ハーレム奪っちゃいました
エーコはLv1000億に到達した。
淡い光が彼女の身体を包み込み、湖面に反射する。
――村娘(勇者)から、村娘(超勇者)へランクアップ。
装備していた勇者の鎧が、音もなく形を変え、より滑らかな銀の装甲へと進化する。
どこか遠く、世界の片隅では、まだ誰の手にも握られていない勇者の剣が共鳴し、超勇者の剣へと変質したらしい。
「やった〜!魔帝を倒しました〜!」
満面の笑みで跳ねるエーコ。
「……ま、まじかよ」
俺は思わずつぶやく。
気づけば、彼女は俺よりはるかに高みに立っていた。
「「「ハーレム様〜!」」」
背後では四天王娘たちが倒れた魔帝に駆け寄り大騒ぎしているが、そんな光景は半分しか頭に入ってこない。
――このままじゃ、俺の立場がない。
よし。
あれをやるか。
俺たちは空母の甲板に立ち、ゆっくりと湖の景色を眺めていた。
風が髪を揺らし、遠くで砕ける波の音がかすかに聞こえる。
『ミスターカケル、まもなく目的地にアライブするにゃ〜。オペレーションルームへカムバックにゃ〜』
スピーカーからリーペの陽気な声が響く。
俺はエーコと、元・魔帝四天王の三人を連れて司令室へ向かった。
巨大モニターに映し出されたのは――半分だけ残った魔帝城。
湖誕生の衝撃で東側が丸ごと消え、断崖のような断面がむき出しになっている。
その下では水面が静かに揺れていた。
「……世界の面白い城ランキングとかあったら、絶対入るなこれ」
「東側でスリープしてたタヌーとミミはバーニングだったにゃ〜」
「ハーレム様、右半分だけ焦げてて面白かった」
「ワッチはタヌキの丸焼きになったポンよ?」
「ミミもエルフの丸焼きだったですわっ」
「……丸焼き?」
エーコが妙なところに反応している。
仲間を食べ物扱いするな。
司令室には四天王たちが集まっていた。
金髪ウェーブに猫耳、テンション高めのゴールドキャット・リーペ。
悪魔角と羽を持つ、小麦色の肌のクルゥリー。
語尾にポンを付けるタヌキ耳のタヌー。
そして銀髪ロングの小柄なダークエルフ、ミミ。
――今は全員、俺の側だ。
理由は単純。
戦うのが面倒だったから、洗脳した。
魔帝が倒れたあと、四人同時に相手する未来はさすがに御免だったし、どうせなら……という欲もあった。
それに、艦隊には二百人近い美少女部隊がいたので、ついでにそっちもまとめて支配下に入れてある。
「トマホークミサイル、全弾ファイヤー準備コンプリートにゃ〜!」
「ハーレム様復活まで、あと11分です」
俺たちが艦隊でここへ来た理由は一つ。
魔帝のチートスキル――【経験値1億倍】。
死んでLv1になっても、少し狩ればすぐLv1兆近くまで戻るという、ふざけた能力だ。
もし強化版の洗脳なんて覚えられたら、
俺が“劣化版”に落ちる未来が見えてしまう。
だから。
今回は正面勝負じゃない。
ハメ技だ。
「よし、撃て」
「トマホークミサイル、ファイヤーにゃ〜!」
「ふふ……ハーレム様、覚悟です」
「慌てる顔が楽しみポン」
「ミミはワクワクドキドキですわっ」
艦橋の外、発射口が一斉に開く。
次の瞬間――
無数のミサイルが空へ舞い上がった。
尾を引く白煙が、青空にいくつもの線を刻む。
それらは弧を描きながら、
半壊した魔帝城へと降り注いでいった。
轟音。
光。
衝撃波。
湖面が震え、城壁が崩れ落ちる。
俺はその光景を静かに見つめた。
この選択が、
後に世界を滅亡へ導く引き金になるなんて――
この時の俺は、まだ知らなかった




