん~。スマッシュしか打たないのがいけないんだよ」
「そう…?」
「うん。まあ、スマッシュは強烈だったけどな」
「マコちゃん!勝負です!」
如月が勝負を挑んできた。
「いいけどさ…。飯食ってからにしない?」
「そうですね!」
撤収!
本殿・居間。
「あら?皆さんバドミントンは?」
卯月が聞いた。
「運動するとお腹減るじゃん!琴ちゃんお昼は?」
睦月が聞いた。
「はい、只今沖縄そばを作ってます。もうすぐ出来ますよ!」
「沖縄そば?」
「はい!沖縄のそばです!」
「そのまま…葉月ぃ!」
睦月が葉月に振る。
物知りな葉月。いろいろ頼られる。
「……知らない…」
知らなかった…。
「はい、出来ましたよ~!」
卯月が沖縄そばを運んできた。
「これ、そば?そば粉使った?」
弥生が聞いた。
「麺は作ってないので…」
「ああ、そうか」
沖縄そば…。
俺自身初めて食べる。
具は豚の角煮と紅ショウガと刻んだネギ。
シンプル。
これが食ってみると美味い。
そして腹に溜まる。
食後は再びバドミントン。
俺は一人で居間に残る。
御神体に向き合い、霜月の神様を召喚した。
「降神術!霜月!」
実際術でも何でもない。
ただ与えられた特権を駆使しているだけだが…。
少女召喚。
スラッとした体型。
ぺったんこな胸。
高くない身長。
白いフリル付きのワンピース。
「私、何に見える?」
いきなり話しかけられたので対応に困る。
「えっと…神様…?」
「もう!そうじゃなくて!何に見える?」
困る。
非常に困る。
「……ドレス姿の…」
「そう!花嫁さん!」
まだ言ってない。
花嫁だったのか…。
俺はてっきり何か動物的なものかと…。
ひつじとか。
「私、霜月 理美。霜月と平和の神様」
「平和…」
「うん!この地域の平和は私が司ってるの!」
…。泥棒入ったのに…?
平和…。
まあ確かに泥棒除けば凶悪事件も起きてないし…。
平和っちゃ平和。
「今さ、外でバドミントンやってんだけど、行ってきたら?みんないるし」
そう言うと霜月は走って外に行ってしまった。
「あら?今の…」
洗い物を終えて居間に来た卯月が呟いた。
「うん。霜月の神様」
「やっぱり!霜ちゃんでしたか!彼女は元気な娘ですよ」
「いきなり何に見える?って聞かれたよ…」
「彼女らしいです。縁側に出て夏ミカンでも食べましょうか。冷やしてありますよ」
「ん?夏ミカン…?」
「はい。夏ミカンの旬は4月から6月ですので」
「夏…あれ?」
「夏は旬ではないのが夏ミカンなんですよ」
知らなかった…。
縁側。
只今神無月と如月が対戦中。
2点差で如月リード。
今俺は縁側に座って試合を見てる。
右には卯月。
左には睦月。
「睦月、ローズマリーに水やった?」
俺が睦月にきいた。
「お?今日からなのか?」
「そうだよ。水道のとこにジョウロあるから、それ使って」
「分かった。それより誠!霜呼んだのか!」
「ん?おう。呼んだ。あいつは変なやつだ…」
「確かに変だ!」
暫く二人の対戦を見学。
神無月と如月の試合は如月の勝ち。
「次!琴ちゃんとむっちゃん!」
弥生が卯月と睦月を呼んだ。
運動はダメだと言っていた卯月。
それでも呼ばれると行く。
審判は長月と文月。
…大丈夫なのか?お子様とバカで…。
水無月と神無月がラリーの練習中。
如月は水分補給に本殿の中へ。
で、縁側には霜月と弥生と葉月が俺の横で腰かけている。
「マッコウ!もう寝ないでよね!」
弥生が言った。
膝まくら見られてた…?
「はいはい。でもさ、縁側って気持ちいいんだよね~」
「それは分かる!夏に冷えたリンゴとか食べてね!」
「え?リンゴ?スイカじゃない?」
霜月が間違いを指摘した。
「間違えた…」
恥ずかしそうな弥生。
「……ふっ…」
ん?今葉月笑った?
面白かったか今の?
「膝まくらしてやろうか?」
ニヤニヤしながら弥生が言った。
やっぱり見られてた…。
「じ、じゃあ…ちょっとだけ…」
「調子に乗るなバーカ」
ぐぅ…。心に突き刺さる一言。
裏切りおったな…。
「わぁ、誠ちゃん恥ずかしい~。顔赤~い」
霜月の言葉で再起不能に…。
親でも誠ちゃんとは呼ばねーよ…。
「……変態…」
葉月に留めを刺された。
「現人神様もやりませんか?ってあれ?現人神様どうしたんですか?日射病ですか?」
水無月がラリーの練習に誘いに来た。
「いや…なんでもないよ…。日射病って最近聞かないね。みんな熱中症って言うし。というか5月に熱中症って…」
「何でもないならやりましょう!ラケットありますから!」
「うん…」
半ば強引につれてかれた。
いざラリー!
ってちょっと待て!
水無月のそれラケットじゃなくて剣じゃないか!
「大丈夫です!現人神様には当てませんから!」
そういう問題なのか?
まあ、斬れない刀だし…大丈夫か。
気を取り直していざラリー!
「いきますよー!それ!」
水無月から俺に。
「オッケー!ほい!」
上から振り下ろすように神無月にパス。
「強いって!よっ!」
直球で水無月にパス。
「わあぁ!早っ!えいっ!」
剣をバットのように振る水無月。
そしてスマッシュのようなパスが俺に!
「ちょっ!パスじゃな!そりゃ!」
「これはラリーよ!緩いのよこしなさい、よ!」
直球でのラリーが続く。
「あいつらかなり上手いんじゃないの?」
「確かに…。何であれで続けられるの?まぁ、私にもやれるけどね!」
霜月の言葉に冷たい目線を送る弥生と葉月だった。
そのころ、睦月と卯月の試合では何やら揉めていた。
「何で!?今7対8でしょ!?」
「違うよ文月お姉ちゃん!今8対6だよ!」
点数のことで文月と長月が喧嘩中。
「あの…今は8対6で、ゆいちゃんが正しいです」
卯月の言葉で文月敗北。
お子様に負けた文月。
「何でプレイヤー自身がカウントしてるのよ!?私たちいらないじゃないの!」
文月が言った。
「ああ、点数間違える審判ならいらないな」
睦月のキツい一言。
トボトボと縁側に向かう文月。
「むっちゃん!言い過ぎです…」
「大丈夫琴ちゃん。10分もすれば機嫌直るから!きっちゃんに代わりをやってもらおう」
水を飲み終え戻ってきた如月を審判にして試合再開。
試合結果は11対6で卯月の勝ち。
ホントに運動苦手なの…?
「次は~…琴ちゃんとマッコウ!」
弥生が言った。
「また私ですか?」
少し驚く卯月。
「うん。ほら、さっきまでやってなかったからさ」
「わかりました…ご主人様!やりましょう!」
俺と卯月でコートに。
審判は葉月と水無月。
サーブは俺から。
まずは軽くサーブを…。
「メイド式逆三角ショット!」
ジャンプしながら放たれた大振りなスマッシュ。
物凄いスピードで飛んでくる。
着地点はまさかのアウトラインすれすれ。
「…ちょっと!?ホントに運動苦手なの!?」
「はい。マラソンとかダメですし…」
マラソン…。
それはちょっと違う気がする…。
バドミントンには関係ない。
気を取り直して二本目のサーブ。
「いけ!アンダーカットサービス!」
シャトルをカットして放つサーブ。
シャトルが空中で回る。
「甘いですねご主人様!桜花満開!」
今度は真下、ネットすれすれに叩き付けるようにスマッシュを放った。
一発目の軌道を予想して下がっていた俺に拾える訳もなく…。
サーブは二本交代。
卓球がそうだからバドミントンもそうだろうという適当な考えから俺が決めた。
因みに、俺は小学校四年の時に卓球クラブだった!
(五年は折り紙クラブ、六年は和紙作りクラブ)
「次は私からいきますよ!梅花満開!」
鋭く右に曲がる球を放つ。
拾えない…。
そして何より気になるのは…。
「ウメブロッサム…?」
「梅は英語でもウメです!」
だそうです。
「次行きますよ!フェニックス・ザ・フレイム!」
今度は左に鋭く曲がる球。
これは何とか触れたが返せず…。
「俺も本気を出す時が来たか…。ビッグバン・エアロ!」
シャトルを高く投げ、全力で振り抜く。
しまった!空振った…!
「あははは!今の…今のは無いです…!」
「……バカ…ふふふ…」
審判の水無月と葉月、大笑い。
「あーもう!次!そい!」
普通に打った。
「メイド式台形スマッシュ!」
ジャンプして構える卯月。
「させるか!」
卯月が構えに入った瞬間、卯月の前に出た俺。
あとは卯月がラケットを振る軌道上にラケットを立てておけば…。
「うそっ?」
驚く卯月。
卯月の強烈なスマッシュは放たれた瞬間俺のラケットに当たり卯月のコートに返った。
正直、ラケットが直撃しそうで怖かった…。
「よし!これが俺のカウンターよ!」
「返され…た…」
かなり悔しそうな卯月。
「ご主人様!私もこれから本気を出しますよ!」
卯月の本気…。
怖い…。
「行きますよ!奇跡果物!」
緩い球。
これが本気…あれ?
放たれた球をネットを越えた瞬間前に進まず下に落ちた。
「油断しましたね!変化球なら負けませんよ!」
胸を張る卯月。
「もう一度行きます!メイド式死の聖域!」
見た目普通の球。
しかし、ラケットを振るとシャトルの方がラケットを避けるのである。
現在7対1で卯月リード。
かなりヤバい。
俺のサーブ。
「文月封印・超高度ショット!」
文月のスマッシュを封じたかなり高く上げるサーブ。
「なんの!運転技術!」
シャトルに対してドライブをかけるように打った。
変に回りながらこちらのコートに。
「チャンス!クロニクルメタスマッシュ!」
スマッシュを放った。
しかし…。
「なっ…!」
シャトルは俺のコートに。
「さっきのご主人様のカウンターを使わせていただきました」
悔しいのは卯月の方が綺麗に決まったこと。
「やってくれるね。なら…!ドロップ・ザ・シャトル!」
ネットを越えると落ちるドロップサーブ。
「これくらい!スパイラルシークレット!」
シャトルが落ちる前に直線的な速い球を打ってきた。
「よし!超高度ショット!」
再び高く上げた。
後ろに下がる卯月。
「運転技術!」
同じパターン。
「必殺!ネット・イン!」
ネットに引っ掛けてから相手のコートに落とす最強にして最低な技。
「なぁっ!ぐっ…!」
後ろに下がっていた卯月には拾えず。
「……卑怯…」
葉月が呟いた。
「現人神様…今のはちょっと…」
水無月も文句を言いたげ。
「いいんだよ!点入ったんだし!こっちだった失敗のリスク高いんだから!」
文句は却下。
現在8対2で卯月リード。
サーブは卯月へ。
「…。サイクル・ポイズンショット!」
怒ってる…?
左右にフラフラと揺れてブレるサーブ。
「リトラクタブル・シェイブ!」
大振りなカット。
しかし、打ち上げてしまった。
「完全満月!」
凄まじい速度のスマッシュが俺の顔目掛けて飛んできた。
とっさにラケットでかばうも返せる訳もなく…。
あれは絶対怒ってる…!
「行きますよご主人様!殺人・シャトル打撃術!」
とんでもない名前の技放ってきた!
今度も俺の顔目掛けて飛んできた。
しかし、当たる直前に球は消えた…。
と思ったら…。
「ぐっ!痛っ!」
スネに直撃。
シャトルでも高速だと痛い。
「いたたた…」
「すいませんご主人様。ワザとじゃありません」
絶対ワザとだよ…。
今10対2。
このサーブで取られたら負け。
「行くぜ!百鬼夜行スプリットスポイル!」
月野誠最終奥義。
いわゆる分身魔球。
シャトルは16個に見える。
「真ん中ですね!止めです!サーキュライト・エディション!」
簡単に見破った卯月。
そして最後は…。
「ネットイン!ゲームセットです!」
水無月がゲームの終わりを告げた。
はっ?ネットイン!?
「何で俺の奥義を見破った!?」
卯月にきいてみた。
「増えるやつですか?あれは一つのシャトルを円く囲うように他のシャトルがあったので…。真ん中が本物だと思いますよ!誰でも!」
笑いながら卯月が言った。
そんなぁ…。
「では、私は夕飯を作ってきますね!」
本殿に戻った卯月。
夕飯?
早くない…?
まだ3時だよ…?
「マコちゃん!今度こそ勝負です!」
如月が挑んできた。
「あいよ!やるか!」
昼飯前から言われてたし、断る訳にはいかない。
審判は神無月と弥生。
いざ、勝負!
サーブは如月から。
「いきますよ!それっ!」
普通の緩いサーブ。
これはもらった!
「ローズマリー・ホーネスト!」
強烈なスマッシュ。
しかしあっさり返す如月。
あまりにあっさりで俺が拍子抜けしたほど。
「あら?ええい!ビッグバン・エアロ!」
ラケットはシャトルを中途半端に捉えた。
そのせいでかなりのヘロヘロ球を打ってしまった。
「しまった!」
そう言っても後の祭りである。
如月のコートに返っただけでも十分であろう。
如月は球を拾いに行く。
打った球はまさかのネット。
奇跡的な得点ゲット。
「きっちゃんて何で緩いの打てないの?」
「そうそう!あたいもやってて思った!強いの返せるのに…」
審判の弥生と神無月が如月に聞いた。
「え?強い球の方が簡単じゃありませんか?え…?」
本気で言ってるのだろうか?
しかしまあ、弱点が分かれば余裕!
案の定、その後得点差は広がり…。
10対1で俺リード。
ラストは俺のサーブ。
「それ!」
普通に下から緩く打った。
「えーい!当たれ!」
シャトル目掛けてラケットを投げた如月。
シャトルはラケットに当たり軌道が乱れた。
というかそんな技あり…?
「おっと!止めだ!ネット・イン!」
見事入った。
しかし俺は気付かなかった。
技をかけなくてもラケットを持っていない如月はどっちみち返せなかったことに。
その上、止めがネットイン。
非難集中。
「マッコウ!最後の酷いんじゃない?」
弥生が言ってきた。
「うるさい!勝負の世界は臨機応変に動かないと負けるんだー!」
そういいながら俺は本殿へ。
「逃げた!」
後ろで神無月が言ってたけど無視した。
本殿では、卯月が夕飯を作っていた。
「さ~ぎ~り~き~ゆる~み~なとえの~…ふねにし~ろしあ~さのしも~」
歌ってる。
上機嫌なのだろうか?
「卯月?」
声をかけてみた。
「ひゃっ!?あう…ご主人様?…聞いてました…?」
ゆっくり振り返った卯月の顔は赤かった。
「あ、いやぁ…そのぉ…聞いた…」
「あ~…。恥ずかしいです…」
「いや、上手かったよ?」
「そ、そうですか…?ありがとうございます…」
そして一番気になったことを聞いてみた。
「夕飯の準備にしては早くない?」
「最後くらい豪華でもいいじゃありませんか!」
最後?
最後って何が?
「ご主人様、今日が何日だか分かりますか?」
卯月がそういうのでカレンダーを見た。
「今日は5月31日って…あっ!明日から6月だ!」
「はい。ということは、水無子さんは今日が過ぎれば強制的に天界に帰らなければなりません」
忘れてた。
自分が司っている暦の間は天界にいなくてはならない決まりがある。
「このような場合は勝手に天界送りになるので、ご主人様は何もしなくても大丈夫です」
神様が帰る。
初めての経験…。
「そっか…水無月、帰るのか…」
そっと呟いたが、卯月には聞こえなかった。
夜。
バドミントンを終え戻ってきた睦月たち。
「誠!ネットとラケットは玄関でいいのか?」
睦月が聞いた。
「おう、構わない。その辺に置いといて」
道具を片付けたあとは夕飯。
「わあ!今日も豪華だね!今日何かの日?」
水無月が料理を見て嬉しそうにきいた。
「あれ?水無月?今日何日だっけ?」
本人に聞いた。
自覚が無いらしい。
「ん~…。何日でしたっけ?文子知ってる?」
「知らないわよそんなの…」
「……31日…」
葉月が言った。
「おー!明日から私の月なんですね!頑張りますよ!」
張り切る水無月。
「いや、あの…帰るんじゃ…?」
このテンションだとこっちが心配になる。
「帰る…?あっ…!私…明日からまた天界だっ!ああああ…ど、どうしよう…」
一人パニックの水無月。
「どうしたの?水無子、落ち着いて!」
弥生が宥める。
「うぅ…荷物まとめて無い~…」
「荷物…?剣と盾だけでしょ!」
「…そうだった…」
落ち着きを取り戻した水無月。
「でも、剣も盾も置いて行きます。荷物なので。向こうにもありますし!」
置いていかれても困る…。
危ないし…。
「あ、これ斬れないんで…あっでも神業を斬ると…でも、現人神様使いませんよね?」
「…使わないよ」
剣なんか使う訳ない。
「じゃあ御神体の横にでも置いときます」
「校長」の木造が剣と盾を得た。
ますます訳分からない木造になった。
「それで、私の為に琴ちゃんは豪華な夕飯を…?」
「はいっ!」
笑顔で答える卯月。
「うぅ…ありがと…」
泣き出した水無月。
「いえいえ。喜んでいただけたようで!」
卯月も嬉しそう。
「じゃあさ、これから毎月最後の日は豪華なの?」
弥生が聞いた。
「そういうことになりますね」
「げっ!お賽銭…」
やはり気になる賽銭箱の中。
「細かいことは気にするな!というかあんたが入れとけばいいんじゃないの?」
神無月が言った。
「この神様の実態を見ると入れたくなくなるよ…」
うちの神社願いかなうのか?
神主が言ったら終わりなので黙ってはいたが、心の中で叫んだ。
「たまにはお酒呑みたい!」
睦月が言った。
「そうだね。琴ちゃん、誰かが供えたお神酒無い?」
弥生が聞いた。
「ありますよ。出します?」
「お願い」
はい、と言ってキッチンに言った卯月。
「マッコウは呑まないの?」
弥生が聞いてきた。
「未成年はダメなの」
「人間て可哀想ねぇ~」
神無月が言った。
「そう?俺は呑む気も無いけどね」
「私は焼酎3本はいけるよ!」
霜月が胸張って言った。
張っても無いものは無い。
「霜は強いわよね~。あたしは無理…」
文月が言った。
「……私は呑まない…」
葉月が言った。
「持ってきましたー!」
卯月がお神酒を持ってきた。
しかも2本。
「こりゃまた随分高い…」
そう言ったのは水無月。
酒に詳しいのだろうか?
片方のラベルには「10年の孤立」と書かれている。
もう片方には「鳥居海」の文字。
俺には分からない。
卯月が酒を振る舞う。
俺と葉月と長月と自分を除いて。
「あれ?卯月は呑めないの?」
俺が聞いた。
「琴ちゃんは酔うと服…」
「うわあああ!きっちゃん言わないで下さいぃ!」
如月の発言を慌てて止める卯月。
わかったことは卯月を酔わせてはいけない。
そんなわけで卯月は酒を呑まないらしい。
「じゃあ!水無子も帰るわけだし…かんぱーい!」
かしゃーん!
1時間後にはみんな酔っていた。
2本の酒も空に。
「現人神しゃま~…来月…また呼んでくだしゃいね~」
酔ってる水無月が言った。
「はいはい」
適当に返事しておく。
酒呑んだみんな寝た夜10時半。
「何ででしょう?今日は皆さん早いです。いつももっと呑むのに…」
卯月が言った。
俺はラベルに書いてある文字を読んだ。
「ねぇ、アルコール度数70%って高いの?」
「えっ…?」
納得した卯月だった。
夜11時半。
水無月を起こす。
「ん…あ…」
起きない。
「仕方ありません。皆さん、離れていてくださいね」
俺たちが離れたのを確認すると…。
「最・終・魔・砲!-27等級の閃光!」
以前見たとんでもない太さのレーザー光線。
眩しくて目が…!
「うああ!熱っ!盾!盾は!?」
飛び起きた卯月。
大分酔いは覚めている。
「なんだ…琴ちゃんか…。ビックリしたよ」
「もうすぐ12時ですよ」
卯月が教えた。
今起きているのは葉月と卯月と水無月と俺。
長月も寝た。
日にちが変わるまであと5分。
「あの…現人神様…。ありがとうございました。私のせいでこっちにいる時間が延びたのに私が最初に帰るなんて…」
確かに1ヶ月以上に延びたのは水無月のせい。
「ま、いいんじゃない?楽しかったし」
「ありがとうございます!現人神様!また来月、呼んで下さいね!」
「はいよ。ま、1ヶ月頑張ってね」
「はい!現人神様…。あの…大好きです!chu…!」
「なっ…!」
頬に当たる柔らかい感触。
そして水無月の姿は消えた。
時計は12時を指していた。
さ、最後の…最後の…。
暫く動けなかった。
無言で立ち去る葉月。
「ご主人様…?最後のは何でしょう…?」
卯月が怖い。
「え…あ…。酔ってたんだよ…きっと!」
「私には酔ってるようには見えませんでしたけど…?」
「あの…その…俺は別に水無月のことは…ぎゃぁぁああ!」
酷い目にあった。
そして布団の中。
隣の布団には卯月。
「もう!私の前で!ご主人様は!」
卯月まだ怒ってる。
「卯月、酔うとどうなるの?」
「それ言わないでくださいよ…」
勢いが無くなった卯月。
この後すぐに寝た二人だった。
暦通信~えくすとら・すて~じ~
霜月 理美
シモツキ リミ
何を考えているのかが分からない。
不思議っ娘。
フリル付きの白いワンピースがお気に入り。
通称「お嫁スタイル」と呼ばれてるとかいないとか。
霜月の言われ~
霜が降りる月だから「霜月」。
し:霜月の由来簡単すぎない?
ま:うん。恐ろしく簡単。
し:霜は別に霜月以外にも降りる!
ま:一年のうち最初にってことだろ?
し:そういうこと…。
ま:霜は踏むとシャリシャリしてて楽しい!
し:確かに!霜柱は降って来ないのよ!
ま:あれが降ってきたら危ない!地面から生えるんだろ?
し:知ってたんだ…。残念だな…。