チート過ぎる世界へようこそ!
どうも月末よしみんです。作家名から苗字を外して「よしみん」に代わりました。10年前に書いていた小説を読みやすく加筆して再掲載しました。当時流行りだったチートものです。日本神話ベースの少し珍しいギャグ小説で気に入っています。
リメイク前と同じで60話くらいで完結する予定ですので、もしよかったら読んでみてください。
――貴方は死にました。
勇者として異世界に転生していただきます。
白い空間に、やけに事務的な声が響いた。
広さも、奥行きも分からない。
音だけが、均一に反射している。
転生の特典として、チートスキル
【無限転生】
【なんでも鑑定】
【経験値一万倍】
を授与します。
一瞬、理解が追いつかなかった。
頭が言葉を噛み砕くより先に、
胸の奥から、熱いものが一気に込み上げてくる。
――勝った。
「よおっしゃあぁぁぁ!!」
叫んだ声が、白い空間に吸い込まれていく。
「夢にみたチート無双でハーレム作って!
いちゃいちゃしながら!
ついでに魔王を倒すぞー!!」
ここまでは、知っている。
ネットで何度も読んだ、安心安全のテンプレ展開。
つまり――
完全勝利ルートだ。
俺、高天原 架は、
夢と希望をこれでもかと詰め込み、
はじめての村の外へ足を踏み出した。
空は青く、
草原は風に揺れ、
視界の端で、半液状の何かがぽよん、と跳ねた。
――ああ、雑魚だ。
RPG的に言えば、経験値用。
最初の一撃で消える運命のモンスター。
俺は女神から授かった最強装備、
【勇者の剣】と【勇者の鎧】を誇らしげに構え、走り出す。
「アメーバァァァ! 死ねぇぇえ!」
剣を振り上げた瞬間、
視界の端に、文字が浮かんだ。
《アメーバ(魔王) Lv99》
……は?
魔王?
今、魔王って言った?
理解が追いつく前に、
世界が、ぐにゃりと歪んだ。
次の瞬間、
俺は――アメーバの中にいた。
視界が溶け、
音が濁り、
鎧の重さが、急に意味を失う。
ぬるい。
生ぬるい。
あ、これ――
死ぬ。
消えゆく意識の中で、草原が見えた。
そこには、何十匹ものスライムがいた。
《スライム(魔王)》
《スライム(魔王)》
《殺人アメーバ(大魔王) Lv999》
……おかしいだろ。
そして、俺は死んだ......。
「どうなってるんだよ!? これはぁぁ!!」
気づくと俺は霊体になり、雲の上で叫んでいた。
足元はふわふわしているのに、
やけに落ち着かない。
目の前には、見覚えのある――
いや、理想的すぎる女性が立っていた。
「アメーバ相手に負けるなんて、情けないねぇ」
声が、軽い。
人の死を扱っているとは思えないほど。
「アメーバ(魔王)だからだよ!!
なんで最初の草原に魔王が大量にいるんだよ!
大魔王までいたし!!」
女神は、やれやれと肩をすくめた。
「まあ、すぐ死ぬのは想定の範囲内だから大丈夫。
そのために【無限転生】を授けたんだから」
ぞくり、と背中が冷えた。
この人――
人の死を、イベントとして処理している。
「無限転生はね、何回死んでもやり直せる素敵スキルなのよ?
しかも転生のたびに、新しいチートスキルを一個プレゼントしちゃいまーす!」
……嬉しくない。
「だから聞いてんだよ!!
なんで魔王が草原にウジャウジャいるんだよ!!」
「ああ、それね」
女神は、まるで世間話でもするみたいに言った。
「魔王側の転生女神がチートしてきたから、
私もチートで対抗したの。
そしたら向こうがエグいチートをしてきたから、
さらにエグいチートで対抗して……
気づいたら、こんな世界になってた」
……小学生か。
病原菌を殺そうとして薬を盛りまくった結果、
最強のウイルスが生まれた、
そんな話を思い出す。
「こんなのクソゲーだろ!!
いや、ゲームじゃねぇ! 現実だぞ!?」
「ふふっ」
女神は、心底楽しそうに笑った。
「気づいた?
あなたは勇者という名の私の奴隷。
魔王が全滅して、向こうの女神がやる気を失うまで――
一生、働いてもらうわ」
頭の中が、真っ白になった。
「安心して。
ちゃんと魔王も一撃で倒せる、最凶のチートをあげるから」
その顔――
大好きだった芸能人の姿をしているせいで、
余計に腹が立つ。
俺は、衝動のまま拳を振り上げた。
「ふざけるなぁぁぁ!!」
当然、当たらない。
霊体の俺は、雲の上でシャドウボクシングをする
ただの痛い人になっていた。
女神が、俺の頭に手をかざす。
空気が、
ぴたりと止まった。
体が、淡く光り始める。
頭の奥が、じんわり熱い。
視界が白に染まっていく中、声が響いた。
《チートスキル【触れたものを即死させる左手】を習得しました》
……名前、不吉すぎない?
そんなことを考えながら、
俺は二度目の転生へと、静かに落ちていった。
次回、即死の左手が炸裂します。
お楽しみに(๑′ᴗ‵๑)




