ヤッちゃったなら誤魔化せばイィ!
「もう!
なに味方の村人を皆殺しにしてるのよ!
バカなの!?」
気がつくと俺は、また雲の上に立っていた。
目の前には、あのクソ女神。
軽い口調。
軽い声。
でも、その下にあるものが、
どんどん分からなくなってきている。
「お前が渡した即死スキルのせいだろうが!!
常時発動とか呪いかよ!?」
怒鳴りながら、
【触れたものを即死させる左手】を突き出す。
当然、
すり抜けた。
……霊体。
「ふぅー……仕方ないわねぇ」
女神は、
本当に面倒そうにため息をついた。
「じゃあ、
うっかり殺しちゃっても
ごまかせるスキルをあげるわ」
嫌な予感しかしない。
《チートスキル【洗脳】を習得しました》
……来た。
「洗脳かよ!!
怪しいスキルばっかじゃねえか!!
お前、実は女神じゃなくて
邪神なんじゃねえの!?」
その瞬間。
女神の表情が、
ほんの一瞬だけ――
冷えた。
ズドンッ!!
足元の空間を、
女神が蹴った。
衝撃が、
世界を通して伝わる。
雲の下にあった大陸が、
まるで発泡スチロールみたいに吹き飛び、
そのまま海に沈んだ。
……おい。
はじめての村、
あっちじゃないよな?
「邪神なんて、
雑魚と一緒にしないでくれる?」
女神は笑っている。
でも、目が笑っていない。
「……殺すわよ?」
もう何回も殺されてるんだけどな、俺。
というか今の言い方、
邪神を雑魚扱いしてなかったか?
嫌な想像が頭をよぎる。
まさか、
アメーバ(魔王)みたいに、
森とか洞窟とかに
邪神がウジャウジャいる世界じゃないだろうな……。
……絶対、会いたくねぇ。
「洗脳なんて覚えても、
村長に反射されるだけだろ!!」
あの反射。
あれに勝てるチートなんて、
存在しない。
「あら?
それなら大丈夫よ」
女神は、あっさり言った。
「洗脳の効果に
【反射されても反射し返す】
を付けておけばいいだけだから」
「……は?」
「ほら、
反射されたら、
もう一回反射し返すの」
「何だその理屈!?
そんなのでいいのか!?」
完全に、
子供の意地の張り合いだ。
げんなりする間もなく、
体が光に包まれる。
また、落とされる。
「ヤツだ!!
殺せぇぇぇ!!」
「うおぉぉぉ!!」
……声が、多い。
目を開けると、
そこには――
殺したはずの村人たちがいた。
全員、生きている。
【なんでも鑑定】を使う。
村人(勇者)Lv1
スキル:無限転生
スキル:〇〇
スキル:△△
……増えてる。
死んだからか、
Lvは1に戻っているが、
チートスキルが一人一つずつ増えている。
……最悪だ。
殺すほど、
強くなる世界。
「洒落にならねぇだろ……」
仕方ない。
やるしかない。
「くらえぇ!!
【洗脳】!!
お前らが殺されたなんて――
気のせいだ!!」
言霊が、
空気を震わせながら広がる。
村人たちの目が、
ゆっくりと濁っていく。
「あぁ……そうだなぁ……」
「気のせいだったわぁ……」
怒りも、悲しみも、
きれいに消えた顔で、
村人たちは散っていった。
……効いた。
俺は、
ようやく一息ついた。
その時だった。
「キサマァァァ!!
まだ、いたのかぁぁぁ!!」
空が、赤く染まる。
見上げると――
村長(大勇者)が落ちてきていた。
隕石みたいに、
大気圏を突っ切って。
全身が、
燃えている。
……執念深すぎるだろ。
「やるしかない!!」
村長が落ちてくる前に、
俺は叫んだ。
「くらえぇ!!
【洗脳】!!
村人たちが殺されたなんて――
気のせいだ!!」
言霊が、
村長を包み込む。
「洗脳じゃとぉ!!
こざかしいのじゃ!!
チートスキル反射じゃああ!!」
言霊が跳ね返る。
――が。
俺に当たった瞬間、
さらに跳ね返った。
「何ィイ!!
反射の反射じゃとぉ!?
そんなのズルいのじゃあ!!」
……やっぱり。
チートって、
子供の喧嘩だな。
言霊が、
再び村長を包む。
村長の目が、
ゆっくりと虚ろになった。
「あぁ……
そうじゃった……
気のせいじゃったわぁ……」
そのまま村長は、
勇者ビィームで削られた川へ落下。
――ドォォォン!!
大爆発。
地面が抉れ、
巨大な穴が開く。
横幅、
北海道くらい。
のちにそこは、
村長(大勇者)湖と
呼ばれるようになったという。
……知らんけど。




