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異世界の住人が皆チート過ぎてチートがチートになってない件について【リメイク版】  作者: よしみん


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6/11

村長(大勇者)の日常と日常の崩壊

ワシは、はじめての村の村長じゃ。


村を守るのが仕事で、事件が起きれば真っ先に駆けつけ、

力づくで解決してきた――はず、なのだが。


今のワシの一番の仕事は、

架様のお世話である。


なぜ、架様がワシの家に住むことになったのか。

それを思い出そうとすると、胸の奥がきしむように痛む。


……だから、考えないことにしている。


何か、とても嫌なことがあった気もするが、

きっと気のせいだ。

そうに違いない。



朝は早い。


……いや、

この時間帯に食事をとる習慣は、本来この村にはない。


だが、架様はこれを

「朝食」と呼ぶらしい。


広場へ行き、村長権限で新鮮な食材を徴収し、

家に戻って“朝食”を作る。


今日は、ドングリクッキーと桑の実ジュース。


ドングリはアク抜きが大変で、

毎回、指先がじんわりと痛むほど水にさらす。


それでも手は止まらない。


架様は、最初の頃は口に合わなかったのか、

ほとんど食べてくれなかった。


だが三日ほどすると、腹が減ったのだろう。

今では「うまい」と言いながら食べてくれる。


その一言を聞くたび、

胸の奥が、理由もなくあたたかくなる。


なぜそう感じるのかは分からない。

だがそのために、

ワシは今日もドングリを剥いている。



できた“朝食”を寝室へ運ぶ。


架様は食べ終わると、

そのまま再び眠りにつく。


「朝寝」というものらしい。

そのまま昼まで寝るそうだ。


昼ごはんの後は、昼寝もするらしい。


……実に、架様らしい生活である。



昼食の準備までの間、

ワシは「ハーレム選考」とやらのため、

候補の娘たちの家を一軒ずつ回る。


これは遊びではない。

架様の未来に、

そして――なぜかは分からぬが、

この世界を救うために必要な者を、

本気で選んでいる。


理由は説明できない。

だが、そうしなければならない気がしていた。


夕方には最終選考がある。

時間はいくらあっても足りぬ。



最初の家で、ワシは声をかけた。


「おじゃまします」


「村長様、おはようございますぅ〜」


水色のポニーテールの娘が現れた。

長いまつ毛、大きな瞳。

細身で、胸は控えめ。


好きな者にはたまらぬ見た目だろう。


「年はいくつだ?」


「今年で十六です」


「出産経験は?」


「……ありません」


少し視線を伏せた。


「それでは少し心配だな。今回は見送る」


「そんな!

アタイ、架様のこと好きなんです!

あの冷たそうな瞳で見られると、ゾクゾクして……!」


娘は危うい笑みを浮かべていた。

少々、執着が強すぎる。


「ダメだ。

安心して世継ぎを任せられる者でなければならん」


そう言って引きはがそうとした時、

奥から母親が出てきた。


「まあ村長さん。

うちの娘が失礼しましたね」


その顔を見た瞬間、

ワシの中で何かが弾けた。


「……おぬし、年はいくつだ?」


「四十八です」


「出産経験は?」


「十五人ほど。

皆もう独立しましたけど」


「よし。

おぬし、候補に入る」


「……はい?」


「架様の嫁選考だ。

なれたら毎日、腹いっぱい飯が食えるぞ」


「まあ……それは魅力的ね」


「ちょっと!

おっかあ!?

アタイが架様のお嫁さんになるんだから!」


娘の悲鳴を背に、

ワシは家を後にした。


まだ三十件以上ある。



全て回り終え、

昼食の準備に戻ろうとした、その時。


「ぎゃああっ!」


悲鳴が上がった。


胸がざわつく。


広場へ向かうと、

村人たちが血を吐いて倒れていた。


頭が痛む。


この光景……

以前にも見たような気がする。


だが、思い出せない。


「何があった!

落ち着け!」


抱きかかえた村人は、

痙攣しながら、すぐに動かなくなった。


背後から、声がする。


「村長様ぁ!

助けてくだせぇ!」


看板係の村人だった。


彼がしがみついた、その瞬間――

ワシは血を吐いた。


左手を見る。


まがまがしいオーラ。


広場に倒れる村人たち。

血を吐き、痙攣し、次々と息絶えていく。


即死の力。


反射すれば助かる。

だが、ワシの体は動かなかった。


この村人を、

この手で殺してはならない。


そう思ってしまった。


周囲には、

同じ左手を持つ村人が何人もいる。


混乱した目。

怯えた顔。


……ああ。


分からないが、

なぜか理解してしまった。



架様、申し訳ございません。


昼ごはんを、

作ってあげられそうにありません。


夕方には復活しますので、

台所に吊るしてある

オーク(魔王)の干し肉で、

どうか我慢してください……。



そうしてワシは、

静かに息絶えた。

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