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Episode 4

 会議では、とにかくパトリックの有能さが際立った。

 もちろん、ゲームの中でも攻略対象キャラたちはみんな絵に描いたようなハイスぺばかりだけど、なんかもう、パトリックは次元が違う。エリートビジネスマンのごとき理路整然としたプレゼンっぷりに、感嘆させられた。


 今までゲームだからまあ、ちょっと変なとこあってもしょうがないよねって思っていた、学園のおかしな仕組みややりにくさみたいなものを次々と指摘しては、改善策を提案する。そうそう、それってやっぱりおかしいよね?そうなったらすごくやりやすそう!みたいなことばかりで、本当に驚いた。

 他の生徒会メンバーも、

「なるほど、その通りですね」

「さすがパトリック様です」

と舌を巻いている。ゲームで見えなかった裏側でも、こんなに有能だったなんて、私の推しがすごすぎる。こんなエピソードがあるなら、いくらでも課金するから公開してほしかったよー。でも、今それを目の当たりにできてるんだからいいのか。他のラブソニファンには、抜け駆けみたいで申し訳ない気がするけど。


「では早速、僕から学園長に新しい課外活動計画を提案してみよう」

 これまで、この学園では教師に認められた学生以外は課外活動を行うことができない、という設定だったらしい。ゲームでも攻略対象たちが行っている課外活動にアンジーが招待されて、他の令嬢たちからやっかまれるってエピソードがあったけど、そういうことだったのか。結構やりこんでたのに、気づかなかった。課外活動で起こるイベントも色々あったから、もっと自由なものだと思っていたのに、そんな制約があったなんて。

 でも、今回パトリックが、それでは学生の可能性が狭まってしまうのでは?と議題に挙げたのだ。

 学生が企画書を作って生徒会に提出し、生徒会が許可すれば課外活動を行えるようにする、という案を学園長に掛け合うことが承認され、パトリックが優美な笑みを浮かべる。


 もしもこれが夢とかじゃなくて、これからもこのラブソニの世界で生きていかなきゃいけないんだったら、ここでこうした諸々のやりにくさが改善されるのは本当にありがたい。

 パトリック、さすが私の最推し。鮮やかなプレゼンの手腕!もうどこまでもついていきます!


 ──○○部長みたいだな。

 ふと、何かを思い出しかける。

 ん?○○部長?そうだ、転生前、上司に今のパトリックみたいな部長がいた気がする。名前と顔が、もう少しで思い出せそうなのに、そのもう少しが遠い。喉元まで出かかったその名前に心の中で一人やきもきしているうちに、会議は終わった。


 帰り支度をしていると、リアムに声を掛けられる。

「イライザ、話があるんだ。一緒に帰ることはできるだろうか」

 真剣な眼差し。これは、婚約破棄を切り出そうとしてるな、とすぐにわかった。それにしても、ゲームより展開が早い。あのスチルがあったその日に婚約破棄を切り出したりはしていなかったはず。さっきのパトリックの苦言がもう効果を表したのだろうか。

「ええ。ご一緒いたします」

 もちろん婚約破棄にゴネる気はない。さっさとアンジーと幸せになれるようにしてあげよう。そうすれば、私の断罪ルートも消えるはず。



「イライザ、本当にすまない。婚約を破棄させてほしい」

 私とリアムを乗せた馬車が走り出すなり、リアムが切り出した。

 申し訳なさそうな顔もいいな。ストレートな物言いも、いかにも真っ直ぐな騎士様って感じで好感度高い。

「承知いたしました、リアム様」

 あっさりと承諾した私の顔を、リアムが驚いた顔で見つめた。

「──いいのか?」

 もちろん!と笑って答えるわけにもいかないので、少し悲し気な笑顔を作る。

「もとより、家同士が決めた婚約です。リアム様には、他に思い人がいらっしゃるのでしょう?それならば、私は身を引くまで。そのかわり、両家への説明や、諸々の手続きはお願いしたく存じます。よろしいでしょうか?」

「もちろんだ。君には、本当に申し訳ないことをしたと思っている」

「そんなに謝られては、私も立つ瀬がございませんわ。これからは、友人の一人としてよろしくお願いいたします。色々、大変でしょうけれど、アンジーさんの支えになって差し上げてください」

「やはり、俺のアンジーへの思いに、気づいていたのだな…」

 ええまあ、全ルートコンプリートしてるんで、と言いたい気持ちに蓋をして、そっと頷く。

 イライザという最大の障害がなくなれば、後はアンジーが頑張って白魔法の力で皆を納得させて身分差を乗り越え、リアムとハッピーエンドを迎えられるはずだ。


 イライザ――私は、断罪は免れるけど、婚約破棄されたら家族から冷たくされるんだろうか。ふと不安が過る。イライザの家族については、ゲームでは特に触れられていない。罵られたり、罰を与えられたりする?

 でも、会ったこともない家族のことを今考えても仕方ないだろう。これからどうにかしていくしかない。世間からも婚約破棄された事故物件扱いの令嬢になるわけで、普通の結婚はもう難しいんだろうけど、きっと修道院に収容されるよりはずっといいはず。何とか結婚以外の道を見つけなくては。当面はそれが課題になりそうだ。

「リアム様、幸せになってくださいね」

 私は不安な気持ちから目を逸らして、リアムに向かって微笑んだ。

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