無理やり学園パートに突入だ!
「ウェアァーアイワズボーン、意味は、私達は何処の馬の骨ですか?にゃ〜」
「キャッチセールスノーサンキューノーモアー、意味は、我が家はお触り販売お断りします。そう絶対ににゃ〜」
四天王リーペが、タイトスカートのスーツ姿で尻尾をふりふりしながら黒板にカタカナを書いていく。メガネがキラッと光り、いつもより妙に教師っぽい。
――そう、今は2年P組の英語の授業中だ。
沈んだ王都の学園をイメージして、空母の内部に建設した特設校舎。
机も黒板も全部リーペ製だ。
学園といえば、恋ありライバルありの青春ラブコメの聖地。
俺が作らない理由がない。
……それにしてもリーペのやつ、アルファベット一文字も使ってないけど。
まだ教師もカリキュラムもないので、学校はフリースペースとして開放している。
P組には四天王とエーコがいるが、全員机に突っ伏して寝ていた。
入口では制服を貸し出していて、魔物娘も勇者もみんなセーラー服姿。
空母の中なのに、妙に海兵隊ごっこ感がある。
図書室には、魔帝艦隊の隠し部屋から発掘した魔帝の蔵書が並んでいる。
エロ本とラノベが山ほどあったせいで、最近やたら賑わっていた。
「ふむ……転校生あり、と水晶が言っています」
起き上がったクルゥリーがぼそりと呟く。
その直後。
ドンドンッ。
教室のドアがノックされた。
「フーイズヒーなのにゃ〜?」
「ミミですわっ」
リーペがドアを開けると、学園長のミミが廊下に立っていた。
さっきまで教室で弁当食って寝てたよな……瞬間移動か?
やがて戻ってきたミミの後ろには、見覚えのある五人のおっさん。
「今日からP組の生徒になる佐藤A&Bと、鈴木、高橋、田中君ですわっ」
「おう兄ちゃん久しぶりだな!」
「「「エーコ様!お久しぶりです!」」」
――おやじ狩り被害者軍団だ。
「ミミ、おっさん達が同級生とか嫌だからな。廊下でいいだろ」
「わかりましたわっ」
「ちょ、ちょっと兄ちゃん待ってくれ!これには訳があってだな!」
そこで気づいた。
……全員Lv1になってる。
前はLv10万あったはずの佐藤Bまで、完全に初期状態だ。
メイスのオタクがA。
即死灰皿を持ってたサラリーマンがB。
そしてなぜかBがリーダーで、Aは下っ端らしい。
「さっき冒険してたら、焼け落ちた城みたいなのがあったんだよ」
Aが一歩前に出て話し始める。
だが言葉がどこか頼りない。
「盗賊の仕業かと思って、生き残り探してたんだ。そしたらギューウンって音がして……気づいたら死んでてさ、ここで復活してたんだよ」
……あー。
完全に爆撃巻き込みだ。
Aの言葉が途切れる。
その隣で、Bが一歩前に出た。
さっきまで騒がしかった教室が、妙に静まる。
「……私達は、見たんだ」
低い声だった。
「空から何かが降ってきた。火じゃない……もっと重い何かだ。逃げ場なんてなかった」
拳を握りしめる。
「炎は終わらない。時間の感覚が消えて、ただ削られていく」
誰も茶化さない。
「そして見えたんだ……黒い角と翼を生やした影が、炎の向こうに立っていた」
息を呑む音。
「……あれは、戦いじゃない」
Bの声がさらに低く落ちる。
「処刑だった」
……やめてくれ。
半分くらい俺の作戦だから。
「きっと魔帝だ!焼けた城跡は罠なんだ!」
Bはそのまま頭を下げた。
「放っておいたら犠牲者が増える!力を貸してくれ!」
いや違う。
勇者を罠にかけてるんじゃない。
魔帝をハメてるだけだ。
でも説明したら絶対気まずくなる。
俺は軽く手を振った。
「じゃあウチらでパパッと倒しておくからさ。おっさん達は学校でゆっくりしてけよ」
「本気か!?」
「「よろしくお願いします!!」」
全員土下座。
……罪悪感が、ちょっとだけ刺さる。
俺は四天王とエーコを連れて、
魔帝討伐に行く“ふり”をして――湖水浴場へ遊びに向かった。
それにしても。
俺、魔帝より多い勇者を殺してる気がするな。
……まあ、バレなきゃ問題ない。
また、秘密がひとつ増えた気がした。
「……不思議ですね」
クルゥリーが水晶を覗き込み、小さく呟いた。
「占いでは――まだ“魔帝”は諦めていません」




