黒船ハーレム来航
「くっ……黒船じゃ~~~っ!!」
「この世の終わりじゃ~!!」
「いや違う!あれは蒸気船じゃない、原子力船だぁぁーっ!!」
浜辺のど真ん中で、妙にテンションの高い三人組が大はしゃぎしていたが、正直それどころではない。
周囲では水着姿の人々が悲鳴を上げ、湖水浴場から森へと一斉に逃げ出していた。
「魔帝が襲撃に来たぞー!」
「逃げろー!死んだら復活場所は湖の底だぞー!!」
転生者らしき連中が、半泣きで叫びながら走り去っていく。
どうやら湖周辺では、死亡すると湖底に沈んだ王都で復活してしまうらしい。
そして水中で即窒息し、復活と窒息を延々と繰り返す――そんな地獄が待っているとか。
……王都沈没に俺が関わっている件は、墓まで持っていく秘密だな。
俺とエーコは慌てて湖の家の裏へ回り、木陰に身を潜めた。
水面を揺らしながら近づいてくる艦隊は、現実感が薄れるほど巨大だ。
やがて空母らしき艦から小型ボートが降ろされ、砂浜へ一直線に向かってきた。
男が一人、女が四人。
ボートは砂を巻き上げながら突っ込み、先端がガコンと開く。
まるで戦闘上陸だ。
……なのに全員、水着。
男は黒い角と翼を生やし、赤い海パン姿でサングラス。
金髪のイケメンだが、右半身だけ焦げたように黒く、髪も翼も半分チリチリだ。
戦場帰りというより、日焼け失敗したバカンス客みたいな風貌だった。
そいつは湖の家の前まで歩いてくると、勝手にビーチチェアへどっかりと寝転がった。
そして、背後から小柄な美少女が近づく。
猫耳付きの金髪ウェーブ
低身長に不似合いなナイスバディで輝く笑顔で口から覗く八重歯が特徴的だ。
彼女が手にした砂を差し出すと――次の瞬間、それは鮮やかなトロピカルジュースへと変わった。
鑑定結果が脳裏に浮かぶ。
【なんでも作っちゃうもん】四天王リーペ Lv8000。
……なるほど。
あの艦隊、まさか全部こいつの生成物か?
残りの三人の少女も男の周りに集まり、まるでリゾートの中心人物みたいに囲んでいる。
微妙な距離感はあるが、それでも十分すぎるほどのハーレム感。
俺の胸の奥で、謎の敗北感がじわりと広がった。
(くそっ……こっちはヤンデレ一人旅だってのに……!)
心の中で叫んでいると、今度は黒髪ロングの女性が前へ出た。
悪魔の角と翼、小麦色の肌のエキゾチックなお姉さんだ。
彼女は丸い水晶を掲げ、その中をじっと覗き込む。
「例の男……この近くにいますね」
低く落ち着いた声。
水晶が淡く光り、空気がわずかに震えた。
【なんでも占術】四天王クルゥリー Lv2000。
……嫌な予感しかしない。
「そうか……これで我が城を半分も湖に沈めたバカに仕返しができるな」
男がサングラスを外し、ゆっくりと立ち上がった。
――完全に俺じゃん。
恐る恐る鑑定すると、表示された文字列に思考が止まる。
魔帝ハーレム Lv1兆。
いくらチートが当たり前の世界とはいえ、桁がおかしい。
名前が【ハーレム】とかツッコミどころ満載なのに、恐怖で言葉が出ない。
「ハーレム様、そこです」
クルゥリーの指先が、まっすぐこちらを示した。
やばい。
視線が合った瞬間、空気が裂けるような圧力が押し寄せる。
魔帝ハーレムの翼がばさりと広がり、砂浜の空気が一瞬で重くなった。
「キサマかぁぁっ!!
貴様が我が城を半分、湖に沈めたバカかぁああああ!!」
怒号と同時に、凄まじい闘気が波紋のように広がる。
砂が舞い上がり、水面が震え、遠くの艦隊の影さえ揺らいだ。
隣でエーコがぎゅっと俺の手を握る。
「……大丈夫だよ。」
小さな声。
なのに、不思議と心が落ち着いた。
俺はゆっくり息を吸い、迫り来る魔帝を見据える。
……せっかくの水着回、
こんな形で終わらせてたまるか




