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異世界の住人が皆チート過ぎてチートがチートになってない件について【リメイク版】  作者: よしみん
第二章 魔帝登場

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レッツ人間クレーンゲーム

湖の上には、まだ煙の匂いが残っていた。


夜の救命作業が終わったばかりで、甲板には濡れた勇者たちが毛布にくるまれて座り込んでいる。

ライトに照らされた水面には、ついさっきまで沈んでいた人影が、ゆらゆらと浮かび続けていた。


復活地点が湖の底にあるせいで、彼らは何度も蘇っては溺れ、また蘇る――そんな地獄を繰り返していたのだ。


「……これで最後か」


網での救助を終えた俺は、夜空を見上げた。

東の空が、わずかに白み始めている。


次は、根本的な解決だ。


復活地点そのものを――引き上げる。


 


夜明け。


朝靄に包まれた湖の中央で、巨大クレーンがゆっくりと動き始めた。


「そこそこ、もうちょっと右側です……あっ、行きすぎました」


俺の声に、リーペが操縦席で耳をぴくぴくさせる。


「オーケーにゃ〜、微調整するにゃ〜!」


甲板の端から伸びるワイヤーの先には――エーコ。


極太ワイヤーでしっかり固定され、クレーンのフック代わりにぶら下がっている。


鉄のフックではあまりに時間がかかりすぎる。

少しでも早くこのループから解放しないと、俺の精神が先に折れそうだった。

だから、Lv1000億超勇者パワーのエーコに任せることにしたのだ。


……我ながら、とんでもない作戦である。


「位置、確定しました」


黒髪のクルゥリーが水晶を覗き込み、静かに告げる。


「復活神殿、真下二十メートルです」


「よし、下ろしてくれ」


「アイアイニャ〜!」


ワイヤーが緩み、エーコが湖へと沈んでいく。


「ぶわっ!冷たいよぉ〜!ブクブクッ!」


水面が閉じ、波紋だけが広がった。


 


数十秒後。


緊張の沈黙の中、ワイヤーがぴんと張る。


「……掴みました。上げてください」


クルゥリーの声が落ち着いて響いた。


「巻き上げ開始にゃ〜!」


クレーンが唸り、ゆっくりと持ち上がる。


やがて、水面の下に巨大な影が現れた。


石造りの神殿。


その周りには――


「……うわっ、キモッ!」


思わず声が出た。


エーコと神殿に、勇者たちがびっしりとしがみついていたのだ。

助けを求める本能なのか、まるで海藻のように絡みついている。


「わぁ〜!離れてよぉ〜!!」


水面を破り、エーコが顔を出す。


神殿は無事だが、勇者の群れまで一緒に引き上げてしまったらしい。


 


甲板に着地した瞬間、エーコがよろよろと俺の方へ歩いてきた。


「架様ぁ〜!キモかったよぉ〜!」


水草を頭に乗せたまま抱きついてくる。


「……無茶させたな。ありがとう」


頭を撫でると、彼女は少しだけ笑った。


 


その頃、救い上げられた勇者たちが次々と目を覚まし始めていた。


「げほっ……ここは……?」

「あれ?息できる……?」

「また死ぬかと思った……」


混乱する彼らに、リーペが得意げに胸を張る。


「ここは、ミスターカケルの水上移動国家・カケル王国にゃ〜!」


……相変わらず意味不明だ。


だが勇者たちは、状況を理解した瞬間――涙を流し始めた。


「お前が……助けてくれたのか……?」


頷くと、堰を切ったように声があがる。


「ありがてえぇぇ!!」

「何度も窒息して……もう無理だと思ってたんだ!」

「命の恩人だ……いや、魂の恩人だ!!」


次の瞬間。


どこからともなく集まった勇者たちに、俺は持ち上げられていた。


「うおっ!?ちょ、待て!」


「キングカケルについていくぞー!!」

「「「おぉーーーっ!!!」」」


朝日が湖面に反射し、歓声が空へ響く。


……助けたのは確かに俺たちだ。


でも、この湖を作った原因が、俺と村長だという事実は――


まあ、墓場まで持っていこう。


 


甲板の端では、引き上げられた復活神殿が静かに朝日を浴びていた。


水滴が光り、まるで新しく生まれ変わったみたいに見える。


夜の絶望から、夜明けの再生へ。


世界は、少しだけまともな方向に動き始めていた。

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