必殺!?ポンポコダンク!
「きゃ〜っ!リーペちゃん頑張って〜!」
「ハッハッハッ!この鉄壁ディフェンスを突破できるかな!?」
空母の広大な甲板。
潮風の中、俺たちはなぜか――
バスケットボールをしていた。
カケル学園・特設体育祭。
俺+四天王チーム
VS
おっさん勇者チーム。
エーコは強すぎるので出場禁止。
代わりにチアリーダー姿で応援している。
……似合いすぎて腹立つ。
四天王は体操服。
タヌーとリーペの短パンから尻尾がでている後ろ姿が可愛い。
「スリーポイントシュートにゃ〜!」
リーペが華麗に跳躍。
放物線を描くボール。
「甘い!必殺!勇者肩車ァ!!」
おっさん五人が瞬時に縦列合体。
縦に五段。
一番上は――佐藤A。
……待て。
太ってて一番下っ端のAがなぜ頂点?
「取ったァ!!」
佐藤Aが必死に手を伸ばす。
その瞬間。
「甘いのはそっちポン!」
ボールが喋った。
ボンッ!!
煙。
ボールがタヌーに変身。
空中回転。
佐藤Aの手をすり抜ける。
「勝率100%......!ミミさんパスです!」
「キャッチ!ですわっ!」
リーペの背後から、実はボールを持って隠れていたクルゥリーが出現。
ミミへパス。
さらに跳躍したタヌーへ。
「ポンポコダーンク!!」
豪快なダンク。
だが。
「させるかァ!!」
佐藤A、肩車から飛び降りる。
必死のブロック。
「タヌーゥーキィーック!!」
空中で体をひねり、
タヌーは――
佐藤Aを踏み台にした。
ズゴォン!!
佐藤A、真下へ。
コンクリート甲板にめり込む。
静寂。
「……あれ?」
動かない。
――オイラは佐藤A。
本名、佐藤 葦男
前世は八人兄弟の末っ子だった。
兄貴たちのマドンナ的存在だった女の人と、
ちょっといい感じになっただけで。
兄貴たちに殺されかけた。
病室で、トドメを刺された。
転生した。
砂浜で、はじめての村の
村長の娘と恋に落ちた。
今度こそ、幸せに。
そう思った。
挨拶に行った夜。
布団の中に。
蛇。蜂。ムカデ。
村長が入れた。
命からがら逃げた。
娘を連れて。
食料が尽きた。
死にかけた。
その時、助けてくれたのが先輩勇者たちだった。
仲間に入れてくれた。
戦い方を教えてくれた。
特に佐藤B先輩は悩みを沢山聞いてくださり、多くのトラウマから立ち直らせてくれた。
恩は忘れない。
……あ。
嫁。
置いてきた。
迎えに行かないと。
光が見える。
ああ、また死ぬのか――
俺たちは、コンクリートの甲板にめり込んで瀕死状態の佐藤Aの治療を行っていた。
「トリートメント完了にゃ〜」
リーペが薬を塗る。
バキバキと嫌な音を立てながら骨が元通りになる。
「……うっ!?生きてる!?」
佐藤Aが目を開ける。
おっさん勇者たちが涙目で抱きついた。
「よかったぁぁぁ!」
正直ちょっとキモい。
「Lv1のままだと危険ですね」
クルゥリーが水晶を覗きながら淡々と言う。
「99%死亡でしたわ」
「調子に乗りすぎたポン、ごめんポン」
笑い声は戻った。
試合も再開できる。
でも。
俺は思う。
あの炎を見た勇者たちが、今ここでボールを追いかけている。
焼け落ちた城。
終わらない炎。
炎の向こうに立つ黒い影。
彼らはLv1だ。
こうなってしまったのも俺の責任だ。
「初心者用ダンジョンを作ろうと思う」
俺が言うと、全員が顔を上げた。
「おぉ〜〜!」
歓声。
未来への期待。
安全にレベルを上げられる場所。
死なない訓練場。
やり直せる世界。
それは、優しい計画に見える。
空母の上では、再びボールが跳ねた。
笑い声が、風に溶けていく。
どうかこの世界の平和が続きますように......。




