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異世界の住人が皆チート過ぎてチートがチートになってない件について【リメイク版】  作者: よしみん
第三章 王国建国

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佐藤Aの嫁のシロちゃん

空母の甲板に、白いものが転がっていた。


陽に焼けた鉄板の上、影もなく晒されている。

風にあおられて、細い髪がわずかに揺れた。


近づくと、それは人だった。

白髪のツインテール、赤い瞳。兎の耳と尻尾を持つ少女が、熱を持った甲板に横たわっている。


触れなくても分かるほど、体温が逃げている。

皮膚は所々めくれ、噛み跡が点々と残っていた。

乾きかけた血が甲板に黒く貼りつき、靴底にかすかに引っかかる。


……この状態で塩を塗ったのか。

エーコ、鬼だな。


「シロ! まってろ、今すぐ治してやるぞ!」


佐藤Aが膝をつき、リーペにもらった回復薬を慎重に塗り込む。

透明な液が広がるたび、裂けていた皮膚がゆっくり閉じ、赤みが引いていく。

鉄の匂いが、風に流されて薄れていった。


「あぁ……また助けられてしまいましたピョン」


シロの瞼が震え、焦点が合う。

視線が揺れ、しばらく空を見てから、ようやく佐藤Aに止まった。

そのまま、どこか遠くを見る顔になった。


「あの時も、ワニザメに食われてただろ。またワニザメに乗って来たのか? もうやるな」

「……はいピョン」


小さく頷く。耳も一緒に下がった。


佐藤Aの話では、空母まで来るためにチートスキル【モンスター詐欺】を使い、陸から一直線にワニザメを並べ、その上を歩いて来たらしい。

海面に一直線の“道”を作ったわけだ。


だが――


到着寸前、調子に乗ってスキルを解除し

「騙されてやんのバーカピョ〜ン」

と叫びながら着地しようとして足を滑らせ、そのまま海へ落下。


そしてワニザメの胃の中へ。

……アホだな。


昔、佐藤Aと出会った時も同じ状況だったらしい。

助けられたのがきっかけで結婚したとか。

学習していない。


二人が顔を寄せて話していると、エーコがそろそろと近づいてきた。

さっきまでの勢いが嘘みたいに小さい足取りだ。


「シロちゃんごめんね! 大人っぽくなってて気づかなかったよ!」

「あれ? エーコちゃん? エーコちゃんなの!? 久しぶりピョン!! 三年ですからピョン。村の皆にも、もう子供扱いされないよ。エーコちゃんならシロがお肉に見えても仕方ないピョン!」


抱き合う二人。

ぶつかった兎耳が揺れ、

エーコの腕力でシロの背骨がメキメキと音を立てる。

......大丈夫か?これ。



村?


「どこの村だ?」

「はじめての村ですピョン。村長の娘ですから」


……娘?


「兄が七人いますピョン」


村長そんなに子供いたのか。

……それにしても、エーコは昔から食い意地張ってたんだな。

残念すぎる......。





「こんなもんですピョン?」


「「「おぉ〜!」」」


モニターに映るダンジョン内では、魔物同士が戦い、Lvを上げ、対応する階へ移動していく様子が映っていた。

光点が動き、別の層へ消えていく。


「兄ちゃん、これはなかなか快適ですぜ!」


中に入ったおっさん達の声が、装置越しに少し遅れて響く。


「おぉ! もうLv2になったぜ!」

「佐藤A! 先輩より先にLvを上げるとは何事だ!」

「高橋! 気にするな! さぁ! ゴリゴリLv上げるぞ〜!!」

「「「オォーーーッ!!」」」


鈍器が振り下ろされるたび、アメーバLv1が弾ける音が続いた。

ドゴン、ドゴンと規則的に響く。


この調子なら、すぐ二階に行けそうだな。


安全を確認できたので、国民にも解放する事にした。

皆のLvが上がれば、そう簡単には死ななくなるはずだ。


湖面の向こうを眺める。

風が水面を揺らし、光が細かく砕けている。


王都を沈めた日の水音が、ふとよぎる。

……少しだけ、胸の奥の重さが軽くなった気がした。

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