シロちゃんとデート
ボクは兎人のシロだピョン。
葦男ぴょん(佐藤A)の可愛いお嫁さんだピョン。
今日は三か月ぶりのデートだピョン!
鏡の前で、自慢の真っ白なツインテールの毛先を整える。
特製クリームを指先で丁寧に塗り込み、光沢を出す。
うさぎ耳は念入りに洗って、根元からふわふわ。
尻尾も丸く整えた。完璧だピョン。
彼の大好きな、白と黒の縞々ニーソックス。
白いミニスカートと、清楚なブラウス。
……ショーツも、もちろん縞々だピョン。
王都に来るまでは兎皮のラビットファーを着ていた。
でもアシヲぴょんが「可愛い服を着てほしい」と言ってくれて、
最近はこういうヒラヒラの服を着るようになった。
この生地はリーペぴょんが開発した特製布。
軽くて丈夫で、洗っても縮まない。
彼女も働きすぎだピョン。
みんな、少し無理をしすぎている。
今日は女神に「邪魔しないでほしい」とお願いした。
だから今夜は――
絶対に彼の子供を授かるピョン。
いつかアシヲぴょんが築く大国。
その跡取りを産むんだピョン。
ボクは空母《カケルダンジョン2》の甲板へと向かった。
海風が優しく吹く。
ショッピングモールは、灯りがきらきら輝いていた。
『も〜しもしカメよ〜カメさんよ〜』
黒い風呂敷から童謡が流れる。
スマートフォンだピョン。
リーペぴょんが作ってくれた、遠くの人と話せる魔導通信端末。
「も〜しもし〜アシヲぴょん〜、ボクもう待ち合わせ場所に着いたピョン!」
……沈黙。
「うん……うん……それは仕方ないピョンね。お兄さん達によろしくって言っておいてピョン……」
通話が切れる。
三か月ぶりのデートは、今日も延期。
彼は忙しい。
ダンジョンでのLv上げ。
厚生農林経済大臣という重責。
わかっている。
わかっているけど。
「寂しいピョン……」
スマホについたアシヲぴょん人形ストラップを、ぎゅっと握る。
甲板の上で一人立ち尽くす。
周囲では家族連れが笑い、恋人達が並んで歩く。
お腹が、ぎゅうぅと鳴った。
「……仕方ないピョン。ボクだけで食べるピョン」
レストラン《うさぎ小屋》の扉を開ける。
「いらっしゃいませ〜何名様ですか〜?」
フリルエプロン姿の兎魔人が迎えてくれる。
床にはクローバーが敷き詰められ、
木の温もりある空間に観葉植物。
兎人のボクには居心地が良い場所だ。
「予約したシロだピョン……相方が来れなくなって一人だピョン」
「かしこまりました。相方様の分のキャンセル料を頂きますが」
「はい……だピョン……」
キャンセル料。
現実は厳しい。
カラン、と扉のベルが鳴る。
「いらっしゃいませ……!? 万金札ゴールドの人!? キングカケル様!?」
店内がざわつく。
「あれ?シロじゃないか」
振り返ると、そこに立っていたのは――かけるぴょん。
「かけるぴょんもご飯食べに来たの?奇遇だピョンね」
自然に笑える自分に少し驚く。
女神からは「皆を洗脳している」と聞いていた。
最初は怖い存在だと思っていた。
でも今目の前にいる彼は、ただ穏やかに笑う青年だ。
「予約したけど、アシヲぴょんが来れなくなったピョン。代わりに一緒に食べてくれないピョン?」
かけるぴょんは一瞬だけ、遠くを見るような顔をした。
「ああ、いいよ。一緒に食べよう」




