村長(大勇者)は世界最強!?
老若男女の村人たちが、
一斉に――襲いかかってきた。
笑っている者はいない。
泣いている者もいない。
全員、同じ顔だ。
怒りと狂気だけを詰め込んだ、
壊れたような表情。
村人のくせに、
全員が【勇者の剣】を持っている。
地面を蹴り、
空高く跳び上がり、
重力を無視したような動きで斬りかかってくる。
剣からは、
激しい閃光を伴う斬撃が放たれ、
空気が裂ける音が、遅れて耳に届いた。
「うわあぁぁ!! 来るなぁぁ!!」
喉が、引きつった。
怖い。
強いとか弱いとかじゃない。
数と狂気が、怖い。
俺は反射的に目を閉じ、
左手を中心に、腕を振り回しながら走った。
何かに触れる感触。
温度。
重さ。
――そして、消える。
足元で、何かが崩れる音。
空気が、重くなる。
どれくらい走ったのか分からない。
ふと、
音が消えた。
あまりにも静かで、
逆に耳鳴りがした。
恐る恐る、目を開ける。
そこには――
息絶えた村人たちが、
折り重なるように倒れていた。
……山だ。
剣を握ったままの手。
空を見上げたまま動かない目。
さっきまで怒りに満ちていた顔。
「……」
喉が、ひくりと鳴った。
なんて事だ。
俺は、
村人を皆殺しにしてしまった。
今日、
地図から村が一つ消えた――
そう思った、その瞬間だった。
「キィイイ!!
キサマァ!! 貴様がやったのかぁぁ!!」
頭上から、
獣のような叫び声が降ってきた。
空を見上げる。
そこにいたのは――
【村長(大勇者)Lv5000】
血の涙を流しながら、
こちらを睨みつけている。
「ユルサン!!
許さんのじゃああぁぁ!!」
村長の体から、
怒りのオーラが噴き出した。
Lvが――
6000。
7000。
跳ね上がっていく。
やばい。
理屈じゃない。
本能が、逃げろと叫んでいる。
「くらえぇぇ!!
勇者ビィィム!!」
俺は、覚えたばかりの必殺技を放った。
額のサークレットの宝石が、
焼けるように熱くなる。
超圧縮された光が解き放たれ、
一直線に村長へ迫る。
「ふん!!」
村長は、
剣で――叩き返した。
はじかれたビームは、
遥か彼方の海まで地面を削り、
激しい火柱を上げる。
削れた大地に海水が流れ込み、
一本の川が生まれた。
……地形、変わってない?
「この程度で、
村長であるワシを倒せるとでも思ったか!!」
強い。
Lvだけなら、
俺の方が上のはずなのに。
でも、
そんな数字が無意味だと、
肌で分かる。
……いや、違う。
こいつが強いのは、
村長だからじゃない。
大勇者だからだろ!!
と、
心の中でツッコミを入れた。
その瞬間――
村長が、消えた。
次の瞬間、
俺は――空に打ち上げられていた。
「のじゃのじゃのじゃあぁぁ!!」
空中での猛攻。
剣が、
肉に、骨に、叩き込まれる。
体力が、
目に見えて削れていく。
このままだと――
死ぬ。
何もできない。
殴られながら、
どんどん高度が上がっていく。
雲を突き抜け、
空が黒くなり始めた。
宇宙に出る――
そう思った瞬間。
無重力。
村長の動きが、
ほんの一瞬、乱れた。
――今だ。
俺は、左手を伸ばした。
村長の体を、
掴んだ。
触感。
熱い。
硬い。
そして――生きている。
「触れたものを即死させる左手ぇぇぇ!!」
勝った――
そう思った。
だが、
村長はニヤリと笑った。
「チートスキル反射じゃぁぁ!!」
胸に、
衝撃が走る。
喉から、
血が溢れた。
意識が、
遠のいていく。
……ああ。
これは、
村長の持つチートスキル。
【チートスキル反射】
自分に向けられたチートスキルを、
そのまま跳ね返す能力。
はじめての村の村長が、
こんな無敵スキルを持っているなんて――
酷すぎる。
どんなチートでも、
反射されたら勝てないじゃないか。
薄れゆく意識の中で、
俺はそう叫びながら――
また、
死んだ。




