表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の住人が皆チート過ぎてチートがチートになってない件について【リメイク版】  作者: よしみん
第四章 女神激戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/60

深海へ

世界が終わる、ほんの少し前――


深い海の底で、俺とエーコは再会していた。


サメの背にまたがったまま、俺達は強く抱きしめ合う。


冷たいはずの海の中なのに、エーコの体だけは驚くほどあたたかかった。


≪架様……! 本当に、来てくださったのですね……!≫


その声が、頭の中に直接響く。


俺は目を瞬かせた。


≪あれ……?≫


海の中だ。

口を開けば水が入るはずなのに、言葉が伝わっている。


≪これ、念話……テレパシーか?≫


≪はい≫


エーコがうなずく。


頬はまだ涙で濡れていたが、その瞳はさっきまでよりもずっと澄んでいた。


≪チートの呪縛から解放されたことで、神気を扱えるようになったのです≫


≪神気……?≫


頭が追いつかない。


ついさっきまで、俺は海に飛び込んで、エーコを助けることしか考えていなかった。

なのに再会した途端、急に話が神様じみてきた。


≪ってことは、俺は神様なのか? チートでその力を封じられてた、とか?≫


自分で言っていても、半分冗談みたいな言葉だった。


だがエーコは、まっすぐこちらを見返した。


≪いいえ。私達は人です≫


その返事はきっぱりしていた。


≪でも、人も、動物も、物も……みんな八百万の神の一つなのです≫


≪……何言ってるんだ、お前≫


思わず、そう返していた。


いや、それだけじゃない。


今のエーコの喋り方に、妙な違和感があった。


≪“私”……?≫


俺は眉をひそめた。


≪お前、いつも“アタイ”って言ってただろ。本当にエーコか?≫


一瞬、エーコの表情が揺れた。


悲しそうな、少し傷ついたような目。


だが、俺にはそれを気にしている余裕がなかった。


――まずい。


肺が限界だった。


抱きしめ合っていた腕に力が入らなくなる。

視界の端が暗く滲む。


ヤバい。酸素がない。


潜ってから、もうかなり時間が経っている。

しかも俺は途中で、自分の息をエーコに分けている。


今から浮上しても間に合わない。

たぶん、もう。


俺が苦しさに身をよじるのを見て、エーコの顔が青ざめた。


≪え……?≫


その声が震える。


≪架様、私のこと……思い出していないのですか?≫


なんで今そこなんだ、と言い返したかった。

でも声にならない。


エーコはそんな俺を見つめたまま、泣きそうに唇を噛んだ。


その時だった。


ぽわぁっ――と、青銅の鏡が淡く光った。


柔らかな光が、暗い海底を細く照らし出す。


海の底は真っ黒な闇だったはずなのに、その光だけが一本の道みたいに遠くへ伸びていく。


エーコの目が見開かれた。


≪あっ……!≫


彼女が息を呑む。


≪この光の先に行けば……架様も記憶を取り戻せるような気がします!≫


≪は!? いや、ちょっと待て――≫


止める間もなく、エーコはサメに合図を送った。


次の瞬間、サメが海底へ向かって一気に頭を下げる。


急潜降。


世界がぐるりと傾いた。


ちょっ、おい、エーコ、何して――!


思わず手を伸ばす。

だがもう遅い。


サメはまるで迷いなく、鏡の光を追って深く、さらに深く潜っていく。


……いや、もう何を言っても無駄だ。


どうせこのまま浮上しても間に合わない。

だったら、もうエーコに任せるしかない。


俺達はそのまま、暗い深海へ沈んでいった。


深く潜れば、水圧で体なんて簡単に潰れるはずだ。

肺も、耳も、骨も、無事じゃ済まない。


なのに、痛みがない。


それどころか、さっきまで喉を焼いていた酸欠の苦しさすら、いつの間にか薄れていた。


呼吸していない。

それでも、死ぬ感じがしない。


これも神気……なのか?


自分の手を見る。


指先に、わずかに光が絡んでいる気がした。


しばらく進むと、鏡の光とは別に、海底のさらに奥から何かが輝いているのが見えてきた。


暗闇の中に、一本だけ立っている光。


剣だ。


それは地面に突き立ったまま、静かに海の底を照らしていた。


海の底にある“はず”なのに、

まるでそこに属していないように見えた。


水に馴染んでいない。


揺れているはずの海の中で、

剣のまわりだけが、妙に静かだ。


流れが、わずかに逸れている。


まるで海そのものが、

その刃に触れないよう避けているみたいだった。


俺は目を細める。


あれが……エーコの剣?


だが、ただの武器には見えない。

見た瞬間、胸の奥がざわついた。


懐かしいような。

怖いような。

思い出したくない何かが、そこに眠っているような。


エーコが、ほとんど祈るような声で呟く。


≪見つけました……これが……タケル様の……≫


≪え……?≫


タケル……?


その呼び方に、心臓が跳ねた。


知らないはずなのに、知っている。

聞いたことがないはずなのに、何度も呼ばれていた気がする。


サメがゆっくりと速度を落とす。


海底に立つ剣の前で、俺とエーコは同時に手を伸ばした。


触れた瞬間――


カッ………………………………。


俺とエーコの手が同時に剣へ触れた直後、無量大数を超える光が、すべてを包み込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ