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異世界の住人が皆チート過ぎてチートがチートになってない件について【リメイク版】  作者: よしみん
第三章 王国建国

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とっても残念な初夜

俺は、結婚式の最中に意識を失って倒れた――らしい。


「らしい」というのは、正直なところ、どこからが現実でどこまでが夢だったのか、自分でも判然としないからだ。


暗闇に沈んで、浮かび上がって、また沈んで。

何度も水の中に潜っては、肺が焼けるように苦しくなって――

そのたびに、どこか遠くから誰かの声が聞こえていた気がする。


……どれくらい時間が経ったのだろう。


意識は霧がかかったみたいにぼんやりしていて、

頭の中で思考がうまく形にならない。


ただ、不思議と――


あたたかい。


そして、柔らかい。


胸元あたりに、ふわりとした重みを感じる。


「……スヤスヤァ……スヤスヤァ……」


かすかな寝息が、頬にかかる。


温度を持った吐息が、一定のリズムで触れてくる。


……近い。


かなり近い。


ゆっくり、恐る恐る目を開けた。


視界に最初に入ったのは、見慣れた天井――いや、少し違う。

どこか豪奢で、天幕のような布が垂れ下がっている。


そして、そのすぐ下。


俺の胸に顔をうずめるようにして眠っている、エーコの姿があった。


「…………」


一瞬、思考が完全に停止した。


状況を理解する前に、心臓が限界まで跳ね上がる。


「……ん……」


エーコが小さく身じろぎして、ゆっくりと目を開いた。


「架様……?

あ、気がつきましたか……?」


まだ眠気を残した声。

潤んだ瞳が、すぐ目の前にある。


近い。

近すぎる。


――こ、これは。


まさか。


噂に聞いた、結婚初夜というやつでは!?


俺の脳内で、警鐘とファンファーレが同時に鳴り響いた。


落ち着け。

落ち着くんだ、俺。


状況を整理しろ。


俺は王になって、結婚式をして、倒れて……

そして今、ベッドの上で、エーコと一緒に寝ている。


……一緒に。


しかも、肌の感触的に――


「……え?」


視線を下げた瞬間、俺は自分が何も着ていないことに気づいた。


息が止まる。


頭の中で、前世の知識という名の薄っぺらな情報が必死に引き出される。


えっと、こういう時は……

まずキスから?

いや、自然な流れ?

段階があったはずだよな?


思い出せ、俺!!

インターネット!!

深夜の知識!!


そんなふうに内心でパニックを起こしていると、


エーコが、少し恥ずかしそうに視線を逸らしながら言った。


「……あの……とても、良かったですよ」


「……え?」


思考がフリーズした。


今、なんて?


「アタイの……はじめてを、

架様にあげることができて……とても、幸せでした」


「…………え?」


完全に理解が追いつかない。


「今日は、その……女の子の日だったんですけど……

でも、なんとかなりましたし……」


待て待て待て待て。


俺の脳内で、状況説明用のホワイトボードが音を立てて崩壊する。


女の子の日?

それって……祝日?

子供の日的な?

いや違う、絶対違う。


じゃあ、つまり――


「ま、まさか……」


俺が気を失っている間に、

エーコが一人で全部済ませた……?


それって、そういう意味なのか?


混乱と衝撃で、言葉が出てこない俺をよそに、

エーコはベッドからそっと起き上がった。


「少し汗かいちゃったので……

海に飛び込んで、体を清めてきますね」


「え?」


止める間もなく、エーコは窓を開け、夜風の中へ。


一瞬、月明かりに照らされたその姿が、

やけに現実味を失って見えた。


次の瞬間。


ドパァンッ!!


豪快な水音が響き渡る。


……静寂。


波の音だけが、遠くで繰り返される。


俺は、一人きりになった寝室で、

しばらく動けずにいた。


状況が、ようやく脳に染み込んでくる。


……待て。


……俺、何もしてない。


何もしてないのに――


終わってる?


俺は、ゆっくりと天井を見上げた。


胸の奥で、何かがポキッと折れる音がした気がする。


「…………」


そして次の瞬間。


「オレの初体験返せぇぇぇぇぇ!!」


魂の叫びが、夜の海に向かって放たれた。


波は何も答えない。


ただ、どこか遠くで、

楽しそうな水音だけが聞こえていた。


……この世界、やっぱりめちゃくちゃだ。

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