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異世界の住人が皆チート過ぎてチートがチートになってない件について【リメイク版】  作者: よしみん


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9/13

そして俺達は仕方なく冒険に旅立つ

台所は、もはや原形を留めていなかった。


壁も床も血と瘴気に染まり、

力尽きた熟女たちが折り重なるように倒れている。


中央には――

床にめり込んだまま、白目を剥いて沈黙する人妻が一人。


その惨状のど真ん中に、

あまりにも場違いな存在が立っていた。


水色髪のポニーテール。

可憐な笑顔。


……ただし、

手には血糊まみれの猪の丸干し。


「さぁ〜て、さてさてぇ〜」


少女は、くるりとこちらを向いて微笑んだ。


「皆いなくなっちゃったし……

お嫁さんは、アタイで決まりかな?」


そう言って、

何の躊躇もなく俺に抱きついてくる。


……近い。

血の匂いがする。


「そ、そうだな……

ハーレム一人目は、お前に決定だ!」


多少――いや、かなり情緒が危うい気はするが、

可愛いは正義だ。

可愛いから、いい。


「やったぁ〜♪」


満面の笑み。


……その直後。


「なりませぬ……

なりませぬのじゃ……」


低く、粘つく声。


見ると、村長が立っていた。

顔が引き攣り、全身を小刻みに震わせている。


「そ、そんな小娘を嫁にするくらいなら……」


一歩、また一歩と近づいてくる。


「このワシを――

ハーレムに入れてくだされ!!」


「……は?」


意味が分からない。


だが、

本能が全力で警鐘を鳴らした。


――まずい。


鑑定。


Lv1だったはずの数値が、

500、1000、10000……と、異常な速度で跳ね上がっていく。


空気が、歪む。


「架様のお嫁さんになるのじゃぁあああ!!」


村長が、

人間とは思えない速度で飛びかかってきた。


――死ぬ。


そう直感した瞬間、

俺は全力で逃げ出していた。


扉を蹴破り、外へ飛び出す。


その瞬間――

世界が、変わっていた。


村全体が、

黒く、まがまがしいオーラに包まれている。


家の周囲には、

左手に真っ赤な包帯を巻いた村人たち。


……多い。


ざっと見て、三百人。


「「「ふふふふふ……」」」


次の瞬間。


「「「私たちに逆らおうなんて、

百三十八億年早いのよ!!」」」


三百人が、

同時に喋った。


背筋が凍る。


村人たちは一斉に包帯をほどき、

瘴気を噴き上げる。


鑑定。


【女神託】

――女神が憑依し、自由に操る。


……スキル?

いや、どう考えても呪いだ。


引きこもっていれば安全だと思っていた。


だが違った。


女神は、

真綿で首を絞めるように、

じわじわと村を“改造”していたのだ。


俺を追い出すために。


……なるほど。


「仕方ねぇな」


剣を構える。


「クソ女神の思い通りにしてやるよ!!」


「勇者ビィィィーム!!」


一直線に道が穿たれる。


俺は、その隙間を全力で走った。


「待ちなされぇえ!!

架様ぁああ!!」


背後から、村長。


鑑定。


【架様LOVE】

――想いが強いほど、能力が暴走的に強化。


……悪意の塊か。


「クソ女神……

いつか必ず、ぶっ殺す」


そう誓った、その時。


「架様〜!!

アタイも連れて行ってぇ!!」


声。


振り返ると、

少女が村長の頭にしがみついていた。


「愛の鉄槌!!」


――ゴンッ!!


猪の丸干しが炸裂。


村長は地面に叩き潰され、

ぴくりとも動かなくなる。


鑑定。


【愛の鉄槌】

超ダメージ+一定時間行動不能。


……便利すぎる。


少女はその勢いのまま跳び、

俺の背中にしがみついた。


「これからよろしくね!」


「……あぁ」


俺は少女を背負ったまま、

村の出口へ向かって走り続けた。


背後で、

狂気と女神の気配が渦巻くのを感じながら。


こうして俺は――

クソ女神の陰謀により、

否応なく冒険の旅に出ることになった。


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