3.メンバー報告
緊張が胸を締め付ける中、私たちのバンドが集まるスタジオのドアを開けた。彼らの顔が私を見つめ、私の言葉静かにを待つ。
「みんな、ありがとう。今日は大事な話があるの」
声を震わせながら言葉を絞り出した。深呼吸をし、心の奥の真実に向き合う。
「実は、医者から余命宣告を受けたの」
その言葉が部屋に響くと、静寂が訪れた。奏斗の目が大きく見開かれ、絃葉は手を口に当て、涙を浮かべていた。颯楽は驚愕の表情を浮かべ、律の微笑みも瞬時に消えた。
「え…それ、本当に?」
最初に口を開いたのは颯楽だった。彼の声は震えていた。
「どういうことなんだ?」
律の目が真剣に私を見つめ、心の底からの不安を感じた。
「私癌になっちゃったみたいで、残された時間が限られているの。でもだからこそ、私は私の夢を実現するために、最後に武道館でライブをしたいと思っている」
自分の言葉が、胸の奥で響いているのを感じた。
「そんなことを言うなよ…」
奏斗が声を荒げる。
「美緒、美緒がいなくなるなんて…考えたくない」
絃葉の声が涙を含んでいた。
「私もわかってる。でも、最後の瞬間まで、自分を信じたい。私たちの音楽を届けるために、最高のステージを最後に作りたいの」
その言葉に、仲間たちの表情が動揺から悲しみに変わっていくのが見えた。
「それでも、できるのか?僕たち、まだ準備もできていないのに…美緒の体調の面も…」
颯楽が困惑したように言った。
「だからこそ、今から動き出さなきゃいけない。私たちの音楽を全ての人に届けるために、力を合わせてやり遂げたい」
「……僕たちが一緒にいるなら、できるかもしれないね」
律が静かに微笑みながら口を開く。その言葉には強い決意があった。
「でも、もし失敗したらどうするんだ?」
奏斗が再び言葉を続ける。彼の心の動揺が痛いほど伝わってくる。
「それでも、やりたいの。この瞬間を、私たちの全てを込めて、残された時間で最高のステージを作りたい」
その言葉に、彼らの動揺は少しずつ希望へと変わっていくのを感じた。
「俺たちの音楽は、美緒がいるからこそ成り立ってんだ」
奏斗が涙を浮かべながら言った。その姿を見て、私も胸が締め付けられた。
「私も、みんなと一緒にいる限り最後まで戦う。だから、どうか私を信じてほしい」
その言葉に、少しずつ彼らの表情が変わっていくのを感じた。動揺はまだ残っていたが、その中に確かな絆と希望を見出しながら、私は新たな旅路を歩み始める決意を固めていた。
スタジオの空気は依然として重く、私たちの間に流れる感情が胸を締め付けていた。しかし、メンバーたちの眼差しには、確かな決意が宿り始めていた。
「武道館でのライブ、絶対成功させよう」
律が周りを勇気づけるように言った。
「うん僕たちが全力を尽くせば、きっと実現できる」
颯楽が涙をこらえ、ぎこちない笑顔で続ける。しかし彼の表情には少しの自信があった。
「俺たちが一緒なら、どんな困難でも乗り越えられる」
奏斗が強い意志を持って言った。絃葉が瞳に涙を浮かべながら、私に優しく微笑んだ。
「あなたがいる限り、私たちも頑張るから。心配しないで、私たちが支えるから」
その言葉に、私は心が温かくなるのを感じた。仲間たちが私のために力を尽くしてくれる姿が、私にとっての最大の支えだ。
「ありがとう、みんな。私も必ず力を尽くす。私たちの音楽を、最高の形で届けるために、全力で取り組もう」
私の言葉に、彼らの目が少しずつ明るさを取り戻していくのが見えた。
「まずは、曲を仕上げよう。武道館に向けて、新しい曲を作ろう」
奏斗が自信を持って言った。彼の言葉が、みんなの心に希望をもたらした。私たちは、次々とアイデアを出し合いながら、曲作りに没頭していった。絃葉の繊細なメロディが、颯楽の明るいリズムと重なり、律のミステリアスなベースラインがそれを支えた。奏斗はその全てを引き締めるギターを弾き、私も歌詞を紡いでいく。時折、笑い声が混じり、時には涙がこぼれそうになったけれど、それでも私たちの音楽が生まれる瞬間は、私たちにとって特別なものだった。仲間たちと共にいる時間が、私の心に希望をもたらしていた。
「私たちの音楽は、みんなの思いを乗せている。だからこそ、最高のステージを作ろう」
私の言葉に、みんなが頷く。
その夜、私たちは何度も曲を練り直し、ひとつの形にまとめ上げた。新しい音楽が生まれるたびに、私の心の奥に確かな感情が宿っていくのを感じた。私たちの音楽が、誰かの心に響くことを願ってやまない。その想いが、私の余命を感じさせないほどの力に変わっていった。そして、私は仲間たちと共に歩む未来を信じて、新たな一歩を踏み出す決意を固めた。武道館でのライブ、その夢を実現するために、私たちの物語は始まったばかりだった。