特に良くなく悪くない日々
何とか5歳になりました。
朝から何時ものルーティンを行い、エリリ義母さんとカインに会いにいく。
今日は、義母さん達も調子が良いみたいで安心する。以前、二人を判別するためにツインテールを止めるリボンをプレゼントした。緑色と青色とで渡してみたのだけれど・・・同じ日で付け替えるのか?揶揄われているだけなのか?
朝、青色のリボンを付けたエリナ義母さん(自己申告)を昼に呼んだらリリナ義母さんになっていた。よう分からないので、エリリ義母さん(緑)とエリリ義母さん(青)と判別することにした。
「「シンガ、来年の事はどう考えてますか?」」
2歳になったカインと遊んでいると、ベッドで上半身を起こした、エリリ義母さんに声を掛けられた。来年の事とは6歳になるので王都にある貴族学校に行くのか?との事だと思う。あれから、俺なりに勉強して自分の国の名がロマネス王国だと覚えた。王都の名もロマネスだ。
6歳になると王都ロマネスにある貴族学校にて勉強が出来る。1年間は授業料・寮・食費など無料になっている。
理由は6歳になればあの馬鹿・・根性悪から貰ったスキルが分かる儀式を聖王・聖女協会で受ける事が出来る・・・がお金がかかる。
そのせいで、昔は貧乏貴族にすごいスキル持ちが生まれていても儀式を受けないために世に出ない事があったらしい。
その事を重く見た、当時の王様ピノ・ノワール・ド・ロマネスが国の財産となる人材を失うのは国の損失と声を上げ、学校を設立し通いやすいように1年間の無償化と入学時に儀式をタダで受けれる仕組みを作った。ありがたいね。
多分、エリリ義母さんは通うことで俺が嫌な想いをするのを心配してくれていると思う。王都にはもちろん、2種族が居るからね。
「貴族学校に通うつもりです。1年間の食費タダは魅力的ですからね。(笑)それに、使い魔の事やスキルも知りたいですから。」
出来る限りの笑顔で返事をする。2人が少し寂しそうな表情を見せる。
「「シンガ。王都には危険もあります。出来れば、私達の側に居ては貰えませんか?カインも喜びますよ。」」
ああ、怖い。
俺は周りから憎悪を向けられる事が多く、ある意味慣れて来ている。ん~麻痺しているが正しいか?。そんな俺にエリリ義母さんとカインは普通に接し、心配迄してくれる。カインの母親としての打算があるかもしれないがそれでも嬉しい。
だからもし、エリリ義母さんやカインに何かあったら、それが、俺が原因なら・・・もともと、俺の事が嫌いな世界だ、あの根性悪に嫌らせを・・前世の知識で何が出来るかな・・・
「にいちゃ、お顔こわい、メ!」
カインの声で意識が戻る。正面に視線を向けると。カインが左手を腰に当て右手を顔の横で振るって俺を指差す。表情は出来る限り怒っているが可愛い以外の何者でもない。天使が居る・・・・いやこの世界で天使は良くないからダメだ。ややこしい。
「ごめんね。カイン。ほら、僕は怖い顔してないよね。」
両手で自分の頬っぺたをムニュムニュとして、さらに変顔を披露する。
「きゃはは!にいちゃ、お顔がヘン・・」
「「ふふふ。シンガ。お顔が面白い事になってますよ」」
3人の笑い声が部屋に響く、幸せな時間が過ぎていく。昼寝の時間になり部屋を出て訓練をしに中庭に移動する。
【シンガ。義母達の心配だがね。お前さんの事だけを心配している訳じゃあないって事はわかっているかね】
中庭でストレッチをしていると普段は集中の妨げになるからと黙っているレピに珍しく話かけられた。
「もちろん、分かっているよ。カインの事が心配なんでしょ?そんなの、母親なら当たり前だよ。」
レピに返事をしたが何が気になって話かけられたかは後で聞くとして、息吹を行い型稽古を始める。
最近はお婆ちゃんの型稽古をイメージしてそれに重なる様に、筋肉の動きをも真似出来るようにゆっくりと動く。その後は仮想敵で戦い殺されるのを繰り返す。
「ふひぃ~、当たり前だけど。未だ、背中は遠いな。改めて凄さが分かるよ。」
休憩と水分補給する。
【なあ、シンガ。前にも聞いたがね。お前さんの仮想敵は誰だ?後、お前さんが練習する武術は誰に教わった?産まれてから今日までお前さんに教えた人物は居ない。以前から気になっていたんだが、答えてもらっても良いかね。】
は?今さら何言ってんだと思ったが・・・良く考えるとレピは俺が転生者で前世の知識があるのを知らない。武術の事も話してなかった、さてどうするか?
「部屋に戻ってからで良いかな?さすがに、外では話せないよ。」
シャワーを浴びて部屋に戻る。お互いに見つめ合い時間が過ぎるがいつまでもこうしている訳にはいかないな・・・仕方ない。
「先ず、質問の答えなんだけど・・・分からないが答えになる。」
俺の言葉を聞いてレピの視線がきつくなる。文句が出ないのは俺がまだ何かを話そうとしているのを感じてだと思うので続ける。
「仮想敵は目の前に黒い人型が現れる。その、体系から多分、女性ではないかと思っている。で、武術はその黒い人型の動きを真似しているだけなんだ。・・・・だから、答えは分からないになるんだよ。何処の誰で、なぜ僕に見えるのかが分からないからね。」
俺の説明を聞いて納得しているのか分からないが視線の鋭さは変わっていないから疑われてはいるみたいだ。
【なるほど、お前さんの説明は分かった・・・ただね。お前さんは知り合いじゃないかと思わせるような言動があるんだよ。勝った事がなかったや改めて凄さが分かるなんてのは、知らない存在に言う言葉かね?】
ちっ、やってもうてるわ。詰みかこれは?・・・いや、まだや!あの見た目は子供、中身は高校生でも間違って名前呼んでも、くろう、やなんちゃらとごまかせて来てる。いける!いけるで!俺かて見た目は子供、中身は転生者や。降りてこーい・・・アイデア⁉
「それなんだけど・・・恥ずかしいんだけどさ。最初は怖かったんだよ、だって黒い人型が現れたんだから。でね、大聖女スズカの話で武術が得意だったのは有名でしょ?それから、あのスズカから秘術を教えてもらってる僕的な妄想と言いますか願望と言いますか・・・ね」
深呼吸の後、意を決したように俯き加減に頭を掻きながらレピに告げる。
少しの沈黙の後。
【まぁ、なんだ。お前さん・・・その・・何と言うか・・一度は通るから・・まぁ・・上手く言えないんだが・・ほどほどに・・と言うか・・そうだな・・ああなんか安心した。シンガにもそんな所があるんだな(笑)】
レピの視線が柔らかくなるのを感じて、心の中でガッツポーズをする。
「でも、確かに。レピの言う通り、外での妄想で話しは控えるよ。心配かけてごめんね。」
今日まで大分と気になっていたんやね。たしかに、俺も仕事仲間が推し活してる所を目撃した時も普段のストイックな所を見てたから別人やろなっと確認ためらって1年位聞けへん事あったしな。
【しかし、お前さん。かの大聖女スズカから武術を教わるとは、なかなかに将来が楽しみだな(笑)剣術も凄かったからそちらも教えて貰えば良いと私は思うがね。(笑)】
レピに言われて考えるが剣術はお爺ちゃんなんだよね。果たしてイメージで現れてくれるのかな?しかも、この世界に日本刀があれば助かるんだけど、弘法は筆を選ばずと言える程、俺は成通してないからな・・・木刀を作って練習するか?
「そう言えば、さっきレピがエリリ義母さんの事を言ってたけど、何かあったの?」
こちらも先程、言われた事が気になったので聞いてみる。
【ああ、あれかね。余りにもシンガを心配している様子が逆に不自然に思えてね。義母からしたら、お前さんは男爵家を継ぐ人間だ。カインの事を考えてもお前さんは邪魔な存在で、行かせない事で自分の地位も安泰になると考えないかね?】
レピの説明になるほどと思う。確かに、捉え方によってはエリリ義母さんの王都に行かないでは・・・この世界では、行かない=スキルを知る気が無い=男爵家を領地を継ぐ気がないと世間に知らしめる事になるからね。つまり、カインが次期男爵家当主と宣言するに等しいからなぁ。
「でもさ、行かないと。エリリ義母さんが僕を亡き者にしたとか男爵家の乗っ取りの噂を立てられるよ?僕の場合は、裏では喜ばれても表向きは確か、処罰の対象だよね?」
過去に、義母と本妻による跡目争いで暗殺等が増えて、場合によっては家が取り潰しとなった為、今では義母の権力は低く、本妻の子が当主となった際は、実子を置いて出家するかメイドや教育係り等で働くかになっている。
だから、エリリ義母さん身体の状況で考えるとカインが男爵家を継いでもらうのが一番良いと言えるだろう。まぁ、うちの場合は俺が継ぐ気がないので無駄な心配と言えるが未だ伝えてないしね。
【確かに、シンガの言う通りだな。だが、どおするね?どちらにしても問題になるが・・・ただ、私の勘だがね。お前さんなにか考えがあるんだろう?】
レピに含み笑いの表情で(表情ホンマ豊かやな)見つめられて、フッと思い出す。
(ああ、忘れてた。レピに俺が男爵家を継がないの伝えてないな・・)
意外と、レピに今後の事も伝えてないのを改めて思い出す。
「あのさ、レピ。僕はね、男爵家を継ぐ気は無いんだ。行商人として世界を見て回りたいんだよ。だから、エリリ義母さんとカインの事は大丈夫さ。心配かけてごめんね。」
僕の言葉を聞いてレピが満面の笑みを浮かべ、バシンと尻尾が床を叩く音が響く。
【そうか、シンガ。とりあえず、話があるから床に正座しろ。いやなに、怒ってなどいないさ?ただね、今後の事もある。意思の疎通は必要だし、いい機会だ。私はね、お前さんの使い魔であって長年連れ添った夫婦じゃないんだよ。(怒) 昔の老夫婦が、おい、それ、で通じる様には未来永劫来ないんだ。事細かくに話す必要は無いが、大筋に至る事は話しておいてくれないかね】
めちゃめちゃ怒ってはりますやん。激おこですやん。まぁ、これについては俺が悪いしな。素直にあやまっておこう。
「ごめんなさい。学園から戻ったら言うつもりだったんだよ。学園で世界の一端に触れたら考えも変わるかもしれないだろ?それは恥ずかしいかなぁって思ったのです。・・・ごめんなさい。」
ワタワタと謝罪を述べてみる。実際はどんな感じでも、俺が男爵家を継ぐつもりはないのは変わらないがレピはどう思うだろ?男爵領に居れば少なくとも後、数年は貧しくとも生きて行けるだろう。
たとえば、カインが他家に婿入りすれば援助もあり得るかもしれない。そうすれば、さらに数年、十数年は俺は生きる事が出来るかもしれない。けどさ、それってただ、生きてるだけなんだよな。
【まあ、シンガなりに考えていたのはわかった。ただね、私はお前さんの使い魔なんだ。もう少し、信頼して相談をしてもらいたいね。】
拗ねた様に話すレピも可愛い、何て思っていたりする。今日はこのまま、1年前から始めたスキルの熟練度を上げる訓練をする。
スキルは使えば使う程熟練度が上がり。俺の場合だと、アイテムボックスは消費MPは変わらず容量が増えた。最初はウエストポーチ位の容量が今ではリヤカー位になった感じがする。
鑑定は同じく消費MPは変わらず見える内容が増えた。最初は名前だけが少しづつ他の情報も分かる様になって来ている。ちなみこんな感じ
石 石
???? ただの石
???? 買い取り不可
買い取り出来るかどうかが分かるのはありがたいね。もう少し頑張れば相場が分かる様になるらしい。商人必須スキルですな。
MPも少しづつ増えている。只ね、使用回数は増えて無いのよね(泣)レピさんが9割消費するからさ・・・しょうがないしょうがない。
ああ、レピも幾つかスキルを持っているが俺と同じ様なスキルで蛇眼・異空間収納と言うのを持っている。なんと俺の鑑定・アイテムボックスの上位互換のスキルです。
蛇眼は今でもほとんどの内容が分かる様ですしもちろん、さらにレベルアップすれば隠遁された情報も見える様になるらしい。・・・へ~
異空間収納はレピのお腹の中に入れた物を保管出来ます。今、話を聞くと10トントラック位の容量があるようです。こちらも容量がまだまだ増えるとの事。・・・ほ~
・・・・・・いやいや、悔しいとか無いで、助かるわ、ホンマ助かるわ。だって俺よりも内容が分かるならレピに聞けば間違いないやん。俺よりも多く荷物持てるんやったらレピに持ってもろたらええやん。
なんでぃやねん!
あのクソボケ(怒)ややこい嫌がらせしやがって、俺のスキル意味ないなぁ。他のスキルをレピに持たせろや!いやまぁ、レピに聞いたらダークスネークは普通に持ってるスキルらしいけど。せやったら他の使い魔にせんかいな!なんやろなこの、ネチネチとした細かい嫌がらせ。友達おらんやろうな・・・いや知らんけど。
しかし、レピさんあなたのスキルはエグないか?それだけで主人公やれるで。もしかしてダークスネークって普通の使い魔じゃないんかな?ん~分からん。この辺も学園に行けば分かると良いな。
学園ね・・・・嫌な予感しかしないね。普通にしてても嫌われているのに、根性悪もなんか仕掛けてくるんやろな。やっぱり早急に木刀も作って練習しますかね。身を守るすべは少しでも多い方が良いからね。魔法とスキルの世界ですが、もちろん俺は魔法は使えません(笑)・・・舐めやがって。
後・・・・スキルの熟練度も上げときますか。何処で役立つか分からんし、ほら、今後は俺にだって他人に見せられない紳士な趣味のなんかがゲット出来たら、隠すためと言いますか・・・
そう、保管の為にね、レピさんのお手を煩わせない為にもですし、夫婦円満の秘訣は旦那のベッド下と車のダッシュボードの中とスマホの中身は見ない方が良いと言いますからね。(あくまでも個人の感想です。)
【さっきから、私の顔を見つめてどうしたね?】
レピに声を掛けられ意識を向けると心配そうな表情をしているのが分かる。(ホント表情豊かだね)
「ん、何でもないさ。ちょっと、今後の事でね。いやいや、隠し事はしませんちゃんと相談します。ちなみにこんな長さでこれ位の厚みの木って準備出来る?こんな感じの加工して素振りに使いたくてね。」
身振り手振りで木刀を作る良さげな木が無いか相談する。
【ふむ、普通の木剣とは少し形が違うのだな。ああ、木刀かそれなら良い木を知っている。明日にでも持って来よう。】
とりあえず、木刀も目途が付きそうだし後は爺ちゃんがイメージで現れてくれるのを期待しよう。
さてさて、この1年間で俺は何処まで出来るのか?領地は何処まで維持出来るのか?やることと考える事は相変わらずいっぱいだ。考え事をしていると頭の中に名台詞が流れる。
君は生き延びる事が出来るか?
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白い空間に人型が揺れている。
「ああ、やっと彼も来年で学園に行く歳になったか・・・いや~思ったよりも最初は命を狙われ過ぎてちょっとだけ引いたよ(笑)僕が送った子も一瞬変な感じがしたけど、まぁまぁいい感じに今は守って居るし上出来上出来っと。・・・学園か~大変だろうな、僕は心配だよ。君の事が嫌いな聖王・聖女協会のメンバーが居るからね。ああ、心配だ心配過ぎて夜しか寝れないよ(笑)」
クスクス笑う声が白い空間に響く。クルクルと回り楽しげに踊っている様に見えるがやがて笑い声が消えると同時に人型も消えた。
アンチョビです
3話目をお届けしました。楽しんで頂けていますか?次話より学園編となります。引き続きよよろしくお願いいたします。




