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Episode 53

 王城に向かう馬車の中、アンドレが私にアンジーのことを聞いてきた。

「でも、アンジー嬢ってそんなに優秀なの?義姉(ねえ)さんより?」

 アンドレは一年生の首席だ。二学年上とはいえ、成績優秀者は気になるのかもしれない。それとも、アンジーがラブソニのヒロインだから、まだ会ったことなくても気になるものなのかな?でも、アンドレは攻略対象じゃないし…。

 私がぐるぐると考えを巡らせていると、アンドレが不思議そうに顔を覗き込んだ。

「義姉さん?」

 おっと。私はアンドレの前ではデフォルトの、ちょっとツンとした表情をつくる。

「そうね…。学科はいつも私の方が上よ。実技では、アンジーさんはパトリック殿下と首席を争っているわ」

 事実をツンとした口調で告げる。アンドレの前だと悪役令嬢ムーブを醸さないといけないから、正直ちょっと面倒なんだよね。どっかでこの感じを崩せる時が来るといいんだけどな。まあ、そう簡単にはいかないよね。


「へぇ。パトリック殿下と実技で首席争いができるなんて、アンジー嬢なかなかやるんだね」

 アンドレが大袈裟に目を丸くしてみせる。

「国家魔道士に認定されたんだから、それくらい当然でしょう」

「まあ、そうか。そうだよね。でも、だからって…」

 アンドレは何やらぶつぶつ呟いている。

「だからって、何?」

 私が促すと、アンドレが皮肉っぽい笑みを浮かべた。

「いやぁ、アンジー嬢って、義姉さんの元婚約者と婚約しそうなんでしょ?元婚約者のリアムさんだっけ?義姉さんほどの令嬢を振って、わざわざ平民の女の子に乗り換えるなんて、余程その子がすごいのかなってね。ちらっと見たことがあるけど、外見だってそこそこ程度だったしさ」

 リアムの名が出た瞬間に、アンドレの隣に座っていたお父様の表情が険しくなる。おいおいアンドレ、私に皮肉を言いたかったのかもしれないけど、それは私ではなく、お父様にとっての地雷だよ?あーあ、知らないからね。

「アンドレ、クロフトンのバカ息子の話はやめるんだ。名前を聞きたくもない」

 ものっすごく低いドスの利いた声で制され、アンドレの表情が凍る。ほら怒られた。

「まぁまぁ、お父様。あの婚約破棄のおかげで、私はパトリック殿下と婚約できたのですから、いいではないですか」

 仕方なく私がフォローをすると、アンドレも慌てて頷いた。

「そ、そうですよお義父様。義姉さんは元々、王子妃、ひいては王妃になるに相応しい人だったんです。騎士団長の息子なんて、義姉さんはもったいなかった。それなのに、あいつは…!」

 焦った顔をして弁明していたアンドレだったが、話しながら顔と声からだんだん怒りが滲み出てきた。あれれ?

「僕は悔しかったんです。義姉さんほど品格があって、才色兼備な令嬢はいません。それを、義姉さんから婚約破棄したならわかるけど、どこぞの平民の娘なんかに引っかかって向こうから婚約破棄を申し出るなんて。本当に許せない!」

 うん。前々から思ってたけど、アンドレは隠れイライザ信者だな?まあ、イライザってほんと、類い希なる美貌ってやつだし、頭も良くて品もあって、そんな従姉妹がいたら、そりゃ憧れるよね。悪役令嬢の身内が関係しているのかわからないけど、きっとアンドレも素直になれないキャラに違いない。

「おおアンドレ。よくわかっているじゃないか」

 お父様も深々と頷いている。リアムはこれからずっと大変だろうね…。こんなイライザ強火担二人に目をつけられて…。でもまあ、アンジーと一緒になれるわけだから、頑張って…。

 私は窓の外に視線を向けて、遠い目をした。

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