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Episode 57

 ドアの前で私を待ち構えていたのは、第二王子ルディだった。さっきと同じにやにや笑い。駄目だ。私、こいつ生理的に無理だわ。

「第二王子殿下…。どうされました?」

 飛び上がりそうになるくらい吃驚したことや、生理的嫌悪感は悟られないように、公爵令嬢スマイルを作る。

 なんでここにいるの?今朝すれ違うまで絡むことなんてなかったのに、なんで突然?何考えてる?否が応でも警戒してしまう。

「いや、先程イライザ嬢とすれ違った後、今日イライザ嬢が経済学の講義を受けていると聞きましてね。お恥ずかしい話ですが、僕は経済学が苦手で。イライザ嬢に教えていただこうかと思ったんですよ」


 ――は?なんで私が第二王子に勉強を教えないといけないのよ。全然親しくもないのに。王族ならいくらでも先生に頼めるはず。わざわざ私に頼んでくるなんて、こんなの、絶対に他意があるに決まってる。

 思わず眉間に盛大な皺がよりそうになったけど、なんとか公爵令嬢スマイルを貼り付けたまま持ちこたえた。偉いぞ私。そのまま、笑顔に困惑を滲ませながら殊勝な態度を取りつつ頭を下げる。

「恐れ入りますが、私も勉強中の身ですので、第二王子殿下にお教えするなどとんでもないことです。先程グザヴィエ先生が、いつでも質問を受け付けますとおっしゃってましたので、是非グザヴィエ先生にご質問なさってください」

 貼り付けた笑顔が剥がれないよう、細心の注意を払う。私のそんな努力を無に帰すように、第二王子が笑って首を振った。

「いやいや、わざわざグザヴィエ先生に聞くより、イライザ嬢の方が聞きやすいと思ったんですよ。ほら、先生に質問するのって、なんだか気後れするじゃないですか。イライザ嬢なら、同じ学生ですしね。駄目でしょうか?」

 先生に気後れなんて絶対にしてなさそうな態度でよく言うわ。これまで親しくしていたわけでもない兄の婚約者に勉強聞く方が、先生に聞くより聞きやすいってどんなだよ。社畜OL時代の毒舌な私が顔を出してしまいそうになるのを懸命に堪える。駄目だ。一応こいつは王族だし、パトリックの婚約者として、私がここでやらかすわけにはいかない。でも、だからといってこいつに勉強を教えるなんて絶対に嫌だ。何か魂胆があるに決まってるし、ただでさえ忙しいのに、こんな奴に時間を取られてパトリックとの時間が犠牲になるなんて許せない。


 私が意を決して口を開こうと顔を上げると、コツコツと足早にやってきた誰かに、後ろからすっと肩を抱かれた。

「駄目だよルディ、僕の大切な人を困らせるなんて。イライザはとても多忙なんだ。勉強は自分でやりなさい。わからなければ先生に聞く。当然のことだろう?」

 優しい声なのに、冷気が放たれているのがわかるのは何故だろう。肩を抱く人物が誰かなんて、顔を見なくてもわかる。

「あ、兄上…」

 先程まで私をにやにやと見下ろしていた第二王子の顔が凍りつく。

「迎えに来たよイライザ。さあ、僕の執務室に行こう」

 パトリックは第二王子に冷たい一瞥をくれると、私に向かって別人のように優美な笑顔を浮かべた。

「はい、パトリック殿下。では、第二王子殿下、これにて失礼いたします」

 私は差し伸べられたパトリックの手を取り、第二王子に一礼をする。パトリックにエスコートされながら、階下へ向かった。

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