ACT19・希望の光
母親が死んだ時、奇しくもそれは光太朗の誕生日だった。
お祝いのためのケーキとプレゼントを買った帰りの出来事だ。
父親が死んだのは、光太朗が中学生に上がり、これから新たな生活に胸を踊らせていた時だった。
自分はこれ以上、幸せを望んではいけないと言われている気がした。
両親を奪われた怒りや悲しみは当然。
そして、自分はこの世界から必要とされていないのでは。
そう思うようになった。
ひとりになった厄介者を押し付け合うように、親戚は光太朗をたらい回しにする。
結局、ただひとり味方に付いてくれた親戚の力で、今の家に留まることを許された。
光太朗は自分のような存在を増やしたくはないのだ。無益に奪われる命があっていいはずがない。
それが光太朗を動かす原動力だ。
蛇ノ目に出会って、その思いは強くなった。
訳のわからない力を押し付けられたのは偶然であり、必然に思えたのだ。
だから、この状況も大げさに言えば光太朗の使命なのだと。
誰に頼まれたわけでもない。目を覚ました人たちが、光太朗達に感謝してくれる訳でもない。
ただ、そんなことではないのだ。
傷つけられる人がいる。
それだけが、光太朗の心に火を焚べる。
「そんな方法、思いも付きませんでしたわ」
驚いた声を上げるのはウサポだ。
光太朗の案に不安な顔を見せるも、それしか無いと判断したのか、ウサポも一織も了承してくれた。
これを逃したら、恐らく後はない。
一発限りの、奇策。奥の手だ。
「じゃあ、始めるぞ!」
決意と共に、光太朗が吠える。
百合花が聖晶神花・花香剣を発動し、構える。
「花輪紋!」
弾ける光が化け物の巨体に張り付く。戒めの光輪が、その動きを抑制する。
ダスターの部分には通らないため、シェイドを形成する黒い水晶部分のみを光で覆い、捕縛する。
輝く光で縛り付けるが、ダスターそのものの活動を停止させるスタープロテクションと違い、花輪紋はあくまで行動を抑制させるだけの技だ。
なので、超質量の巨体を縛り続けることは、百合花に凄まじい負荷を掛ける。縛り付けておける時間は、わずかだろう。
「よし、やるぞ」
光太朗と一織。そして百合花。これは3人の力を合わせなければ成功しない攻撃。
「あ、ああっ!あれは!」
ウサポが空を見上げて声を上げた。
攻撃の出鼻をくじく、異変。
巨大な化け物の身体が鳴動し、体表が膨らむ。光線による攻撃ではない。
体表から盛り上がるように、原色の塊が蠢く。まるで巨体を地表とするように、そこから小型のダスターが湧き出てくる。
数百分の一に小さくなったダスターの群れが地上に降下。
光線こそ使用しないが、何かを窺うように瓦礫の中を飛行する。
倒れている人を見つけると、近寄りつつ奇妙な光を放ち、倒れている人を包む。
「・・・スタープリズムを根こそぎ奪うつもりなのですわ」
「くそっ!」
「冷静に、ですわ!あの親玉を何とかする方が先決!そのために百合花さんは身体を張ってますのよ!」
飛び出したい気持ちを、ウサポが諭す。
ダスターの一体が、スタープリズムの吸収をやめた。
見えない何かが怪しく光り、それが明確な攻撃の意識を生む。それは明らかな攻撃の意志。
やっぱり黙っているわけにはいかない。巨大な化け物から逸れ、光太朗は飛び出そうとする。
その時。
倒れた人間を貫く光は射出されなかった。
その代わり、ダスターは全身を硬直させたまま、文字通り身体を固まらせ、地面へと転がった。
「・・・な、何だ?」
突然起きた異変に困惑していると、側に何かの気配が現れた。
「光太朗様」
それは、奇妙な武装で身を固めたアフロディーテだった。
「アフロディーテ!・・・それは?」
肩に担いだ筒状の武器。背中に巨大な機械を担いでいる。
「博士が開発した、対ダスター用兵装。通称D型装備壱式です」
ジャキ、と手にした砲身を掲げて見せる。
「倒すことは不可能ですが、特殊砲弾により、ダスターの体組織を一時的に凍結することにより動きを封じ込めることが可能です」
地上では、氷の彫像のように道路に転がる無数のダスターが。
「一織様の協力のお陰です」
機械の顔の中に、勇ましさが見え隠れする。
「小型のダスターは私にお任せください」
砲身のカートリッジを装填しながら、アフロディーテは宙に飛び出そうとする。
「アフロディーテ」
それを、光太朗が呼び止めた。
「ありがとう。助かった」
アフロディーテは、無表情のまま、振り返る。
「私は、博士の命のまま動くだけです」
それは、組み込まれたプログラム。博士の身の回りの世話をする、機械的に組み込まれた命令に過ぎない。それに、敵と戦う命令が追加されただけ。
「ただ」
アフロディーテは、そう付け加え、
「最近の博士は、とても嬉しそうに見えました。全ては光太朗様と出会ってからです」
作る料理のレパートリーが書き換えられ、研究室に閉じ籠もることが少なくなった。それが、アフロディーテには奇妙な感覚だ。理解の出来ない変化。
ただ、それが主の喜びなら、受け入れよう。例え自分が兵器としての役割が加わろうとも。
ビルの向こう側に消えるアフロディーテを見送り、改めて巨大な化け物に向き合う。
「今言うことでは無いが、奴の名を『混合体』と呼称する」
ニアはそう言うが、奴の名前が混合体だろうとなんだろうと関係ない。倒して、終わりだ。
「行くぞ」
『オーバーワーク』
ヴェノムスケイルの体表が熱くなる。
熱が光太朗の体中を駆け巡る。内部から焼けただれそうな熱さが身体を支配する。
「スタープロテクション!」
黄金の輝きが、対象の動きを固着させる。ただし、対象は的ではなく、光太朗だ。
スターセイザーのシュートで、オーバーワーク状態でのバイパーストライク。
目にも止まらない程の高速で、核を的確に撃ち抜ける攻撃。それは、これ以外の方法を知らない。
スタープロテクションに包まれる光太朗は、不思議な穏やかさで満ちていた。
身体を渦巻く力の奔流は止まっている。スタープロテクションで固められている間は、オーバーワークの稼働時間を停止されている。
それは、スタープロテクションの効果によるものなのか、一織が意図的に変えてくれているのかはわからない。
「やってくれ!」
光太朗の背中に、一織の柔らかい手のひらが当てがわれる。
そして、手のひらにヴァイオレットバイパーを抱えたまま、上昇。混合体を遥か下方の視界に捉え、固定。
「射線軸!そこでストップ!」
星の巫女であるウサポは、ダスター体内の核の位置を見定める力がある。
「その位置!オッケーですわ!」
「やってくれ!」
背中越しに、一織に伝える。背中に伝わる手のひらに力が籠もるのが分かる。
そして。
「シューートっ!」
背景が一瞬で横に引きちぎられる。
凄まじい勢いで射出された光太朗の身体は、刹那の間に混合体に押し迫る。
『ヴァイパーストライク』
右足を突き出し、持てる全ての力を収束させる。
飛びかける意識を、気力で引き戻す。
ヴァイパーの靴底が混合体の体表を捉える。
沈む感覚。
足先が何かを引き裂き、掻き分ける。
だが、この高速の世界でも、裂いたその場から周囲が押し迫る感覚。
蹴り砕いた場所からすでに再生が始まっているのだ。だが、再生の速度より、蹴り砕く速度の方が、早い。
頼む。
祈るような気持ちで、最奥に突き進む勢いに身を委ねる。
そして。
がっ。
足の裏が何かを捉える。
触れる、硬質のもの。
何かが砕ける音を聞いた次の瞬間には、光太朗の身体は空中へと飛び出していた。
核だけでなく、混合体の巨体を、一直線にヴァイパーの右足が貫いた。
だが、勢いは止まること無く、瞬く間に地表が一瞬で近づき、
がんっ!
光太朗の身体が地面に激突。それでも勢いは殺せず、宙に跳ね、回転。
逆に、やけにスローモーションに見える視界の端では、逆さまになった空の中で崩れ落ちてゆく原色の塊と、黒い水晶体。
「ぐうっ!」
大きな瓦礫に身体を弾けさせつつも、勢いは衰えない。
・・・さすがに、やばいかな。
いくらヴェノムスケイルの硬度でも、超高速で射出された勢いに加え、オーバーワーク状態で疲弊した身体では叩きつけられる衝撃に耐えきれない。
そして、稼働時間は限界の10秒を超えている。今すぐ変身を解除しないと、溢れる熱で自身の身体を焼き尽くされる。
そんな気持ちとは裏腹に、回転は止まらない。
閉じる世界。まぶたが鉛のように重たい。
何度目かの硬い衝撃と鈍痛が全身に駆け巡った頃。
光太朗の身体が硬直した。それは身体が限界を迎えた、というわけではなく。
温かい黄金色の光と、白く眩い光が光太朗の身体を包みこんでいるのだ。
そして。光太朗の視界にふたつの影が迫り。
「くうっ!」
「んん〜っ!」
見知った顔、声が、光太朗の身体を押し、受け止めている。オーバーワーク状態で、熱を持つ状態にも関わらず、そのか細い手はそれに耐える。
ふたりの手助けが有りながらも、勢いは止まらない。
「もういい!手を離せ!」
自分たちの手が焼けるぞ!
自分の両腕を犠牲にしてまで助ける存在ではない!
「上出来だ。手を離せ」
その合図で、百合花と一織は光太朗から離脱する。
光太朗が地面に叩きつけられる瞬間。
百合花のものとも、一織のものでもない光が光太朗を包み。
パジっ!
電気がショートしたような音が弾け、光太朗の周囲に流れる視界が、止まった。
光太朗の目に、額に円状の魔法陣の刻印を輝かせたニアが映る。
「術式の詠唱に、少々時間を要した」
半黒半白の猫が放つ不思議な術で、光太朗の身体は無事、高速の勢いを失い、ゆっくりとその身体を地面ヘと横たわらせた。
「じ、神野君、早く変身を解かないと」
オーバーワーク状態は続いている。このままでは光太朗の身体を内部から焼く。
「か、身体が動かないんだ」
自身では腕すら動かすことは叶わず、脚、首も自分の言うことを効かない。
「私が研究所まで連れて帰ります」
と、身体の所々を破損させたアフロディーテが現れ、光太朗をその背に担いだ。ロボットならば、熱には耐えられる。
光太朗を背に飛び立つその後を追おうと百合花も続くが、それをウサポが呼び止める。
「これだけの規模の倒壊、修復するのに少々骨が折れそうですわ」
スターセイザーには、破壊された物を修復する能力がある。
七色タワーがダスターに襲われて、窓が粉々に砕けても、それがまるでなかったように元通りになった。
ただ都合の良い能力ではない。
それは星の記憶。
星は命。
星も、一つの生命体なのだ。
スターセイザーは、その星の記憶に干渉し、元の姿に回帰させる。言わば星の治癒力を引き上げ、回復させているに過ぎない。
「ただ、これだけの規模は初めてですわ。ダスターやアンチホープに出来て、私達にできないわけがありません。百合花さん、力を貸していただけませんか?」
ウサポのお願いに、百合花は小さく頷いたのだった。
「ふむ」
地表より遥か上空。そこは漆黒に染まる真空の世界。
眼下には眩く輝く蒼き星。その名を『地球』と言ったか。
忌まわしき星神の庇護を受けた、水と緑に溢れた星だ。
黒い空間に奇妙な物体がある。ガラスのような質感で、薄い水色の立体。
「星戦士がひとりになったことで、スタープリズムの回収が容易になったと思ったのだが」
真空では声も音も伝わらないはずだ。だが、その目も口もない奇妙な物体は、人語を話している。
「なかなかどうして。見知らぬ戦士の出現も含め、面白い事象が起きているようだ」
機械音声のような、抑揚のない声。感情を含まないその声は、プログラムのようでもある。
「『常闇の眷属』なる組織の尖兵と、我が手先の融合は興味深い結果で終わった。シェイドなる結晶思念体との合体は、戦闘能力の増強だけではなく、特性の消失を引き起こしたか」
菱形の立体は、ダスターとシェイドの合体した姿と、スターセイザーをはじめとする地球の戦士との戦闘を監視していた。
かつて、自分たちから見れば大海の中に混ざる砂の一粒ほどの時しか生きたことのない少女に、運命付けられた宇宙の滅びを退けられた。
いや、我々にとっては『かつて』というほどの時間すら経っていない。まばたき程の、矮小な時間。
「まだまだ研究の余地はある」
地球は混沌で溢れている。だが、それと相反するように、この星に住む地球人という生命体は、凄まじいパワーを秘めている。
スタープリズムの発生源であり、アンチホープとやらにとっては水晶花、だったか。
まるでこの地球は天然のエネルギー採掘場だ。
ダスターは完璧な生命体。
効率の悪い食事を必要とせず、決して老いることもなく。無駄に数を増やす生殖を必要としない。
だが、唯一の弱点を上げるのなら、その点にある。
子孫を残す必要がないのだ。
より純度の高い個体がいれば、それでいい。無限にも等しい命を持っているがゆえ。
他の生命を襲い、スタープリズムを回収するのは、永遠とも呼べる有閑の中で見出した唯一の安らぎ。ほんの暇つぶし。
それを他者と関係を持たなければ生きては行けない証だと、星戦士の少女は指摘した。完璧を謳いながらも、あなたも私と同じだと。神にも等しい我々に、人間の少女はそう言い放った。
短い時の中でしか生きられない、何も知らない、未成熟な生命体に。
それ故、カオススターは敗北した。
自我を揺さぶられ、自らの存在意義を疑い、完璧を打ち砕かれた。
同じ轍は踏まない。
今度こそ『完成』する。
この星を滅ぼすのは、それからでも十分だろう。
宇宙の平穏と安寧を司ってきた星神の時代は終わる。
この宇宙と同じ色で、暗黒の帳で全てを覆うことこそが我らの本懐。
光と闇は、相容れない。
太陽の輝きすら届かない深淵の世界へ。
それが主、カオススターの残せし、我らに課せられた使命。
真空に浮かぶ菱形の塊は、闇に溶けるようにゆらりと姿を消した。
「『彼』が逝ったか」
薄暗い、闇で染まった部屋。
闇の中に泳ぐ声は、煙のように消える。
果てしなく広がっているようで、閉鎖的でもある。
外の光を一切許さない、閉じた世界。
中央には、瘴気で満ちた部屋には似つかわしくない、磨き上げられた鏡台がある。
独特な、何かが焼けるような匂いが漂うろうそくの灯りの中でも、その鏡は特異で、怪しげな輝きを放っている。
彼が宿敵に貫かようとも、最後の力を振り絞って飛ばした念は確かに受け取った。様々な想いや、祈りの込められた、念を。
『滅びを撒く星』と嘯く奇妙な立体の力を受け、シェイドとの融合実験の様子を複数のローブに身を包んだ影達が、鏡面を前に、虚ろな視線を向けていた。
「数少ない我が同志」
「その魂と意志、確かに受け取った」
怒りでも、悲しみでもない、どちらでも無い感情。
「信じていいのか?攻撃能力は格段に増大したが、それぞれの特性が見る影もない」
闇晶空域が放てず、気体と聞いていたダスターの体質がなくなった。
それと引き換えに、圧倒的な威力を誇る破滅の光と、凄まじい回転の再生力を得た。結局は、花の騎士率いる、戦士たちに破壊された。
「いざとなったら、切り捨てればいい。今は、奴の力を利用する」
幸い、自分たちを苦しめた花の騎士はひとりしか確認していない。同じような格好をした女児もいるが、それは奴らに任せよう。
花の騎士同様、闇晶空域を無効化する能力を持つスターセイザーとやらに構っていられないというのが本音だ。最悪、相打ちになってくれればそれでもいい。
それよりも、警戒すべきはもうひとりの謎の戦士。
武勲を焦り、ひとりで飛び出した仲間の失態は、代わりに有益な情報をもたらした。
花の聖飾に頼らずとも、闇晶空域の中でも意識を失わず、ダスターにスタープリズムを食われることもない。ダスターそのものにダメージを与える事は出来ないようだが。
果たしてその鎧の効果なのか、そもそも人間なのか。地上に溢れるという機械人形か。どちらにせよ、興味深い。
「混沌の日は近い」
ローブの奥の目は、薄暗く闇で伺い知れない。
ただ、その声は希望に満ちているものに聞こえた。
あれから一週間ほどが過ぎた。
スターリザレクションによる回帰は、街に元通りの生活をもたらした。
人々は、そこで何かが行われたことを思い出すことは無いだろう。
蛇ノ目宅の1階リビングには家主を始め、テーブルには光太朗と百合花。
一織は満面の笑みでテーブルの中心部に視線を向け、夜宵は相変わらずのクールな表情。
そしてニアはまるでそこが定位置かのように光太朗のあぐらの上に座し、ウサポはその延長線上の頭頂部に陣取っている。
ウサポはテーブルの上の料理に興味津々だ。
「・・・一体何がどうなったらこんな状況になる?」
光太朗の困惑の声は、テーブルの上で煮え立つ鍋の湯気の中に消える。
上質な肉。色とりどりの野菜。山の恵みのきのこ類。
満面の笑みを浮かべる一織と、無表情ながらスナイパーの如く視線を刺す夜宵は、嬉々して鍋の中の肉を奪取。
街を救った戦いの祝勝会と称した食事の会。
ここに並ぶ料理は、料理モードにトランスフォームしたアフロディーテが手掛けた一品だ。
それにしても、なぜこんな時期に鍋?立ち込める湯気はこの季節に似つかわしくない。
「良いではないか。賑やかな食事というのも悪くないものだぞ」
蛇ノ目自身も、この食卓に誰かが集うと言うことは久しく無い。
食事は専らアフロディーテ任せで、効率、そして年齢、食の先細りにより手軽で栄養のある物で済ますことが常だ。
心なしか、アフロディーテの料理姿が浮足立って見えるのは、ある種の親バカだろうか。
光太朗との出会いをきっかけに、この家には様々な人間が出入りするようになった。
機械の人形を、余生を看取る存在と覚悟を決めていた蛇ノ目には、思いがけない贈り物である。
「それに、飯代はお主の借金に上乗せされる」
「・・・鬼かよ。博士」
油が滲む肉が、容赦なく小学生コンビのお腹の中に消えてゆく。
「まだお肉はありますので、遠慮せずにどうぞ」
アフロディーテが追加の肉を持ってくる。皿の上に盛られたサシの入った芸術品のような肉は、光太朗にとっては無慈悲にスープの中に投げ込まれる現金のように見えた。
「仕方ないじゃろう。シェイドやダスターといくら戦ったところで金銭は増えん。地道にならず者をひっ捕らえて稼ぐしかないじゃろう」
銀行強盗を相手にしていた頃が懐かしい。
ヴェノムスケイルの維持や調整、改造した光太朗自身のオーバーホール。
研究資金の一端を担う鉄くずや機械、パーツと言っためぼしい金目の物は、街を襲う犯罪者を相手取り回収するしかない。
平和を維持するのにも金がいる。なんとも世知辛い世の中だ。みるみる消えてゆく肉の山を見つめながら、光太朗はそんなことを思った。
「神野君、お茶いる?」
子供たちの凄まじい食欲に、光太朗はお茶を飲むことで現実逃避をしていた。
「・・・おお、頼んでいいか」
百合花は空の湯呑みに、ポットから鮮やかな緑色の緑茶を注ぐ。
「光太朗、いちゃついていないで、我も肉を欲する。猫舌である故、スープは入れるな。ついでにフーフーしてくれると助かる」
「わ、私も星型の刻まれたしいたけを所望しますわ!」
ぺしぺし、とウサポの手が光太朗の額をはたき、催促。
「い、いちゃついてなんて無いわよ!はい!」
半ば叩きつけるように、光太朗の目の前に湯呑みを乱雑に置く百合花。
「動揺しているわよ、百合花さん」
肉をかじりながら、不敵な笑みを浮かべる夜宵。
熱いものが苦手だというニアには、肉を細かく咲いてやる。それはもはや猫舌、というのは突っ込まないでおく。
子供に不評なしいたけや人参は全てウサポが引き受けてくれる。食事を必要としないはずの星の巫女は、長く一織たちと関わったことで食事の味というものを知ったらしい。そして、星の巫女にとって、肉よりも野菜の方が甘美な味のようだ。
その光景を、蛇ノ目が優しい眼差しで見つめている。
「博士」
そんな一時を、アフロディーテの緊迫を含む声が引き戻した。
「居住地区にて火災が発生。事件性は無いようですが、いかがなさいますか」
「言うまでもない。出動じゃ。根こそぎ救ってこい」
光太朗はあぐらを解いて、立ち上がる。
「のんきに食っている場合じゃないな。・・・白崎も付き合ってくれるか」
「わかったわ」
当然のように、百合花はそれに続く。
「お肉は私が責任を持って処理しておいてあげる。一織ちゃんも行ってらっしゃい」
「ええ〜?ダスター案件じゃあないから、いいんじゃないかな」
それでも宇宙の平和を守る星戦士かしら、と言葉を夜宵に突きつけられ、一織は渋々席を立つ。
「カラフル・コネクト・ルミナース!」
百合花は光を溢れさせ、
「スターアクセラレーション!」
一織は後ろ髪引かれる思いで、
「変身!」
紫色の鎧を纏う少年は、平和を守るために、今日も青い空の下へと飛び出していった。
メタルヒーロー×マジカルガールは、この先の展開も考えてはいますが、これで一旦終わりです。
読んでいただいた方々、ありがとうございました。




