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異世界の住人が皆チート過ぎてチートがチートになってない件について【リメイク版】  作者: よしみん
第四章 女神激戦

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あの日の屈辱ふたたび

俺達は息を呑み、海の上空で輝く女神を凝視していた。


あまりにも遠い。


雲の上に浮かぶその姿は、もはや点にすら見えない。

それでも分かる。


あの、無駄に眩しく、これ見よがしに下品なまでに光り輝くオーラ。

間違いない。


「クソ女神……!」


思わず奥歯が鳴る。


「あれが人間側の女神ですか」


田中が目を細める。


「無駄に目立ってるポン!」


タヌーが顔をしかめた。


確かにそうだ。

あれではまるで――


さあ、倒してみなさい


とでも言っているようだった。


邪神の時は、エーコの鏡が決定打になった。

なら、今回も同じだ。


「エーコ! 鏡をクソ女神にお見舞いしてやれ!」


「わかったー、やっちゃうね~!」


エーコが軽い調子で返事をして、鏡を構える。


その時だった。


ドカァァァァァァァンッ!!


空気そのものがひしゃげたような衝撃が、突然俺達を襲った。


「「「うわぁっ!!」」」


「「「きゃぁっ!!」」」


身体が大きく揺れる。

足元の甲板が跳ね、積まれていた龍肉や酒樽が転がった。


「なっ!? 何だ!?」


「うしろっ! うしろですわっ!!」


「ミスターカケル! バックをルックにゃ~!」


俺は反射的に振り返った。


そこにあったのは、悪夢のような光景だった。


直径5kmはある超巨大空母――《カケルダンジョン2》。


それが俺達の空母に横合いから体当たりし、甲板同士を無理やり噛み合わせていた。


鈍い金属音と、船体同士が軋む嫌な振動が、足裏から骨まで響いてくる。


そして、その衝突を合図にしたかのように。


「「「「「「おおおおおおーーーーーーっ!!」」」」」」


押し寄せてきた。


びっしりと詰まった国民達――勇者達が、目を血走らせて俺達の空母へ雪崩れ込んできた。


人、人、人。


まるで堤防が決壊した後の濁流だ。


「「「きゃぁああーーっ!!」」」


「「「うわぁぁっ!!」」」


龍肉パーティーに集まっていた国民や、元ハーレムの魔人娘達に、勇者達が一斉に襲いかかる。


ついさっきまで笑いながら肉を食っていた空間が、次の瞬間には悲鳴に満ちた戦場へと変わっていた。


「うわっ!? 何だお前ら!!」


佐藤Bが殴りかかってきた一人を蹴り返す。

だが別の勇者が横から飛び込み、その肩に組みついた。


「ゴフッ! チクショウ! やったな!?」


「佐藤B殿! 大丈夫か!?」


田中が怒鳴る。


そして俺の方を向いた。


「カケル殿! 国民達の様子がおかしい! 応戦の準備を!」


準備と言われても、もう遅い。


気づけば俺達は、襲いかかる国民達にぐるりと囲まれていた。

隙間がない。


前も後ろも横も、血走った目の群れ。

武器を握りしめ、唾を飛ばしながら同じ言葉を叫び続けている。


「「「殺せっ! 殺せっ! 殺せっ! 殺せっ! 殺せっ! 殺せっ! 殺せっ!!」」」


その声は怒号というより、狂信的な祈りに近かった。


「何なんですポン!?」


「怖いですわっ!」


「イッツクレイジーにゃ~! ウニャッ!? ボンバーッ!」


ドカーーンッ!!


リーペが飛びついてきた勇者に反射的に手榴弾を創造し、そのまま足元へ投げつける。

爆風で数人がまとめて吹き飛んだ。


「うぎゃぁあああ!!」


「ぐおぉぉ! おのれ!偽王の手下めー!!」


偽王?


何を言っている?


こいつら、何を見せられているんだ……!?


「お前ら! どうしたんだ!?」


俺は叫んだ。


「何が目的なんだ!?」


すると、その問いに答えるように。


『ふふふっ……ふははははは!!』


ダンジョン空母のスピーカーから、鼓膜を刺すような大音量の笑い声が響き渡った。


「シロちゃんの声!? でも語尾にピョンがない!?」


エーコが叫ぶ。


その通りだ。


声は確かにシロに似ている。

だが響きが違う。

あれはもっと冷たい。もっと底意地が悪い。


『まんまと罠に引っかかったわね!』


女神の声だった。


甲板のあちこちに設置されたスピーカーから、同時に響く。


『シロウサギは私が送り込んだ間者よ! あなた達はそれを知らずに仲良くし、気づけば周りは敵だらけ! 観念して、大人しく死になさい!』


その言葉に、空気が凍る。


「シロちゃんが敵なんて……そんなの嘘……!」


エーコの声が震える。


「アタイは昔から知ってるの! シロちゃんはそんな事しない! すごく良い子だよ!」


「エーコちゃん! 早くここを片付けて、シロちゃんに会いに行くポン!」


タヌーが叫ぶ。


だが周囲の勇者達は、それを嘲笑うように殺意を高めていく。


その時だった。


『ワニザメ(デスクロコシャーク)達! かけるぴょん達は悪い人ピョン! 空母を囲むピョン!』


今度は、本当にシロの声だった。


だがその声も、どこか不自然に明るすぎる。


海面が盛り上がる。


次の瞬間、海の中から無数の背びれが浮かび上がった。


一匹や二匹じゃない。


十、百、千……いや、何十万だ。


サメ。

ワニ。

サメとワニが混ざったような、異形の群れ。


海が、黒い牙で埋め尽くされていく。


「空からまた【天の使い】の大群が来てますわっ!」


ミミが上空を指差す。


見れば、雲の切れ目から白い影が大量に降下してきていた。

翼のようなものを持ち、武器を携えた異形の群れ。


「メニメニーリベンジしても無駄だニャ~! チートシースーパロー&チートスタンダードミサイル発射ファイヤーにゃ~!!」


パシュッ!


空母からミサイルが――一発だけ飛んだ。


たった一発。


他の船は、沈黙したままだった。


静かすぎる。


嫌な予感が走る。


「…………あにゃ?」


リーペが端末を高速で叩く。

みるみる顔色が失われていく。


指が震える。


「……あ、あああ……」


「どうした!?」


俺が怒鳴ると、リーペはほとんど悲鳴のような声を上げた。


「あーーーーっ!! オーマイゴッッドだにゃーーっ!!」


「全艦隊、乗っ取られてるニャ!! イージスシステムのリンクも全部切られてるニャーーッ!!」


その瞬間、全てが繋がった。


この群衆。

この狂気。

この空母。

この包囲。


俺達は、外から攻め込まれたんじゃない。


内部から崩されていた。


しかも、かなり前から。


どうやら、ほとんどの国民が女神側に回っているらしい。


足元が抜けるような感覚に襲われた。


あの時と同じだ。


はじめての村。

女神に操られた村人達。

信じていた人間に、牙を剥かれたあの瞬間。


胸の奥が焼ける。


屈辱。

怒り。

そして、理解の追いつかない絶望。


俺はまたしても――


はじめての村で味わった、あの最悪の感覚を、思い出していた。

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