Episode 48
サマーフェスティバル二日目。
私たちは朝食を済ませると、早速アンジーたちが白魔法の特訓をしている海岸へと向かった。
「おはようございます!イライザ様、パトリック殿下!」
私たちの姿に気づいたアンジーが笑顔で駆け寄ってきた。後ろにはリアムもいて、パトリックに向かって敬礼をしている。
「おはようございます、アンジーさん。特訓の成果はいかがですか?」
「はい!こちらが昨日見つけた白亜石です!千百個あります。それから、こちらが本日見つけたものです。ええと数は…」
「三百とちょっとあります」
アンジーの報告を、リアムが補う。
「もう三百も見つけたのですね!素晴らしいですわ」
穏やかに見つめ合う二人を見て、私はほっとした。今日は短時間でもうこれだけ見つけているところを見ると、どうやら二人の絆は昨日の特訓の間にかなり深まり、愛の力もだいぶアップしているようだ。
「この調子なら、明日は問題なさそうだね」
「明日…ですか?」
パトリックの言葉に、アンジーが首を傾げた。
「そう。アンジー嬢には、明日のフェスティバル閉会式で白魔法を披露してもらうよ」
「えぇ!?」
驚きすぎてちょっとよろけたアンジーを、リアムがすかさず支える。
「大丈夫か?」
「は、はい。ありがとうございます、リアム様」
恥ずかしそうに頬を染めるアンジー。さすがヒロインといった可憐さだ。明らかに関係が深まった様子の二人は、何だか見ているこっちまで照れてしまう。そういえば、サマーフェスティバルのイベントでは、花火の下でキスっていうスチルもあったな…。ということは…?
「パトリック様、白魔法を披露するというのは…?」
私が内心にやにやしていると、リアムがアンジーを支えたまま、パトリックに聞いた。
「うん、リアムの家の事情を小耳に挟んでしまってね。僕の愛しい婚約者が心配しているんだ。それで、早くアンジー嬢が国家魔道士に認定されれば、問題は解決するんじゃないかと思って。せっかく魔法省大臣もこのフェスティバルに来ていることだし、明日皆の前でアンジー嬢の白魔法を披露して、大臣に評価してもらおうということになったんだ」
にこにこと語るパトリックを、アンジーとリアムが顔を強張らせて見つめている。そうだよね、突然そんな事態になったら驚くよね。でも、ここは二人の今後のために、頑張ってもらわなきゃいけないところだ。
「今日もお二人で特訓を続ければ、白魔法の実力は必ず上がるはずです。絶対に明日、国家魔道士の認定を受けられるよう、頑張りましょう」
背中を押す私の言葉に、アンジーが覚悟を決めたように頷いた。
「はい!私、頑張ります!リアム様、どうか今日も一日、一緒にいてください」
「もちろんだ。アンジーは俺が支える。一緒に頑張ろう」
「ありがとうございます!」
うん、もうこの二人は大丈夫。これなら今日中にまた、愛の力でかなりのレベルアップが期待できそうだ。
「では、今日の分の白亜石千個を見つけ終わったら、白魔法”愛の光”を練習してください。明日は皆さんの前で”愛の光”を披露していただきます」
”愛の光”は、ゲームでアンジーが国家魔道士に認定された時に披露した白魔法だ。癒しの術のひとつで、広範囲に効果を発揮することができる。ゲームで披露したのは学園だったけど、サマーフェスティバルの会場で披露すれば、より多くの人の目に触れることになる。きらきらと聖なる白い光が降り注ぎ、その場にいた人たちが癒やされることになれば、国家魔道士に認定されるのは間違いないはず。
「”愛の光”をご存じなのですね」
私が勝利を確信して心の中でガッツポーズをしていると、アンジーが驚きと尊敬の眼差しで私を見つめた。あ、白魔法の術は、あまり一般的には知られていないんだった!
「私もパトリック殿下の婚約者として、白魔法についても深く知識を身につけなければ、と思い、勉強しているのです」
慌てているのが悟られないよう、さも当然のように笑顔で誤魔化す。
「さすがイライザ様です!私もイライザ様を見習って頑張ります!」
ごめんね、ズルしてて。ゲームの知識があることに申し訳ない気持ちを隠しながら、私は頷いた。
「ええ。お互い頑張りましょうね」
「はい!」
再び白亜石を探し始めたアンジーたちを残して、私たちは広場へと向かった。明日広場でアンジーが白魔法を披露する時に、より効果的に魔法を魅せる方法を考えるためだ。パトリックも私も、頑張っている二人が報われるように力を尽くそうと思っていた。




