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異世界の住人が皆チート過ぎてチートがチートになってない件について【リメイク版】  作者: よしみん
第三章 王国建国

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紙幣を流通させよう!

「殺人アメーバのねり飴だよー!アワビ熨斗(きりぼし)1枚と交換するよー!」

「うり坊ウリオークの丸干しだよー!麻布があるなら交換だよー!」

「すまねぇ、うり坊欲しいのだが、土器しかねぇから、土器でもいいか?」

「麻布が無いなら交換しないぞ!さぁ邪魔だどっかいけ!」


俺達は、俺達が作ったカケルダンジョンの入り口に来ている。


入り口周辺には、ダンジョン探索に来た国民達が木の船を乗り付けて、それが大量に連結されて、小さな島の様になっていた。

踏み込むたび足場がわずかに沈み、別の場所が浮く。

子供が走ると全体が揺れ、誰かが慌てて柱を掴む。


ここでは、ダンジョンで採れたアイテムを日用品と交換する市場が開かれており、各々が必要な物を探してまわっている。

干し魚の匂い、湿った木の匂い、焦げた肉の匂いが混ざり、風に流れてくる。


ダンジョンを作っただけで、この様な市場ができるなんて、思ってもいなかったから驚きだ。

人は、集まる理由さえあれば勝手に町を作るものらしい。


しかし、様子をみるとトラブルも多くある様で


「おい!土器なんていらないって言ってんだろうが!」

「家には、ドングリばかりで、もう1年も肉を食べてねえ育ち盛りのチビ供がいるんだ!うり坊交換してくれよ!」


うり坊で麻布が欲しい男と、土器でうり坊が欲しい男が言い争いをはじめた。

互いに手を引かず、周囲の人間が半歩ずつ距離を空ける。


そう、この世界は物々交換で成り立っているのだ。干し魚やアワビや砂金や麻布が、貨幣の代わりになっているが、物品の種類があり過ぎて中々、交換が成立しない。

欲しい物はあるのに、価値が一致しない。

だから揉める。


そこで俺は紙幣を流通させる事にしたのだ。




「ワオッ!1万金(ゴールド)札にミスターリョーのフェイスがビューティフルにドローイングされてますにゃ〜」


「ワッチ、似顔絵は得意だポン!こっちの五千金札はエーコちゃんの顔で、二千金札はリーペちゃん、千金札はクルゥリー師匠で、五百金札はワッチで、百金札はミミちゃんだポン!」


「ミミは1番安いお金ですわっ」

「1番沢山使われるお金だから、皆に親しまれます」


得意げな五百金タヌー札に、文句を言う百金ミミ札をたしなめる千金札クルゥリー。

それでも、安い女だと思われますわっとかブツブツ言っている。

お金になるだけで凄い事だからね?


ちなみに、五十、十、五、一金札は作らなかった。前世の頃から要らないと思っていたからだ、小銭があったら財布が重くなるし、レジで小銭を渡す側も手間だし渡し間違える心配もある。

それならばいっそ全ての物を百円以上のポッキリ価格にしてしまえばいいと思ったのだ。


1980円なんて消費者の金銭感覚を狂わせるトリックは禁止して、より効率の良い流通を生み出す事こそが国全体の豊かさに繋がるのではないかと俺は思い、今回それを実行した。

まあ、経済って難しいから思う様に行くか分からないけどね。


「こんな紙が、砂金と交換できるのですか〜?」


エーコが、万金札を指でつまんで不思議そうに透かし部分をのぞいている。

光にかざして角度を変え、影が動くたびに小さく声を漏らす。


エーコはこの世界でうまれたから、紙幣はもとより、お金の事すら知らないのだろう。


「金庫に国中の金を集めたから、交換され過ぎて金が無くならない限り大丈夫だよ。最初はすぐ金に交換したがるだろうけど、前世の記憶がある国民(勇者)も沢山いるし、紙幣自体に価値がついて、国民は紙幣で何とでも交換する様になるよ」

「ほへぇ〜」


金は、ダンジョンの入場料で集めた物品を交換したり、水没した王都からも沢山回収できた。リーペに水から作らせる事もできるが、金相場が暴落するのでやめた。


「よし!原画もできた事だし、印刷開始だ!」

「「「お〜〜っ!」」」


コピー機に原画を入れて印刷ボタンを押すと、勢い良く紙幣が飛び出してきた。

手に取ると、ほんのり温かい。


「ワッチの描いたのが沢山出てくるポン!嬉しいポン!」

「メニメニマネープールでウォーターハザードしたいにゃ〜」

「ミミの顔がいっぱいです、何だか恥ずかしいですわっ」

「なかなか高性能なコピー機ですね」

「素敵な架様の顔がいっぱい!並べて寝室にかざりましょう!」


見た目は普通のコピー機だが、これは複製コピー機なのだ。

紙もインクも使わず同じ物が増える。偽札は作れない。むしろ作ろうとしたら爆発する。




そして、紙幣が国中に流通した。


「殺人スライムのねり飴、千金クルゥリーだよー!」

「うり坊ウリオークの丸干し、二千金リーペだよー!」


「すみません、うり坊の丸干し1つください」

「お?この間の兄ちゃんか!土器売れたんだな、良かったな!」

「はい!ちょうど二千金リーペで売れたので、何とか買うことができます!」

「そうか!良かったな!ほらよ、気をつけて持って帰って家族に食わしてやりな!」


男は何度も頭を下げている。

交換が一瞬で終わる。


俺は、泣きながら話し合っている2人を眺めていた。


紙幣作って良かったな。

紙幣は貧富の差もうむけど、人々が繋がり豊かになって行くのには必要不可欠な物だ。国民同士が支え合って、こんなチートな世界でもたくましく生きていける、そんな国にしていきたいな。


俺はそんな事を思った。


「あっ!あれ!1万金カケル札じゃねえか!?」

「あーっ!本当だ!!」


民衆が俺の顔に気づき騒ぎ出した。


あー、生きてる王の顔を紙幣にすると、こうなるのかー。


民衆達が、1万金カケル札の顔を一目見ようと集まってきた。

足場が揺れる。


ちょ!?こんなに集まったら足場の小船沈むから!


俺は逃げ出すが、民衆は追いかけてきた。仕方ないので、財布からコピーしたての、まだ温かい万金リョー札100枚の束を取り出してバラ撒いた。


「うおー!?キングカケル様が、万金カケル札をバラ撒いてくださったぞー!!」


「キングカケル万歳!キングカケル万歳!!」


歓声の中、俺は必死に水の上を走りながら逃げるのであった。




人々の喧騒の中、市場の端に止めた小舟で魚を売る漁師と客がいた。


「キングワカサギ10匹ほしい、これなら二千金リーペでいいか?」


「まいどありー!」



客が紙幣を出した手を見て、魚を手に持ち、札を受け取った手が止まった。


受け取った漁師が、札を持ったまま動かない。


「……どうした?」


「……軽い」


男は札を裏返し、表にし、また裏返した。

指で端をこすり、鼻先に近づける。


「これ、食えないだろ」


客が苦笑する。

「そりゃ紙だ」


「魚なら腹が膨れる。干し肉なら家族に分けられる」

彼は札を握ったまま言う。

「だがこれは、燃やしたら終わりだ」


周りが少しだけ静かになる。


「金と交換できる」

「今は、だろ」


湖の方を見る。

風で小舟がきしむ音がした。


「明日もそうか?」


しばらく黙り、札を見た。

それから、魚を差し出した。


まだ半信半疑の顔のまま、深く頭を下げた。


万金札の肖像を見た。

少し迷い、息を吐く。



「頼むぞ、王様」



札を握る手に力が入った。


紙幣で活気づく中、海上国家は水面で頼りなく揺れていた。

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