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我に、まかせよ  作者: 熊谷 柿
第1章
3/18

 吹いた風が、新緑の香りを運んできた。

 宮廷の庭園で池の面を静かに見遣みやっていたのは、二人だった。

「おめえの親父の諸葛瑾しょかつきんと叔父の諸葛亮しょかつりょうとでは、一体どっちが偉いんだ、諸葛恪しょかつかく?」

 而立じりつの頃を幾つか過ぎていた。碧眼紫髯へきがんしぜんあごは張り、笑うと口許が大きく歪んだ。豪奢ごうしゃな着物に覆われた広い背から、後方に拝跪はいきする諸葛恪に首だけ振り返ってただしたのは、領主の孫権そんけんだった。

 西暦二一六年――。諸葛恪が十三の頃だった。

 孫権は、神童として聞こえる諸葛恪の真偽をはかるべく宮廷に招いていた。

 孫権には、白髪白髯はくはつはくぜん老獪ろうかいはべっている。相貌そうぼうに刻まれたしわからは、厳格さがにじみ出ていた。還暦を目前に控える孫家の重鎮であり、幼馴染おさななじみ張休ちょうきゅう、その父の張昭ちょうしょうだった。張休は遅くにできた子だった。

 張昭の鋭い眼光が、諸葛恪に注がれている。

 それにじることなく、諸葛恪は不気味な笑みを浮かべた。

「当然、父上でございます」

「どうしてだ?」

「仕えるべき主君を心得ておりますゆえ

 居丈高いたけだかに言った諸葛恪に、孫権は呵呵かかと大笑した。

「おめえ、おもしれえな。家柄がいいと、賢明な子が生まれてくるってのは本当だな」

 親分肌で豪快な孫権は、満悦だった。

 ゆっくりとその身をひるがえした張昭は、冷めた眼差まなざしを諸葛恪に向けた。

 諸葛恪は、挑むような視線を張昭へ返した。

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