楽しく苦しいLv上げ
「架様ぁーっ!助けてください!アッー!!」
エーコは、アメーバ(魔王)Lv99の半透明の体に取り込まれ、必死にもがいていた。
足をばたつかせるたび、粘液がぬちょりと音を立てる。
「あと少しだ、もうちょっと耐えろ!頑張れ!」
俺は少し離れた場所から、
粘液まみれで徐々にベトベトになっていくエーコを観察していた。
「架様ぁー! ゴボゴボッ!助けてぇー!ガボガボッ!
……あっ、なんか……気持ちよくなってきたかも……」
――危ない。
エーコの目が虚ろになり、
窒息しかけて意識を手放そうとしている。
そろそろ潮時だな。
「おりゃっ!」
俺は【触れたものを即死させる左手】で、
アメーバの表面を軽く撫でた。
次の瞬間――
アメーバはぶちゅりと弾け、四散した。
エーコは床に転がり、
大量の粘液と共に解放される。
「げほっ、げほっ!!
ひどいですよ〜!
ハードプレイをするにしても、もう少し優しく、段階というものが……!」
「いや、そういう趣味でやらせたわけじゃない」
念のため鑑定。
――Lv40。
「ほら、力がみなぎってる感じしないか?」
「えっ……?
あ、ほんとだ……体が軽い……!
これって、アメーバ窒息健康法ですか?」
「絶対に流行らせるな。違う。レベルが上がったんだ」
「でもアタイ、一度もアメーバに攻撃してませんよ?」
そう。
エーコは攻撃していない。
だがこの世界には、
回復経験値や被弾経験値という概念がある。
回復役や盾役は、
攻撃しなくても経験を積めるのだ。
エーコの場合――
被弾 → 自己回復 → 被弾 → 自己回復。
しかも、最後に魔物を倒したのは俺。
経験値は、きっちり入る。
「よし、この調子で一気にレベル上げるぞ」
「ひゃあ〜っ!?」
俺はエーコを、次のアメーバに向かって投げた。
「……Lv3000か。よく頑張ったな」
Lv100まではアメーバ地獄で耐久レベリング。
だが途中で、エーコが【愛の鉄槌】で普通に殴り倒せることに気づき、
最終的には周囲のアメーバを狩り尽くすことになった。
「ふぅ〜疲れたぁ〜。抱っこして〜」
「これで大魔王クラスでも余裕だな」
俺は抱きつかれたまま、焼き魚をかじる。
エーコにも一匹渡すと、
背中に張り付いたまま、もぐもぐ食べ始めた。
その時。
「おうおう!
そこのアベック、いいもん食ってるじゃねぇか〜」
背後から声。
振り向くと――
小汚いおっさんが、五人。
……また、面倒ごとの予感しかしない。




