生きる為に出来る事。
過ぎて4歳の春。
朝起きて、顔を洗い歯を磨き服を着替えて朝食を食べる。今日も今日とて1日が始まる。3歳の春にカインとエリリ義母さんに会った日から1ヶ月に一回の頻度で会って居る。
月1なのは別に俺が嫌われている事は無く(多分)、ただ、エリリ義母さんの身体が病弱な為(もちろん2人共)、会いに行くと気を遣わせるからだ。まぁ、子供がまだ小さいから、大変だろうからね。気遣いの出来る俺!誰か褒めて。
【シンガ、お前さん。前から思ってたけど、その歳から悩みを抱えているとハゲちまうぜ(笑)】
何故か訓練の為、部屋から場所を変え中庭に向かって廊下を歩いていると、深刻そうと感じ取ったらしい、我らがレピさんが何時もの如く足元に現れる。
ただ、その発言、それはあかん。男のチビ、デブ、ハゲはあかん。(あくまでも個人の感想です。)
その中でも、チビ、デブは食事や運動等で改善の余地があるがハゲだけは・・・ハゲだけは(泣)失った物はあの頃の栄光は・・・(重ねてあくまでも個人の感想です。)
ちなみに、レピの声は俺にしか聞こえ無いらしく。エリリ義母さんに聞いたが、
「「ごめんなさい。聞こえないわ」」
と、言われた。これは、普通の事らしい。使い魔との意志疎通は主にしか出来ないと教わった。
その後も黙って歩いていると。
【相変わらず、領地の事が気になって要るのかね。お前さんの父親も頑張っている。悲観する事も無いと思うがね。】
的外れな心配をされた。いや、確かに領地の事も心配だけどね。今はハゲ・・・止めておこう。
「そうは言ってもさ、年々人口が減って今では、100人も居ないよ?2種族は僕が嫌いだし、人間は年寄りは亡くなって逝くし若者は出会いや2種族を求めて町に行くからね。」
もう、詰んだと言っても良いと思う。もともとは町に発展させようと2つの村を開発していたが、俺が産まれた事により2種族が村から去ってしまった。
【それでも、今のお前さんに出来る事は無い。焦っても仕方ない。】
レピの言葉を受けてため息を吐く。中庭に着き歩みを止めてじっと手を見る。働けど働けど、と詩だか文だかあったな・・・・
俺は働いて無いけどね。
息吹を行い意識を切り替えて型稽古から始める。こんな事なら日本刀を持ってこれたら良かったのにとつくづく思う。
「シッ!」
飛んできた殺気を躱し左上段蹴りを放つ。
【集中する】
左足首を咥えながらレピに怒られた。
「ごめんなさい。真面目にやります。」
レピに謝罪して、仮想敵のお婆ちゃんに対峙する。もちろん、数回殺された。
水分補給と休憩の時間にふと思い立ちレピにもらったスキルの事を聞く。
「あのさ、レピ。僕のスキルの事を聞いても良い?鑑定、アイテムボックスなんだけど。」
産まれた時から有ったスキルだけど何故か4歳迄使えなかった。使える様になっても各1・2回しか使えない。多分MPが少ないからだろうと思う。そもそも、MPの最大値はどないして増やすのかも分からん。その辺りもレピに相談する。
【ああ!お前さんに話してなかったな。これは私のミスだ、すまない。実は私を召還するのに必ずMP最大値の9割を使用してる。だから今までスキルが使用出来なかったんだ】
レピの説明を受けて納得する。確かに、MPの9割も使用してたらスキルは使えないのは当たり前かなと思う。・・・・・・
え!?9割?は!?9割?MP 10やったら9使こてんの?100やったら90?1000やったらってもうよろしいわ!
「ねぇ、レピさんや。何故、MPを9割も使用してるの?あ、あれか、レピの召還レベルが上がると使用MPが下がる設定ですよね?又はスゴいスキルを覚えるとか?あれもアリだな、実はレピがめちゃくちゃスゴい蛇だったり、ね?」
言いながら嫌な予感が止まらない。あの馬鹿の笑い声が聞こえる気がする。ヤバい寒くないのに身体が震える。武者震いかな?どれか一つは当たって欲しい。いや、3つ共、お願いします。
【シンガ。残念ながら使用MPが下がる事もないしスキルも普通だな。だって私は普通のダークスネークだからね。だって私は普通のダークスネークだからね。】
素敵な声で二度言われた。
訓練を切り上げ汗を流しに風呂場に向かう、何時もなら火照った体に冷たい水が気持ちいいはずが、何故か体が冷えきっているのか?温かく感じた。部屋に戻り布団に入り目を閉じる。たまにある夢の中で神様に会えるシチュエーションに期待する。
【お前さんがこんなに早く疲れて寝るとは珍しいな。まぁ、シンガはまだ4歳だ。護衛は私に任せて休むが良いさ】
レピのやさしい声を聞きながら意識を手放した。目が覚めると最近見慣れた天井だった。
夢の中で馬鹿には会えなかった。天井を見つめながら考える、あの馬鹿は何がしたいんだ?何故、俺に苦労を不幸を味合わせる?
【シンガ。起きたのか?この後はどうするね?】
レピが起きた事に気づいて声を掛けてきた。紅い目が何故か申し訳なさそうに俺を見つめている。MP消費量を気にしてる見たいだ。しかし、それも多分、馬鹿が悪い。
「エリリ義母さんの所に行くよ。何か困った事があるかも知れないからね。」
荒んだ心を癒す存在に会いに行こう。心のオアシスを求めて、エリリ義母さんの部屋に向かう。ドアをノックして声をかける。
「エリリ義母さん、シンガです。入ってもよろしいでしょうか?」
俺の問い掛けに別の人が答える。扉の前に老メイド長が立つ。ああ、これは、今日は会えないなと思った。バレぬ様に小さくため息を吐く
「次期当主さま。カイン様はお休みでございます。エリナ様、リリナ様も本日はお加減が優れずお休みになられております。・・・・お引き取りくださいませ。」
いつもと変わらぬ、置物を見るような視線を感じる。
「今日は、自分の部屋に戻ります。また、後日、訪ねます。エリリ義母さんとカインをお願いします。」
「・・・承知いたしました。仰せの通りに」
感情の入っていない声を背に受け部屋に戻る。
【シンガ。用事を思い出した。ちょいっと、あの老害に毒を盛ってくる。なに、2日ほどトイレが自室になる程度だ。これでも、毒の扱いは得意でね】
これも、いつものやり取りだ。俺の為に怒ってくれているのは正直うれしくもある。そして、毒殺されずに今日まで生きてこられた理由。レピは毒蛇でした!!毒入りミルクを飲んでも俺の体をレピが1噛みすればあら不思議、すぐに解毒されて元通り。やったね!
「駄目だよ、レピ。メイド長に籠られるとエリリ義母さんとカインに迷惑が掛かる。それは僕が困ると思わないかい?」
レピの紅い目を見ながら言葉を掛ける。
【確かにそうだな、仕方ない。あのプライドだけは高いメイド長様にいつもより脂汗を搔きながら夕食の準備をしてもらおう。どうだね?】
カインの姿をみてエリリ義母さんと少しでも話が出来れば気もまぎれると思っていただけに、あの老メイド長の態度に今日は、傷ついたのも確かだ。目を閉じて亡き母に謝罪する。
「これから、僕は歴史の勉強をする。レピ、今から君は自由時間だ。」
俺の言葉を聞いてウキウキと尻尾を揺らしてレピは部屋を出て行った。
部屋でレピが隠れて持ってきている歴史の本を読む。文字はレピに教えてもらった。
(改めて思うけど。使い魔ってこんなに便利な存在なのか?じゃ、なぜ、老夫婦や義母さん達は使い魔を側に置かない?何か条件があるのか・・・)
使い魔について思いを馳せるが情報がそもそも、足りない。前世でのイメージなら、契約、テイム、召還。と言った所かな?とは思うがレピと契約、テイム、召還のどれかの段取りをした記憶が無い。いや、普段も召還してる感じはない、勝手に側にいる。
(あの馬鹿が使い魔だけ、俺に協力的な存在を寄越すのか?または、見逃した?)
出来れば、考えたく無いことだけど・・・あの根性悪の事だ、裏切られる事にも注意して置いた方が良いかも知れないなと思う。
(はぁ、1人じゃ今日まで生きてこれなかったのも事実だけれど・・・)
「レピに裏切られるかもと考えなければならないとは、心が休まらないな。」
気付けば独り言を溢していた。少しの時間が過ぎた時、遠くで慌ただしく物音がするのが聞こえる。ああ、なんだ、俺も性格悪いな。気分が晴れていく。
【(まぁ、何だ。シンガの置かれた状況では些細な事も疑うって事は良い事だと思うがね。その対象に私も含まれる・・・か)】
しばらく、本を読み時間を潰していると。
【いや~(笑)実に、有意義な自由時間だった。シンガ。今日は気分が良いから良い夢が見れそうだ。】
かなり気分が良いレピが帰って来た。話を聞くと、エリリ義母さんに出した紅茶(何処にそんな金あんねん)のポットに残った分を飲んでいるらしく、それに、レピは毒を入れたとの事。
【1口飲んで、微妙な違和感に気付かせる。私ならではの技だね、慌てて義母の元に走るメイド長様は運動不足解消となったに違いない、ああ、イケナイ、これではメイド長に感謝されてしまうな。困ったもんだ(笑)】
なかなかに面白かったらしい。今、メイド長は細心の注意をはらい、腹痛と戦いながら夕食の準備をしている。多分、俺の夕食は少ないが後は寝るだけ、明日はレピに鳥でも捕まえて貰らい今日のお詫びとしよう。
「レピ、明日は鳥でも捕まえて来てよ。それとさ、今、気づいたけど。レピって何時寝てるの?」
俺が起きてる時も寝てる時も護衛をしてるなら、普通に考えて、寝る時間は無いと思う。それとも、使い魔は寝ないのか?
【確かに、今日まで不眠不休で護衛をしていたな。シンガ。領地の事を思う気持ちも分かるがね、私の職場環境の改善を早急にお願いしたいもんだ。】
聞いたは良いが、実際問題として改善は難しい。この時の俺はかなり精神的に参っていたんだと思う。だから、まぁ、口にしてしまった、言い訳しても仕方ないけど・・・
「休みがほしいなら、簡単だよ。レピ。僕が死ねば良い。そおす・・・」
【シンガ!】
バシンと床を尻尾で叩く音とレピの怒鳴り声が頭に響く。瞳は怒りか何時もよりさらに、紅く見える。・・・やらかした。沈黙の時間が心に重くのし掛かる。
【ふぅ、シンガ。大声を出してすまない。私はね、お前さんとの冗談を言い合う時間を気に入ってるのさ。それと、シンガ。お前さんは天寿を全うするか、仇名す者が現れた場合に力及ばず死ぬとしても私が先だ。これだけは、相手がどんな存在でも、譲る気はないぜ。】
相手がどんな存在でも・・・・・・か。
うん、まぁ、これは俺が勝手にそう捉えただけで、違うかもしれない。我ながら、チョロいと思う。でも、嬉しかった。だから照れ隠しに軽口で答えよう。
「ごめんなさい。レピ。あ、それと、何時もありがとう。でも、知らなかったんだよ。・・・・レピがそんなに僕の事を好きだなんて(笑)いや~ごめんね。レピの想いに気づかなくって(笑)」
俺のモブ顔はこれ以上なく、ニヤケていたと思う。多分、自分がされたらグーパンしてた自信がある。
一瞬の静寂後。
【ば、馬鹿を言うな!確かに、お前さんは放っておけば、いつ死ぬか分からんから目は離せんし、気になる存在ではあるんだが・・・ああ、違う。違わないが違う。・・何を言ってるんだ?私は・・・そうじゃない、使い魔として・・・・なんだ?そのニヤケ面は・・よし、シンガ。腕を出せ、記憶を失くす毒をくれてやろう。】
尻尾をワタワタと動かし、黒い体が赤く染まっている様にも見える。威嚇の為か口を開け牙を見せつける姿も可愛らしい。
「え~痛くしないでよ(笑)どれぐらいの記憶を消すつもりさ?(笑)レピさんのツンデレ~」
ん、我ながらウザイぐらいに、ニヤケ面でレピに恐る恐ると言った感じで左腕を向ける。いや~調子乗ってる!俺、調子乗ってる!なんか、楽しいな。
【なに、5年程の記憶を失くす程度だ。ちなみに、痛くは無いが、吐く事の出来ない嘔吐感が1週間程続く。】
真顔のレピが抑揚の無い静かな声で告げている。会話からかなりの時間たってるし、レピのセリフも覚えてるさ、痛く無いなら5年位・・・5年⁉・・5分で無く⁈嘔吐感が1週間⁈1分間で無く⁈いやいや、前世の記憶もマイナスなりますやん⁈
【それじゃ、さっそく・・】
レピが更に口を広げ、左腕に牙を刺そうとしている。
「ちょ!待てい!!」
慌てて、左腕をひっこめると同時にカチっと牙同士が当たる音がする。やばかった!多分、そうはならんやろうけど、やばかった。背汗が尋常じゃないくらい掻いてる、腰当たりがビシャビシャになってる。
【何だ、急に(笑)先ほど迄はこの世に怖いものなしと思える程ニヤケ面じゃなかったかね(笑)】
今度は、レピにニヤケ面で返された。なかなかに表情豊ですね。(怒)
「記憶を5年も失えば、大変すぎるでしょ。僕まだ、4年しか生きてないんですけど?」
変わらずニヤケ面のままでいる、レピに当たり前の言葉しか出ないのが何か悔しい。
【いやなに、記憶を失ってからもう一度記憶を取り戻す為に刺激物をブチ込めばニヤケ面がイケメンになるかと思ってね(笑)】
え!?イケメンに成れるの?マジ?なら・・・あかん。1週間の嘔吐感は耐えられない(泣)そもそも、黒目、黒髪でイケメンになってもね。意味ないよね・・・色々と思案していると何故か・・・
【いやまあ、あれだ、シンガ。お前さんの容姿はそんなに、卑下する事は無いと思うがね。その、高貴さや、知性も感じられない様は相手に油断を誘う武器だな。それと、お前さんの声と存在感。印象に残らないのは素晴らしい。暗殺者には必要なスキルだと思うぜ(笑)】
レピから何の慰めにもならない言葉をかけられた。なんやねん。高貴さや知性がないって(怒)声と存在感が薄い?無視されてるだけやけどね(怒)俺は行商人になって世界を旅する気持ちはあっても暗殺者にはならんよ。
「ありがとう。レピ。凄く嬉しいよ。」
出来る限り笑顔で答えるが、多分、瞳のハイライトさんは出掛けて居ないと思う。帰ってくるよね?ハイライトが無いモブってあかんやん。
【あ、ああ。シンガが喜んでくれるなら。私も話して良かった。・・・おっと、こんな時間だ。夕食を取りにキッチンに向かうかい?】
レピに催促されて、キッチンに向かう。準備されていた。冷めたスープと硬いパンを持って部屋に帰ろうとすると、立ち塞がる人物が
「これは、次期当主様。今から食事ですかな?ん、相変わらず、質素倹約の食事を好んでいらっしゃる(笑)私達と違い育ち盛りですから。肉なども食されませんと、後、中庭でなされてる、珍妙な踊りは決して外でなされませんように。当家の・・・恥じですからな。」
別に質素倹約に努めているんじゃなくてさ、老メイド長があんたの嫁さんがこれしか作らないだけやけど。(怒)それと、珍妙な踊りってなんやねん・・・まあ、4歳男子の武術なんて、知らん者から見たらそんな物か。
ああ、夫婦揃って嫌味で気分が悪くなる。適当に頷き足早に、横をすり抜け廊下を歩く。
「それと、最近、ネズミを追って蛇が書斎に忍び込んでいる様子。旦那様の大事な書物を汚さぬ様に躾をお願いします。」
お互いの足音が遠ざかるのが心地よい。俺はもちろん、振り返る事なく部屋に向かった。
「それでは、レピさん。検食お願いします。」
食事の時のルール。毒殺はなくなったが傷んだ食材で食中毒は普通にある。その為にレピに検食して貰っている。
【どれどれ、ふむ、今日は新しい傷んだ食材だな。体の軽いシビレと言った所だ。一晩寝れば治る、気にせず食べて大丈夫だ。】
レピの言葉に以前は何が大丈夫やねん?と思っていたが、これから、先の事を考えても抵抗力を付ける為には必要な事だ。レピが居れば、命に危険な状態になっても治してくれる。大きく深呼吸をして、冷たいスープを1口飲んだ。
「れびさん、ほんろうにらいじぉおぶ?めらめらからら、しびれれるよ・・・ほんろうにらいじぉおぶ?・・・あえ?れびさん?なんれめをそあすの?」
食事が終わって暫くすると、体がシビレ出す。最初はちょっとピリッとするだけが、ヤバい感じになって来た。ほら、あれだ、正座して足痺れたのを強めになったのが全身で痺れてる感じ。いや、全身に低周波マッサージ機器を当ててる・・あれ、俺、説明もシビレとるんか、変や無いか?。
【すまない、シンガ。お前さんに正直に言えば、食べるのを躊躇すると思ってね。・・・弱めと嘘を付いた。明日はゆっくり休んでくれ。】
申し訳なさそうなレピの声と姿を見ながら。
どうせ、食べるんだからハッキリ言って欲しかったと思っていると意識が途切れた。シビレ耐性が付いた・・・・・・・と思う。
だって、レピが何も言わないもん。
アンチョビです。
2話を無事お届け出来ました。
お楽しみ頂けましたでしょうか?
駄文ですが引き続き、暖かい目でのんびりとお楽しみ下さい。




